セント・バーナードはアニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場する「ヨーゼフ」のモデルとして、ご存じの方も多いのではないでしょうか?今回は、そんなセント・バーナードの性格や歴史、飼い方について紹介します。

セント・バーナードってどんな犬種?

セント・バーナードは、がっしりとした骨格と大きな頭蓋を持ちますが、眼はやや小さく垂れていて、表情は優しく、穏やかな性格をしています。

「アルプスの少女ハイジ」のイメージの通り、スイス原産の犬種です。昔は救助犬や護衛犬、ファーム・ドッグとして、人々の手助けをしてくれていました。

セント・バーナードの歴史

セント・バーナードの起源は、スイスとイタリアの国境にあるアルプス山脈の峠「グラン・サン・ベルナール」にある宿坊(神社や寺院の参拝者のための宿)で、番犬として飼われていた大型のマウンテン・ドッグです。

はじめこそ番犬として飼われていましたが、17世紀頃から雪や霧で遭難したり、ケガをした人を捜索し、救助する役割を担うようになりました。

中でも有名なのは、救助犬「バリー」です。バリーは200年ほど前にグラン・サン・ベルナール峠で活躍した救助犬で、一生の内に40人もの旅人の命を救ったとされています

セント・バーナードというと、首に小さな樽を下げているのをイメージする方も多いのではないでしょうか。実は、これも救助犬だった名残です。首に下げられた樽の中にはアルコール度数の高いお酒が入っていて、遭難した人に飲ませ、体温を上げるのに使われていたといわれています。

セント・バーナードのブリーディングがはじまったのは1855年頃とされています。

1860年代には、セント・バーナードがイギリスやアメリカへ送られ、各国でさらなるブリーディングがなされました。

初めてセント・バーナードの犬種標準ができたのは1884年。それまでは、「ホスピス犬」「バリー犬」などと呼ばれていましたが、このときに「セント・バーナード」と名付けられました。

サイズ

セント・バーナードは大型犬に分類されます。体高は男の子が70~90cm、女の子が65~80cm、体重は男の子が約75Kg、女の子で約66kgです。

ちなみに、セント・バーナードの祖先であるマウンテン・ドッグは今よりも少し小さかったようです。

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性格は?

セント・バーナードは大きな身体から受ける印象とは異なり、温和でのんびりとした性格をしています。家族とも、他の犬や子どもとも仲良くできます。

テリトリーを守ろうとする気持ちから、他の犬に対して攻撃的に出ることがあるので、社会化としつけをしっかり行いましょう。

被毛・毛色について

セント・バーナードの被毛は「ロングヘアード」と「ショートヘアード」の2つのタイプがあります。

雪山で救助犬として活躍していた頃はショートのみでしたが、長毛の犬種を混ぜたことでロングタイプが生まれました。

どちらも密度のある被毛をしていて、足としっぽには飾り毛があります。

ダブルコートなので、抜け毛も多く、ブラッシングが欠かせません。

毛色は、白地に赤味がかったブラウンのまだらやブランケット(胴体を覆うような大きな模様)のほかに、茶色味を帯びたイエローのまだらやブランケットも見られます。

寿命はどれくらい?

アニコムの「家庭どうぶつ白書2021」によると、大型犬の平均寿命は11.5歳です。

セント・バーナードは大型犬に属するので、目安に考えられるでしょう。

しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいですよね。

セント・バーナードの気を付けたい病気

「拡張型心筋症」「胃拡張・胃捻転」「股関節形成不全」といった大型犬に多い疾患に気を付けましょう。

また、垂れ耳で被毛も密度があるので、耳が蒸れやすく外耳炎や皮膚炎などにも注意が必要です。

予防と早期治療のため、ブラッシングなどの日々のケアと、定期的な健康診断をしっかり行うことをおすすめします。

セント・バーナードを家族の一員として迎える方法

セント・バーナードをぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。とはいえ、セント・バーナードをペットショップで見かけることは多くないので、事前に取り扱いがあるか確認してから行くとよいでしょう。

また、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親猫や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集でセント・バーナードと出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

セント・バーナードは、古くから救助犬などとして人のために活躍してきました。今でこそ捜索救助や護衛、ファーム・ドッグとしての役割を求められることは少なくなってきていますが、その素晴らしい能力はこれからも語り継がれていくでしょう。

適切な環境提供としつけをすれば、家庭犬としても良いパートナーとなってくれるはずです。

監修獣医師

増田国充

増田国充

北里大学を卒業し、2001年に獣医師免許取得。愛知県、静岡県内の動物病院勤務を経て、2007年にますだ動物クリニック開業。現在は、コンパニオンアニマルの診療に加え、鍼灸をはじめとした東洋医療科を重点的に行う。専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、国際中獣医学院日本校事務局長、日本ペット中医学研究会学術委員、日本ペットマッサージ協会理事など。趣味は旅行、目標は気象予報ができる獣医師。