可愛らしさと可憐な雰囲気を持ち合わせるヨークシャー・テリア(ヨーキー)。日本でもよく見かける身近なテリア犬の一種です。今回はヨーキーについて、歴史や性格、気をつけたい病気などに触れながらご紹介していきます。

ヨーキーってどんな犬種?

ヨーキーの英語での正式名称は「Yorkshire Terrier」、愛称の表記は「Yorkie」です。「ヨーキー」と呼ばれる由来を知ると、いかに愛されてきた犬種なのかが伺えます。というのも、ヨークシャーの「ヨーク」はイギリスの土地の名前ですが、イギリスでは親しい間柄になると相手の名前の語尾に「ie」や「y」を付けることがあります。日本語でいう「ちゃん」のようなニュアンスです。人と共存してきたヨーキーには、あえてこのような関係の近さを感じるような愛称がつけられたという歴史があります。

歴史

愛称の部分でも触れた通り、ヨークシャーとはイギリスのロンドンより北に位置する地方の名前です。19世紀にはイギリスの重要な工業地帯としてとても栄えていました。そんなヨークシャー州でネズミ退治のために生まれたのがヨーキーです。今では愛玩犬として可愛がられるヨーキーですが、かつては工員たちの家庭を守る使役犬として活躍していた時代があったのです。

1862年に誕生した際には「ブロークン・ヘアード・スコッチ・オア・ヨークシャー・テリア」という名前が付けられていましたが、長すぎるために定着せず、1870年頃に現在の名前に改名され、ヨークシャー・テリアという名前が広く知られるようになりました。もともと工業地帯で、どちらかというと庶民と一緒に暮らしてきたヨーキーですが、その美しさや愛らしさから上流階級にも愛される犬種となっていきました。

サイズ

小型犬に分類されます。
19世紀に誕生したばかりの頃のヨーキーは、体重5kg前後と今よりも大きな体格でした。愛玩犬として流通させるために小型化され、現在では体重1.5〜3kg程度と当時の半分ほどの大きさになっています。体高も15〜18cm程度ととても小柄で、世界最小の犬種であるチワワに次ぐ小ささになります。

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性格は?

走るヨーキー

性格は、テリアの要素を濃く持ち合わせています。賢く飼い主にも忠実ですが、警戒心と勇敢な性格が故に、知らない人や犬に対しては吠えることも。賢いので、子犬の頃に人や犬、音などに慣れさせるような社会化を行い、しつけを徹底することで一緒に暮らしやすい犬種となるでしょう。ヨーキーの魅力を引き出すためにも、まずは飼い主が知識を深めるところから始めましょう。

美しい被毛とかわいい見た目からは少し意外ですが、ネズミ捕りの使役犬として活躍していた犬種なだけあって活発な一面ももっています。運動が大好きなので、毎日のお散歩やおもちゃで遊ぶ時間を大切にしてあげましょう。

被毛・毛色について

ヨーキーが誕生したばかりの頃は、今よりも硬くしっかりとした毛質でした。硬くキラキラと光る様子から「動く宝石」と呼ばれていたこともあります。

被毛のこと

シングルコートのため、抜け毛が比較的少ない犬種です。その代わり毛が伸び続けるので、定期的なトリミングが必要です。また、毎日ブラッシングをしないとすぐに絡まって、毛玉ができてしまいます。ほかにも、伸びやすい口まわりの毛は汚れるたびに拭いてあげるといった細かいお世話もあります。美しい被毛をキープするためにも、お手入れが欠かせません。

ヨーキーの魅力は、なんといってもシルキーコートと呼ばれる手触りのよい美しい毛質です。ジャパンケネルクラブ(JKC)では、ヨーキーのスタンダードを「長い被毛で、左右に均等に真っ直ぐ垂れる。分け目は鼻から尾先まで伸びている。」としていて、ドッグショーでは、フルコートのヨーキーが見られます。

フルコートのヨーキー

トリミングでいろいろなカットスタイルが楽しめるのもまたヨーキーの魅力です。毛を短めにカットすれば印象が変わります。テディベア風にしたり、耳の飾り毛を伸ばしてアレンジしたりなど、さまざまなアレンジを楽しむことができます。

短めにカットしているヨーキー

毛色のこと

ジャパンケネルクラブの公認カラーは「ダーク・スチール・ブルー&タン」の1色のみです。

ヨーキーの特徴として、毛色が成長とともに変わることがあげられます。生涯のうちに7回も変わるとも言われています。子犬の頃は全体的に黒い部分が多く、その中にところどころタンというゴールドっぽい毛が見られます。成長するにつれて、黒かった毛は白やシルバーに近い色になり、よりツヤを感じられるようになります。

寿命はどれくらい?

アニコムの「家庭どうぶつ白書 2023」によると、2021年時点でヨーキーの平均寿命は14.0歳です。犬全体の平均が14.2歳なので平均的であることがわかります。

食事や運動などの日々の生活に気を付けるのはもちろん、定期的な健康診断を行うことや普段と違った様子がみられたら早めに動物病院に連れていくことで健康維持をして、愛犬と少しでも長く一緒に過ごせるといいですよね。

ヨーキーの気を付けたい病気

アニコムの「家庭どうぶつ白書 2023」によると、他犬種に比べ「タンパク喪失性腸症」になりやすいです。「タンパク喪失性腸症」とは、腸管内部から多量の蛋白が漏れ出てしまうことによって、血液中のタンパク質が少なくなる低たんぱく血症となる病気です。原因もさまざまで、症状は下痢が見られることが多いです。

次になりやすいのは、「前十字靱帯断裂」で大腿骨(太ももの骨)と脛(けい)骨(すねの骨)を結びつけている靱帯が切れてしまう病気です。予防には、体重管理が大切です。また、滑りやすいフローリングも危険なのでマットをしいて滑りづらくするなどの工夫をしましょう。

その他、「慢性腎臓病」や、気管が本来の強度を失って押しつぶされたような形に変形し、呼吸に障害を起こす病気である「気管虚脱」などにも気を付けましょう。

症状が重症化する前に気がつけるよう、日頃からいつもと違った様子が見られないか、愛犬の行動や体を触ってみて確認する習慣を付けるほか、少なくとも1年に1回、高齢になったら半年に1回は健康診断に行くことをおすすめします。

【関連リンク】
蛋白漏出性腸症 <犬>|みんなのどうぶつ病気大百科
前十字靱帯断裂 <犬>|みんなのどうぶつ病気大百科
犬の腎臓病|原因や治療法、予防法まで解説します!|犬との暮らし大百科
気管虚脱 <犬>|みんなのどうぶつ病気大百科

家族の一員として迎える方法

ペットショップでヨークシャー・テリアを探す

人気の高いヨークシャー・テリアはペットショップで迎えることもできますが、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんは親犬を飼育し繁殖をしているため、親犬の性格や気質をよく理解しています。親犬に会えるようなら、実際に大きさや性格に注目してみると良いでしょう。もちろん最後は子犬を直接見て、相性の良い子を迎えたいですね。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。子犬とは限りませんが、こうした譲渡会や里親募集でヨークシャー・テリアと出会える機会もあるかもしれません。

お迎えの費用は?

ヨーキーの子犬を迎えるにあたってかかる費用は、ペットショップの場合は平均20万~30万円程度、ブリーダーの場合は、20万円~40万円程度です。ショップやブリーダーによっても価格に差があります。

まとめ

小さいながらも美しさや品を感じるヨーキーには、数えきれないほどの魅力があり、ファンも多い犬種です。一方でしつけはなかなか簡単とはいえない性格を持ち合わせるといった一面も。ヨーキーとの楽しく暮らすためには、まずは飼い主が正しい知識を身につけることから始めましょう。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。