くしゃみをしそうな瞬間の猫

風邪をひいたときなどに起こる症状のひとつ、鼻水。鼻が詰まって苦しかったり、四六時中鼻水が出て集中できなかったり、地味ですが不快な症状ですよね。それは、猫だって同じ。猫もさまざまな理由から鼻水が出ることがあります。今回は、その原因や対処法について見てみましょう。

猫の鼻水とあわせて起こる症状

鼻水が出ているとき、あわせて他の症状が起こることがあります。そのいくつかをご紹介します。

くしゃみ

人と同じく、ウイルスや細菌による感染症を起こしている場合、鼻水とともにくしゃみをする場合があります。また、花粉やハウスダストなどへのアレルギー症状の可能性も考えられます。

発熱

ウイルスや細菌による呼吸器感染症を発症した場合、鼻水とともに発熱が見られることがあります。猫は、発熱すると極度にごはんを食べなくなる場合もあり、栄養不足や脱水によってさらに体調が悪化することも。
さらに進行すると肺炎などを引き起こすこともあります。とくに、子猫は免疫力が弱く、感染症にかかりやすいため、気をつけましょう。

目やに

鼻水と目やにが同時に見られる病気は、ウイルスや細菌感染症、クラミジア感染症など、多岐にわたります。これらは伝染する病気です。多頭飼育をしている人はとくに注意が必要です。

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猫の鼻水の原因

猫の鼻水の原因をイメージする画像

鼻水が出る理由は、さまざま。具体的には、どのようなものが鼻水の原因となるのでしょうか。

猫風邪による鼻水

俗にいう「猫風邪」とは、猫ヘルペスウイルスが原因の「猫ウイルス性鼻気管炎」や猫カリシウイルスによる「猫カリシウイルス感染症」を総称して言います。
唾液などの微量な分泌物から容易に感染するため、集団で飼育している環境では感染リスクが高いです。また、地域猫のほとんどが、潜在的にこの病気をもっていると言われています。免疫の状態によっては、感染しても症状がでない場合も多くありますが、一般的には2~10日ほどの潜伏期間を経て、風邪のような症状が現れます。
潜伏感染するため回復して元気になっても、ストレスがかかったり、免疫力が低下したときに再発することがあります。

異物が鼻に入る

花粉やハウスダスト、煙など、異物が鼻の粘膜を刺激することで鼻水が出ます。透明でサラサラした鼻水が出ることが特徴です。

鼻炎による鼻水

何かしらの原因で鼻の粘膜に炎症が起こった状態のことを「鼻炎」と言います。ウイルスや細菌、真菌による感染症のほか、花粉やハウスダストなどのアレルギー性のもの、刺激性の薬品・煙、異物によるものなど、さまざまな要因があります。

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クリプトコッカス症による鼻水

真菌(カビの一種)により引き起こされる感染症で、感染する場所により症状が変わりますが、呼吸器に感染すると鼻水・くしゃみ・肺炎などの症状が見られます。
土壌やハトなど鳥類の糞便が感染源となり、菌を吸い込むことで感染するほか、鼻の常在菌として存在していることもあります。抵抗力のある個体ではあまり発症しませんが、猫エイズにかかっているなど、免疫力が低下している場合は発症することがあります。
猫だけでなく、人や犬にも感染するので、注意が必要です。
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腫瘍(がんなど)によるくしゃみ

鼻水の原因のほとんどは猫風邪ですが、腫瘍によって起こる場合もあります。鼻や口の中、その周辺に発生した腫瘍は、猫に鼻水やくしゃみを起こさせます。この場合は、手術による切除も考えなければならず、積極的な治療が必要となります。
悪性腫瘍だけでなく、ポリープという良性の腫瘍によっても、鼻水の症状が出ることがあります。必ずしも悪性とは限りませんので、過剰に心配せず、動物病院で診てもらうことをお勧めします。

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猫の鼻水の色の特徴

病気でなくても鼻水が出ることはあります。その場合は通常透明でサラサラしています。透明でも大量に出ている場合は、アレルギー等も考えなくてはいけません。また、病気にかかった時には、色や粘度が変化することが多いです。どう変わったのかは、獣医師が病気の診断をするうえでも重要なので、しっかり観察しておきましょう。

黄色~緑色の鼻水

主に、細菌の感染によって、白血球などの免疫細胞や細菌の死骸が混ざり、ドロドロとした緑がかった黄色い鼻水が出てきます。

赤色の鼻水

鼻水が赤かったり、ピンクがかっている場合は、血液が混じっていることが多いです。この場合は、重症化した鼻炎や副鼻腔炎、ケガ等による鼻血であることがほとんどですが、慢性化している場合は、鼻腔内腫瘍(びくうないしゅよう)といった病気も考えられます。

猫の鼻水が出たときの対処法

多少、鼻水をたらしていても、家で様子を見て終わる場合が多いかもしれません。ただ、前述の通り、進行して重症化する病気もあります。
猫にとっても、鼻水が出ていたり、詰まっている状態は苦しくて不快ですので、できるだけきちんと対処してあげましょう。

病院で原因を調べてもらう

何より一番有効なのは、やはり獣医師に診てもらうこと。「鼻水は、いつから出ているか」、「色や状態はどうか」、「ほかに症状はないか」、「悪化していないか」など、診断の材料になりそうな情報を、あらかじめメモしておきましょう。

薬は用量・用法を守る

鼻水の原因が明らかとなり、動物病院で薬をもらったら、用量・用法を守って与えましょう。感染症の場合は、症状がしぶとく続くことが多いです。猫が嫌がるからと、途中で薬をやめてしまうと、症状がぶり返したり、だらだらと長く続いたりします。根気強く治療することが肝心です。

鼻水の拭き取り方

猫の鼻水が気になるときは、ティッシュなどで拭いてあげるとよいでしょう。時間が経ち、固まってしまった鼻水の場合は、無理に取り除こうとしてこすったりせず、濡れたガーゼやコットンなどでふやかしてから、ふき取ってあげてください。

猫のくしゃみの原因は? くしゃみをするのは、なぜ?

鼻水とほぼセットで出てくるのが、このくしゃみ。猫のくしゃみは人と似ているため、鼻水よりも症状に気づきやすいと思います。生理的なくしゃみ(日常生活で出るもの)もありますが、病的なくしゃみについて解説します。

くしゃみの原因は?

基本的に、鼻水と同じく「猫風邪」が原因であることが多いです。前述の通り、猫風邪は、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスが感染することで起き、地域猫(のら猫)の多くが感染していると言われています。

猫風邪の症状は? 予防はできる?

とても感染しやすいため、家の中でだけ飼っていても、突然発症することがあります。症状は、一般的な人の風邪と似ていて、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目やに、咳などが見られます。中でも、特にくしゃみと鼻水は見られやすい症状と言えるでしょう。

この猫風邪は、ワクチンで予防することができます。ほとんどの動物病院で接種することができ、子猫の時は複数回注射しますが、その後は年1回~数年に1回程度を定期的に接種することで予防をします。しかし、インフルエンザのワクチンと同様、予防接種をしたからといって、100%発症を防ぐことができるとは言い切れません。発症の確率を下げたり、症状をおさえたりする一助になると考えておきましょう。

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猫風邪以外に病気は考えられる?

くしゃみは、上部気道(口、鼻、のどなど)に異常が起きるときに出る症状です。猫風邪以外にも、こうした上部気道に何らかの炎症や刺激があれば、頻繁にくしゃみをする可能性があります。

例えば、歯周病や歯肉炎が進み、膿が鼻の中の方まで達すると、くしゃみが出ることがあります。腫瘍(良性・悪性)でも起きますし、ノギのような植物が鼻の中に入ってくしゃみが止まらなくなることもあります。また、アレルギー性鼻炎でもくしゃみは一般的です。
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くしゃみの対処法は?

くしゃみは、原因がさまざまなので、その原因に応じた治療法を行うことが大切です。感染症であれば、抗菌薬や抗ウイルス薬などが使われます。腫瘍であれば、手術の可能性もあるでしょう。
くしゃみ、鼻水が重症化することにより、呼吸困難になることもあります。その場合は、まず酸素の確保をするなどの治療が行われます。

病気やケガをする前に…

病気やケガは、いつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまったり、ケガをしてしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

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監修獣医師

小川篤志

小川篤志

日本獣医生命科学大学を卒業し、2008年獣医師免許を取得。救急医療を専門に経験を積み、救急病院長などを歴任。2013年アニコムホールディングス株式会社に入社。獣医師や飼い主向けのセミナー講演、メディア取材などの実績多数。2020年より首輪型の猫見守りデバイス「Catlog(キャトログ)」(https://rabo.cat/catlog)を開発するRABO社に所属し、猫専門で活躍中。