大型犬は、その力強さや温厚な性格から多くの人に愛されています 。しかし、同じ大型犬でも色々な犬種があり、それぞれの特徴や必要な飼育環境は異なります。記事では、人気犬種、寿命や気を付けたい病気、飼育のポイントなどについてご紹介します。

大型犬って?

大型犬のサイズの基準

犬種を「小型犬・中型犬・大型犬」と分類することはよくありますが、実はそれぞれのサイズに、明確な基準はありません。

日本国内で犬種の認定などを行うジャパンケネルクラブ(JKC)でも、犬種ごとに標準の体重を定めていますが、サイズや重さによる分類は行っていません。
一般的には、成犬時の体重10kg未満を「小型犬」、10kg以上で20kg~25kgまでの犬種を「中型犬」、それよりも大きい犬種を「大型犬」と呼ぶ場合が多いようです。

しかし、同じ犬種でも個体によって体重や体の大きさは異なるので、「大型犬」とされている犬種が必ずしも上記の大きさに育つわけではありません。

大型犬の性格や特徴

日本でよく飼育されているゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬は温厚なイメージがありますが、犬種や個体によって、その性格は大きく異なります。例えばゴールデン・レトリーバーは誰に対しても友好的ですが、ジャーマン・シェパード・ドッグは飼い主に忠実な一方で、攻撃性も併せ持ちます。

飼い主にとって大切なことは、お迎えする犬の性格をよく理解することです。そのうえで、その子にあった飼育方法を選びましょう。

大型犬の人気ランキング

アニコム損保の『人気犬種ランキング2024』によると、人気の大型犬TOP5は以下の通りです。

1位 ゴールデン・レトリーバー

フレンドリーで愛情深い性格と、ゴールドの毛並みが人気のゴールデン・レトリーバー。小型犬が上位を占める『人気犬種ランキング2024』全体で13位にランクインしていて、大型犬では最も上位です。

イギリス発祥の犬種で、もともとは「ガンドッグ」と呼ばれる鳥猟犬。人と一緒に仕事をすることが大好きなため、現在は介助犬や盲導犬として活躍しています。

その柔和な性格と賢さで、非常に飼いやすい犬種とされています。

2位 ラブラドール・レトリーバー

ゴールデン・レトリーバーと同様に賢くフレンドリーな性格が人気で、泳ぎが大の得意です。身体も泳ぐのに適した構造になっていて、指の間には水かきがあり、しっぽは水中の舵取りの役割を果たす「オッターテイル」になっています。

『人気犬種ランキング2024』では全体の18位に入っていて、日本で「大型犬」と言えば上述のゴールデン・レトリーバーか、ラブラドール・レトリーバーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

3位 シベリアンハスキー

オオカミのような見た目がかっこいい、ロシア原産の犬種です。

見た目とは裏腹に人に友好的で、飼い主に忠実な性格をしています。寒さに強く、暑さに弱い犬種のため、飼育の際は温度や湿度の管理に注意が必要です。

4位 スタンダード・プードル

大きく4つに分類される「プードル」の中で、最も大きいのがスタンダード・プードルで、体高は45~60cmです。水鳥の猟犬として活躍していましたが、フランスの上流階級で愛されるようになって小型化が進み、ミディアム・プードル、ミニチュア・プードル、トイ・プードルが誕生しました。運動能力が高く、頭も良いため、災害救助犬などとしても活躍しています。

5位 秋田犬

6犬種いる日本犬(柴犬、秋田犬、北海道犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬)の中で最も大型なのが秋田犬です。「忠犬ハチ公」でも知られるように、非常に忠誠心が高く愛情深い性格をしています。

おっとりとした表情やもふもふな毛並みも魅力です。海外でも人気のある犬種ですが、アメリカ人が連れ帰り、独自に繁殖を進めた犬種は、現在は「アメリカン・アキタ」として秋田犬とは区別されています。

※「日本犬保存会」が日本犬として指定している6犬種

大型犬一覧

その他、代表的な大型犬には、下記のような犬種があります。

・アラスカン・マラミュート

・アイリッシュ・セター

・グレート・デーン

・グレート・ピレニーズ

・サモエド

・ジャーマン・シェパード・ドッグ

・セント・バーナード

・ピットブル

・ダルメシアン

・ドーベルマン

・土佐犬

・バーニーズ・マウンテン・ドッグ

・ロットワイラー

▽大型犬一覧はこちら
https://www.anicom-sompo.co.jp/inu/tag/bigdog

大型犬の寿命

アニコムの『家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳です。小型犬が14.4歳、中型犬が13.4歳のため、比較すると大型犬の方が短いことがわかります。

これは、臓器の大きさが小型犬とあまり変わらないため、心臓の負担が大きいことや、老化のスピードが早いことなどが理由として考えられていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

しかし、それぞれの個体や飼育環境によって寿命は異なります。平均寿命はあくまでも目安とし、飼育環境やフード、日々の運動などに気を使い、少しでも長く一緒にいられるといいですよね。

代表的な大型犬の平均寿命は以下の通りです。

犬種 平均寿命
ゴールデン・レトリーバー 10.7歳
ラブラドール・レトリーバー 12.7歳
シベリアンハスキー 11.4歳
スタンダード・プードル 12.4歳
秋田犬 11.5歳

※アニコム『家庭どうぶつ白書 2023』より

▽参考記事

大型犬が気を付けたい病気

大型犬は体が大きく成長することなどが理由で、小型犬・中型犬よりもかかりやすい病気がいくつかあります。

股関節脱臼

股関節に強い力が加わるなどの原因で、骨盤の受け皿から太ももの骨が外れてしまう病気です。脱臼が起こることで強い痛みが生じます。

原因は強い衝撃や、大型犬に多い股関節形成不全とされています。股関節に強い力を与えないように、できるだけ大きな段差を減らすなど、環境を整えてあげることが大切です。

ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ジャーマン・シェパードなどが特に発症しやすいとされています。

肘関節(ちゅうかんせつ)形成不全

肘関節の発育不全により痛みが生じる病気です。

初期症状では前足に歩行困難(跛行(はこう))が現れ、立ち上がったときなどに一時的に異常が見られますが、症状が進行すると悪化・持続し、重度の跛行を示すようになります。

4~7ヶ月くらいの成長期の子犬に多く発症します。

汎骨炎(はんこつえん)

1本あるいは複数の骨で炎症が同時に発生する病気です。

前足で発生することが多いですが、後足でも起こることがあり、痛みを伴うため、跛行が見られます。

2歳未満の若い中型~大型犬の男の子に多く見られ、成犬にはほとんど見られなくなります。

前十字靱帯断裂

大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結びつけている靱帯が断裂する病気です。

老化や肥満が原因となり、発症すると、痛みのために地面に足を最小限しか着けないような歩き方をしたり、足を挙げたままの状態になるなどの症状が現れます。

骨肉腫

骨と軟骨に発生する悪性腫瘍のことです。

激しい痛みを伴うことが多いため、足の腫れや跛行(歩き方がおかしい、片足を引きずっている)などが見られます。短期間で肺に転移し、死亡率の高い腫瘍として知られています。

特に発症しやすい犬種はゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ロットワイラー、グレート・デーンなどです。

胃拡張(胃拡張胃捻転)

胃が拡張し、ねじれ(捻転)を起こす病気です。

発症すると急にぐったりとしはじめ、多量のよだれを流します。また、胃が拡張するため胸~腹部が大きく膨らみ、指でたたくとサッカーボールをたたいた時のような感触があります。治療をしないと数時間で死に至る場合もあります。

グレート・デーン、ボクサー、ジャーマン・シェパード・ドッグ、セント・バーナード、ドーベルマンなどの胸が深い犬種に多く発生します。

心筋症

心臓の筋肉が異常を起こし、心臓の働きが弱くなる病気です。

発症すると元気消失、食欲低下、体重の減少、運動を嫌がるなどの症状が出て、中には失神したり、突然、亡くなってしまったりするケースもあります。

対策

日常的な観察と定期的な健康診断を欠かさないことが大切です。どこかを痛がっているようなしぐさを見せたり、普段と様子が違うように感じたりしたときは、早めに動物病院に相談しましょう。

▼近隣の動物病院検索はこちら
https://www.anicom-ah.com/

また、関節に関係する疾患を予防するためには、適度な運動が重要です。過度な運動は逆に関節に負担をかけるため、バランスの取れた運動を行いましょう。体重が増えすぎることも関節に負担をかけてしまうため、適切な食事を与えましょう 。

大型犬の飼育のポイント

大型犬を飼育する際には、小型犬などとは異なる環境や準備が必要になります。いくつかのポイントを解説します。

飼育スペースの確保

大型犬を飼うためには、当たり前ながら十分な生活スペースが必要です。子犬の頃は小さくても、あっという間に成犬となり体が大きくなります。自由に動けるスペースがなければストレスを感じやすくなり、無駄吠えや破壊行動といった問題行動や、犬の健康状態にも影響する可能性があります。

例えば、広い部屋や庭のある一軒家や、近くに公園がある場所が適しているでしょう。室内飼育の場合は、大型のケージや犬専用の部屋を用意できれば良いでしょう。

散歩・運動はしっかりと

犬種や年齢によって異なるものの、小型犬などに比べると、大型犬はより多くの運動量が必要になります 。十分な運動を行なわないことが、ストレスや、体重の増加、体の発達に影響を与える可能性があります。犬種や個体により異なりますが、毎日1時間程度の散歩は確保しましょう。

十分な食事を

大きい体に必要なエネルギーを確保するために、小型犬などより多くの食事が必要です。

例えば、体重30kgの成犬の安静時に必要なエネルギー量(RER)は、1日897kcal程度とされています。十分な食事を与え、栄養が不足しないようにしましょう。

どの程度のカロリーが必要か、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

しつけとトレーニング

大型犬が、他の人やどうぶつにケガを負わせた、というニュースを聞いたことがあるという方は少なくないでしょう。

大型犬は体が大きく力が強いため、しつけをしっかりと行わないと大きな事故やトラブルに繋がりかねません。犬は遊んでいるつもりでも、相手にケガをさせてしまうこともあります。

いざという時に飼い主の言う事を聞かない、ということのないように、しつけとトレーニングをしっかりと行いましょう。

しつけは子犬の頃から

犬の生後3週齢〜12週齢頃までは「社会化期」とも呼ばれ、この時期に色々なことを学び、環境に慣れていきます。この時期に様々な環境や刺激に触れさせることが大切です。

特に大型犬は成犬になると力が強くなり、コントロールすることが難しくなるため、まだ力の弱い子犬の頃からしつけとトレーニングを始めることが重要です。

子犬のしつけ方のポイントについては、以下の記事を参考にしてください。

飼育費用

大型犬は小型犬などに比べると、飼育費用が多くかかります。アニコムの「ペットにかける年間支出調査」2021年版によると、小型犬・中型犬の年間支出が30~33万円程度であるのに対し、大型犬は52万円という結果でした。

項目 小型犬 中型犬 大型犬
病気やケガの治療費 57,727 44,063 68,671
フード・おやつ 58,014 76,648 131,642
サプリメント 12,822 10,842 16,629
しつけ・トレーニング料 7,463 2,099 37,797
シャンプー・カット・トリミング料 55,768 34,509 54,914
ペット保険料 45,500 45,589 56,465
ワクチン・健康診断等の予防費 32,355 30,896 39,182
ペットホテル・ペットシッター 4,715 5,133 5,089
日用品 14,143 14,320 16,287
洋服 13,667 7,623 11,448
ドッグランなど遊べる施設 2,325 2,646 7,820
首輪・リード 6,298 7,951 11,419
防災用品 679 991 1,181
交通費 10,093 10,823 40,458
光熱費(飼育に伴う追加分) 11,825 14,661 21,145
合計(円) 333,394 308,794 520,147
回答数 1,190 187 96
どうぶつの平均年齢 5.1 5.0 5.2

大型犬の方が食べる量が多いため、当然食費は高くなります。その他にも、医療やペットホテル、しつけ・トレーニングなどのサービスを利用する際にも大型犬の方が、費用がかかりがちです。また、前述の通り大型犬をお迎えするには、比較的広い飼育スペースを確保する必要があるため、その準備に費用がかかる可能性もあります。

大型犬を迎える際には、このような支出を続けることができるか、よく考えましょう。

大型犬のお迎え方法

大型犬をぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップでお迎えするメリットは、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられることが挙げられます。

大型犬は取り扱っているペットショップが小型犬等に比べると少ないため、事前に確認してから訪ねるのが良いでしょう。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大のメリットは、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親犬や兄弟・姉妹たちの姿を見ることができる可能性もあるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいことも特徴です。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので、余裕をもって調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方も多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集で大型犬と出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

この記事では、大型犬について、代表的な種類や性格、飼育環境、必要な運動量と栄養管理、気を付けたい病気などについて解説しました。大型犬を迎える際には、それぞれの情報をしっかりと理解し、適切に準備を進めて、犬と飼い主のどちらも幸せな生活を送れるようにしましょう。しっかりと準備を行い、愛情を注げば、きっと大切なパートナーになってくれるはずです。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。