♪猫はこたつでまるくなる~ の歌にもあるように、犬に比べて猫は寒がりのイメージがありますね。実際のところはどうなのでしょう。愛猫が、寒い冬を元気で快適に過ごすためにはどうしたらよいか、対策や注意点をご紹介します。

猫と寒さとの関係

私たちが一緒に暮らしているイエネコのルーツは、リビアヤマネコと言われています。 リビアヤマネコの生息地は砂漠やサバンナなどの暑く乾燥した地域で、その血をひいているイエネコたちも寒さが苦手と考えられています。寒さは猫にとってストレスとなり、気温の下がる冬になると自律神経系が乱れたり免疫力が低下したりして、体調を崩す猫も多くなります。

猫が寒いと感じる温度

一般的に猫は20℃を下回ると寒いと感じることが多いようです。
ただし、毛の長さや被毛の生え方によっても寒さに対する感じ方は異なり、シングルコート(被毛がオーバーコートあるいはアンダーコートのどちらか1層)の猫や短毛の猫に比べて、ダブルコート(被毛がオーバーコートとアンダーコートの2層)で長毛の猫は、比較的寒さに強いと言われています。
また、若くて活発で運動量が多い猫に比べて、子猫やシニア猫、運動量が少なく筋肉量が少ない猫は、寒さを強く感じやすいと言われています。

猫が過ごしやすい温度・湿度

健康な成猫の場合、室温は20℃~25℃くらい、湿度は40~60% くらいが過ごしやすいと言われています。基本的には人が快適と感じる温度とそれほど違いはありません。
シニア猫や体調の悪い猫の場合は、元気な成猫に比べると寒さを感じやすいため、もう少し高めの温度を目安にするとよいでしょう。また、生後6週齢以下 の 子猫は体温調節機能が未熟なため、もっと積極的な保温が必要です。
母乳やミルクを飲んでいる子猫 の場合、低体温症に陥ると哺乳や消化の機能も低下します。親猫とはぐれた離乳前の子猫を保護したときは、寝床に湯たんぽを入れたり、ケージを段ボールや毛布で覆ったりして、積極的に保温してあげる必要があります。寝床の温度の目安として、生後10日目くらいまでは30~32℃ 、3週齢までは26~29℃、4~6週齢までは25℃前後を目安にするとよいでしょう。

猫が寒さを感じているときのサイン

寒さの感じ方や寒さに対する耐性は、筋肉量や体脂肪量、年齢、寒さへの慣れ、被毛の量などにより個体差があります。
愛猫が寒さを感じているかどうかを見極め、適切な温度に調節してあげることが大事です。一般的に、猫が寒さを感じているときに見られるサインには次のようなものがあります。

丸まって動かない

猫は寒いとき、身体を丸めてじっとしていることがあります。これは、脇の下や首、腿の付け根などの大きな血管がある場所を隠し、冷たい外気に触れる身体の面積を減らすことによって、身体からの熱の放出を防ぐ目的があります。

毛を逆立てている

怒ったりびっくりしているわけではないのに全身の毛が逆立っているときは、寒さを感じている可能性があります。毛を逆立てることで毛と毛の間の空気の層を厚くして、身体の熱を逃がさないようにしていると考えられます。

飲む水の量が減少

寒くなるとじっとして動かなくなることが多いため、喉が渇かず、飲水量が減ります。冷たい水を飲んで身体が冷えるのを嫌がって、水を飲まなくなる猫もいます。

トイレの回数が減少

水分の摂取量が減るために、おしっこの量が減ってトイレにあまり行かなくなります。脱水気味になって便秘がちになる猫もいます。また、トイレが寒い場所にあると、行くのを嫌がってトイレを我慢するようになる猫もいます。

細かく震える

外気の寒さで体温が低下してくると、自分の意志とは関係なく筋肉の震えが起こります。筋肉の収縮によって熱を産生し、体温の低下を食い止める目的があります。気温が低くて猫が震えている場合は、すぐに室温を調節したり、毛布などで保温してあげましょう。
猫が震える原因は寒さ以外にも考えられます。 痙攣発作や内臓の病気、身体の痛みなど、なんらかの病気で震える場合もあります。適切に保温をして体温が正常に保たれていても震えが続く場合は、寒さ以外の原因も疑ってすぐに受診しましょう。
人間や犬と違って、猫は心理的な理由では震えるよりも固まることが多いため、暖かい環境で続く震えには注意が必要です。

猫の寒さ対策

エアコンによる温度管理

エアコンは部屋全体の室温を適切に保つために有効です。やけどなどの事故の危険も少なく、留守番中でも安心して使えるのがメリットです。
おすすめの使い方は、部屋全体を暖め過ぎないようにして、他の保温器具も併用する方法です。 猫の生活スペースの中に、あたたかい場所と涼しい場所を作ってあげると、自分で快適な温度を探して移動することができます。
部屋全体の温度は、猫が十分に水を飲んだり、トイレへの移動を嫌がらない程度の暖かさに設定しましょう。そのうえで、ペットヒーターや湯たんぽなどを併用して暖かい場所を作り、寒い時には猫が自分で移動できるようにします。
ずっと暖かいベッドや毛布などに潜り込んでいれば室温が低すぎる可能性があり、ベッドに入らず涼しいところばかり探しているようであれば、室温が高すぎる可能性があります。愛猫の様子を見ながら、快適に過ごせる室温に調節してあげましょう。

エアコンを安全に使うポイント
留守中などに猫がリモコンを切ってしまったり、設定温度を変えてしまったりすることがあるので、リモコンは猫が触れない場所にしまっておくようにしてください。また、エアコンを使うと部屋が乾燥しがちになるので、加湿器などを併用して湿度にも気を付けるようにしましょう。

こたつ

こたつが大好きな猫は多いと思いますが、猫が人間用のこたつを使うとき、気を付けるべきことがあります。こたつのヒーターでやけどをする、長時間水分摂取をせずに潜り込んでいて脱水症状を起こす、乾燥による皮膚トラブルが発生する、などの危険があります。こたつの中で長時間熟睡してしまって、熱中症や酸欠状態になってしまう猫もいます。また、こたつのコードをかじって感電したり、やけどしたりすることもあります。

こたつを安全に使うポイント
・猫がこたつの中に長時間入ったままにならないように気を付ける
・設定温度を弱にする
・こたつ布団の一部をめくって猫の出入り口を作っておく
・時々布団をあげて空気の入れ替えをする
・留守中など人間がいないときにはコンセントを抜く
・電源コードをカバーする
などの対策をしましょう。
猫が安全に使用できるように設計されたペット用こたつを利用するとより安心です。

ペット用ヒーターやホットカーペット、湯たんぽ

ケージやベッドの下などに敷くペットヒーターやホットカーペット、湯たんぽなどを利用する方法もあります。大きさや材質などいろいろなものが市販されているので、愛猫の好みに合わせて選んであげるとよいでしょう。ペット用のものは安全に配慮して作られていますが、使用の仕方によっては低温やけどのリスクがあります。

ペットヒーターや湯たんぽを安全に使うポイント
タオルや毛布などにくるんで直接身体に触れないようにし、長時間同じ場所に接触したままにならないように気を付けてあげましょう。低温やけど対策になります。
ペット向けでは電源コードも保護されている製品が多いですが、かじり癖があり心配な場合は、電源が必要ない昔ながらの湯たんぽなどを利用した方がよいでしょう。

ケージやベッドの置き場所

窓際や壁際は外からの冷気で気温が低くなりやすいため、猫のケージやベッドは窓や壁から少し離れた場所に置いてあげるとよいでしょう。床に直に置くよりも、少し高いところに置いてあげた方が、冷えが防げる場合もあります。
エアコンや暖房の風が直接当たるところや、ドアの開閉などで温度変化が大きい場所も避けた方がよいでしょう。ダンボールやマットなどは断熱効果があるので、ケージやベッドの下に敷いたり、周りを囲ったりすると保温効果が高くなります。
ベッドにはやわらかいふわふわの毛布などを入れてあげると保温効果もあり、喜ぶ猫が多いでしょう。

水飲み場・トイレの寒さ対策を忘れずに

水飲み場やトイレが寒い場所にあると、水を飲むのを控えたりトイレに行くのを我慢してしまい、脱水症状や尿石症、膀胱炎のリスクが高くなるので、対策してあげましょう。
ただし、水飲み場やトイレの場所を急に変更すると、ストレスに感じたり使わなくなってしまう猫もいます。今置いてある場所を暖かくするのが難しい場合は、他の暖かい場所に置いてあげるとよいでしょう。
また、冬の間は冷たい水を飲むのを嫌がる猫も多く、ぬるめのお湯にしてあげるとよく飲むということもあります。猫によって好みがあるので、いろいろな温度の飲み水を試してみるとよいでしょう。
冬場でもたくさん水分をとってもらうためには、複数個所に水飲み場を作る、水にペースト状のおやつやフードを溶かしてスープにして与える、フードをぬるま湯でふやかす 、ウエットフードにする、などの対策も効果的です。

寒さ対策には飼い主さんとのコミュニケーションも大事

寒い時期になると人間にくっついてくるという猫も多いはず。飼い主さんの体温で暖を取るのも立派な防寒対策です。猫がくっついてきたら、身体をなでたり、マッサージしたり、ブラッシングしてあげると、血行がよくなって新陳代謝もよくなり、身体が温まりやすくなりますのでおすすめです。また、おもちゃで一緒に遊んであげて運動を促すのもよいでしょう。

留守番時のおすすめグッズ

猫の寒さ対策はいろいろありますが、飼い主さんの目が届かない留守番時に使うには心配なものもあります。


あまりおすすめできない暖房器具
ストーブやヒーター、電気こたつ、ホットカーペットなど人間用の暖房器具の多くは、やけどの危険が高いため、留守中は使わないようにしましょう。
外出前になるべく部屋を暖めて、外出するときに切るようにしましょう。思いがけず感電するという危険もあるので、電源コードも必ず抜きましょう。

おすすめ① エアコン
エアコンは比較的安全に使えますが、きちんと温度設定をして、猫がリモコンでいたずらしないように気をつけましょう。また、エアコンを使うと部屋が乾燥するので、乾燥対策も忘れないようにしましょう。

おすすめ② ペットヒーター、湯たんぽ
ペットヒーターやペット用のホットカーペット、ペット用の湯たんぽなどは留守中でも比較的安心して使いやすいですが、老猫や疾患のある猫など、あまり動きたがらない猫の場合は低温やけどをしないよう、十分に注意して設置していくようにしましょう。

おすすめ③ 段ボール箱+毛布
横にしたダンボール箱や小さなテーブルの下などに猫用のベッドや毛布をいれて猫が潜り込めるようにし、上からブランケットや毛布を掛けた手作りこたつは、電源を使用しなくても猫自身の体温で暖まれるため、留守番時におすすめです。

猫の寒さ対策のチェックポイント

ここまでも触れてきましたが、猫の寒さ対策を行うときには、
・熱源に触れてのやけどや、温度が低くても長時間接触していることによる低温やけど
・暖房器具の電源コードをかじって感電
・暖かい場所から動かず水を飲まないことで脱水症状
・湿度の低下による皮膚の乾燥や呼吸器疾患
などに十分に注意が必要です。
また、猫によって快適と感じる温度は様々で、その日の体調によって変わることもあります。ただ暖かくすればよいというわけではなく、暖かい場所と涼しい場所を作り、猫が快適に過ごせる場所を自分で選んで移動できるようにしてあげることが大事です。愛猫がどのような場所にいることを好んでいるかをよく観察して、なるべく快適に過ごせるように温度管理をしてあげるとよいでしょう。

まとめ

寒さが苦手で、寒い時期になると体調を崩してしまう猫は多いです。愛猫が安全に、快適に、元気に冬を過ごせるよう、猫のための寒さ対策、がんばりましょう!

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監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。