イタリアン・グレーハウンドは、「イタグレ」の愛称でも知られ、小さく華奢な容姿とは裏腹に、走る姿はかっこよく美しい犬種です。そんなイタグレはどんな性格なのか、毛色やその特徴、気を付けたい病気についてご説明します。

イタリアン・グレーハウンドってどんな犬種?

イタリアン・グレーハウンドは、サイト(視覚)ハウンドと呼ばれる、獲物を目で捉えて追跡する能力に長けた猟犬です。サイトハウンドの中で身体は最も小さいですが、走るためのムダのないスレンダーな体、細く長い脚、そして素早い追跡能力はさすがサイトハウンドと言えるでしょう。

現在はペットとして暮らしているイタグレが多いですが、「ルアー・コーシング」と呼ばれるドッグスポーツなどでその能力を発揮しています。

■ルアー・コーシングとは?

犬がルアー(擬似餌)を追いかけて走るシンプルなスポーツです。歴史も500年以上と長く、もともとはうさぎなどを追いかけていました。本物の獲物を追うことを禁止され、ルアー(疑似餌)が開発されました。

歴史

イタグレの子犬

イタグレの歴史は古く、起源は古代のエジプトまでさかのぼることができます。

よく似た犬種として、グレーハウンドやウィペットがいますが、イタグレは当時存在していた小型のグレーハウンドの末裔と考えられています。

エジプトからギリシャに渡り、その後紀元前5世紀ごろにはイタリアに渡っていたことが、当時の彫刻や器の絵から読み取ることができます。

繊細で優雅な姿のイタグレは、貴族の中で愛玩犬として大変人気のある犬でした。特にルネッサンス時代になると、偉大な巨匠の絵画に数多く登場し、その人気はイタリアだけにとどまらずヨーロッパ中に広まっていきました。

イタグレは愛玩犬として人気なだけではなく、レーシングドッグや貴族の猟犬として小型の動物を追うなど、いわゆるサイトハウンドとしての能力も評価されていました。しかし、次第にウィペットなど、よりサイトハウンドとして能力の高い犬種が出てきたことと、小さなハウンドということがステータスとなり、イタグレの小型化が進められていったのです。

小型化されたイタグレですが、不健全で弱い体質となってしまい、さらに第二次世界大戦の影響を受けたことで絶滅の危機に瀕してしまいました。それを救ったのがアメリカに渡っていたイタグレでした。ブリーダーたちの懸命な努力により、絶滅を免れ健全な姿として復活し、現在のイタグレとなりました。

サイズ

イタグレは小型犬に分類される犬種です。とてもスリムで華奢な体型をしていて、体高は32〜38cm、体重は3〜5kgほどになります。

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性格は?

イタグレ

穏和で遊び好きな性格で家族に対しては愛情深く接してくれます。一方で繊細な一面も持っているので、見知らぬ人に対しては警戒心を強く抱く傾向が見られます。

サイトハウンド(視力が優れた猟犬に分類される犬種たちのこと)らしく、何かを追いかけることが好きなので、遊びや散歩の中に取り入れるといいでしょう。また、走るのが得意なので、ドッグランなどで伸び伸び走らせてあげられるといいですよね。

首がとても細いため、お散歩のときに引っ張りがあると首に負担がかかるため、引っ張らないようにしつけを徹底しましょう。また、首輪自体も幅広のものにするのがおすすめです。

毛色・被毛について

毛色は主にブラック、グレー、イザベラの単色と、胸と足にのみホワイトが認められています。イザベラは、薄いイエローやベージュといった色を指しますが、血統書ではフォーン、レッド、クリームと表現されています。

被毛はかなり短く、とても滑らかな毛質をしています。オーバーコートのみが生えているシングルコートなので、抜け毛は少ないです。抜け毛は少ないものの、毛ヅヤや血行促進、スキンシップもかねて週に1、2回はブラッシングをするようにしましょう。

寒さに弱いので、季節や気温に合わせて洋服を着せるなどの対策をしてあげましょう。イタグレのスタイルに合わせて、専門のお洋服屋さんも多数あります。おしゃれを楽しみつつ、寒さ対策をしてあげられるといいですよね。

寿命はどれくらい?

なでられるイタグレ

アニコムの「家庭どうぶつ白書2023」によると、2021年時点でイタグレの平均寿命は14.6歳です。犬全体の平均が14.2歳なので平均よりわずかに長いことがわかります。

犬の寿命は体の大きさによって変わり、大型犬に比べ小型犬の方が寿命は長いです。

これは、心臓の大きさが大型犬も小型犬もほぼ同じ大きさのため、小型犬のほうが負担は少ないからといわれています。

ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使って、少しでも愛犬と長く一緒にいられるといいですよね。

イタリアン・グレーハウンドの気を付けたい病気

イタグレは華奢な見た目通り、とても骨が細いので、骨折や膝蓋骨脱臼に注意が必要です。

膝蓋骨脱臼は先天的なこともありますが、後天的に起こることもあります。ベッドやソファーから飛び降りたり、フローリングで走ったりすることは骨関節への負担が大きくケガをしやすくなります。ソファーに段差をつけるようにしたり、フローリングは滑りにくいマットをしくようにするなど工夫をしてあげましょう。

その他の気を付けたい病気には気管虚脱があります。お散歩のときには、首輪も一般的なものよりも幅の太いものを選んで首にかかる負担を減らすなどの配慮をしてあげましょう。

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家族の一員として迎える方法

ペットショップでイタグレを探す

人気の高いイタグレはペットショップで迎えることもできますが、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんは親犬を飼育し繁殖をしているため、親犬の性格や気質をよく理解しています。親犬に会えるようなら、実際に大きさや性格に注目してみると良いでしょう。もちろん最後は子犬を直接見て、相性の良い子を迎えたいですね。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。子犬とは限りませんが、こうした譲渡会や里親募集でイタグレと出会える機会もあるかもしれません。

お迎えの費用は?

イタグレの子犬を迎えるにあたってかかる費用は、ペットショップの場合は平均20万~40万円程度、ブリーダーの場合は、20万円~40万円程度です。ショップやブリーダーによっても価格に差があります。

イタグレと楽しい生活を

イタグレは小型犬ですが、サイトハウンドとしての能力は今も残っています。追いかけて走ることが好きなので、しつけや遊びの延長としてルアー・コーシングというドッグスポーツに挑戦してみるのもいいですね。

イタグレの特徴でもあるスリムで華奢な身体は、寒さに弱かったり、骨折しやすいということもありますので、お家の環境には気を付けてあげるようにしましょう。 イタグレの特徴を理解して、楽しい生活を送ってくださいね。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。