
犬の寿命も以前と比べて伸び、一緒に過ごせる時間が長くなりました。それに伴い高齢で病気になってしまうことも多くなりました。腎臓病もそんな病気のひとつです。腎臓病とはどんな病気なのか症状や原因などについて解説します。いざ腎臓病になってしまったらどうすればよいのか知っておきましょう。
犬の腎臓病とは?どんな病気?
腎臓はおしっこを作って、身体の老廃物を身体の外に送り出す臓器です。腎臓病は何らかの原因で腎臓の機能が弱ってしまい、老廃物がうまく排泄できずに身体に貯まってしまう病気です。老廃物は体にとっては毒のようなものなので、貯まってしまうことでさまざまな悪影響を及ぼします。
どんな症状?

病気が進行する早さにより「急性腎障害」と「慢性腎臓病」に分けられます。いずれの場合も進行すると腎不全となり、老廃物を十分に排泄できなくなって尿毒症の症状が現れます。
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急性腎障害
数時間から数日という短期間で腎臓の働きが低下します。短い時間のうちに無尿(尿が作られない)、乏尿(尿量が著しく減少すること)、食欲不振、下痢、嘔吐、脱水などの症状が見られ、重症になると痙攣や体温低下、電解質(ナトリウムやカリウム等)異常などを起こし、死に至る場合もあります。
慢性腎臓病
急性腎不全と異なり、長い経過をたどり腎臓の働きが何らかの疾患や加齢により徐々に低下して腎不全に至ります。初期は無症状の期間がありますが、その後、飲水量が増え、尿量が増す多飲多尿の症状が現れます。また、体重減少や嘔吐、貧血などの症状がみられ、尿毒症まで発展すると元気消失、下痢、痙攣などの症状も引き起こすことがあります。
腎臓病のステージ
前述のように腎臓病が進行していくと、様々な症状が出てくることが分かります。犬の慢性腎臓病では、血中老廃物の上昇具合と尿中タンパク質量で重症度を測る「ステージ」が使われています。このステージは1から4までに分類され、ステージの番号が大きいほど重症といわれています。
・ステージ1
初期の腎臓病。症状はほとんど見られず血液検査や尿検査のみでは見落とされてしまう場合も。
・ステージ2
軽度慢性腎臓病。無症状の場合もあるが、食欲不振や無気力状態が見られることがある。飲水量が増えて尿の色が薄くなる場合が多く、飼い主さんが気付きやすい。
・ステージ3
中等度腎臓病。食欲不振が見られ、嘔吐・下痢などの消化器症状や貧血・口内炎など様々な症状も見られる。外観上、毛並みにバサつきが見られることが多い。
・ステージ4
末期腎臓病。ステージ3までの症状に加え、尿毒症の進行により痙攣発作などの全身症状が見られるようになる。
原因は?

急性腎障害
急性腎障害の原因は、脱水や出血などによる腎臓への血流の減少、腎臓そのものの障害(例:細菌感染による腎盂腎炎、レプトスピラ感染症、腎毒性のある薬剤や物質・植物の摂取、自己免疫疾患、腫瘍など)、尿管や尿道の閉塞による排尿障害があげられます。特に犬で多い原因は、ぶどうや干しブドウ、ユリ科植物の誤食や人間の解熱剤の誤飲と感染といわれています。
慢性腎臓病
慢性腎臓病は、急性腎障害から移行する場合と、症状がなくゆっくりと腎臓病が進行していくケースがあります。加齢や偏った食生活(タンパク質の過剰摂取)による腎臓への負担、基礎疾患として、先天性疾患や遺伝性疾患、腫瘍、心疾患や歯周病などが関与すると考えられています。
特に気を付けたい犬種や特徴は?
高齢の犬ほど腎臓病になるリスクは高くなります。また、国際獣医腎臓病研究グループによるとブルテリア、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、キャバリア、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア、ボクサー、シャーペイは腎臓病になりやすいようです。
もしなってしまったら、治療法は?

急性腎障害の治療法
とにかく早く原因を究明し、その病気を治療します。それに加えて点滴を行うことで脱水を改善し、血中の毒素を腎臓から洗い流し腎臓を保護することで、腎機能の回復を助けます。
また、おしっこが作られていない場合は、利尿剤を使用しておしっこを作る機能を回復させます。急性腎障害から回復した後も完全に機能が回復せずに、慢性腎臓病へと移行することもあります。
慢性腎臓病の治療法
すでに破壊されてしまった腎臓の組織は、残念ながら治療をしても回復しません。そのため、血液中の老廃物や毒素を体内に貯めすぎないようにして体調を維持すること、そして慢性腎臓病の進行をできるだけ緩やかにすることが治療の主体となります。
その方法としては、点滴(静脈点滴や皮下点滴など)により体液を増やすことで尿量を増やして老廃物の排泄を促します。また、点滴には脱水を補う目的もあります。
その他、設備の整った病院では腹膜透析や血液透析を行い、老廃物の排出を促すこともあります。腸の中で尿毒素のもとになるタンパク質を吸着して、便と一緒に体外に排泄させるような薬や、腎臓病の進行で二次的に起こってしまう高血圧を防ぐために降圧剤などのお薬を投薬する場合もあります。
これまで治療が困難とされていた慢性腎臓病ですが、近年、こうした病気を「改善させる」可能性を秘めた選択肢として、動物の幹細胞を用いた「再生医療(細胞治療)」が注目されています。
食事はどうしたらいい? おやつは与えても大丈夫?
慢性腎臓病では腎臓の負担を軽減させるために食餌療法が推奨されます。タンパク質の多い食餌は尿毒症を引き起こす老廃物の元となるため、その量を必要最小限に抑えた食餌を与えることが重要です。
また、ナトリウムやリンなどの塩分についても制限が必要です。腎臓病のための特別療法食がありますので、動物病院などで入手して与えましょう。
療法食を食べてくれないときのフードは?

腎臓病の療法食は犬には好まれないことも多く、なかなか食べてくれないかもしれません。その場合、リンゴやサツマイモなど、犬の好きなものを少量混ぜてあげると食べてくれることもあります。
ただし、ささみのようなお肉(タンパク質)を与えすぎると尿毒症になる可能性があるので、トッピングとして少量だけ与えるようにしましょう。ほかにも、あたためたり、ぬるま湯でふやかしたりして香りを出してみると、食欲を刺激することができるかもしれません。
また、腎臓病の犬用のおやつもあるので、おやつを与える場合には、そのようなものを選ぶようにしましょう。
病気の進行に伴って与えるフードが変わることもあるので、フードについては必ずかかりつけの獣医師と相談しながら与えるようにしましょう。
予防法は?
腎臓病の予防には、塩分を控えた栄養バランスのとれた食事や新鮮な水がいつでも飲める環境を保つよう心がけましょう。腎臓病はほかの病気から引き起こされることもあるため定期的なワクチンや血液検査、尿検査などの健康診断を受けることも大切です。
健康診断は腎臓病の早期発見につながることもあります。おうちでは犬の飲水量やおしっこの量をチェックして、多飲多尿などの症状が見られたら早めに動物病院にご相談ください。
まとめ

慢性腎臓病は一度なってしまうとずっと付き合っていかなければならない病気です。また、急性腎障害は急激に進行して命にかかわることもあります。
いずれの病気も早い段階で見つけて治療を開始することがとても大切です。普段から愛犬の飲水量やおしっこの量を観察して、早めに変化を見つけられるようにしましょう。また、定期的に健康診断をして、症状がなくても病気を早期に見つけられるようにしましょう。
