「細胞治療」と聞いても、具体的なイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。まだまだ一般的とは言えない治療法ですし、飼い主さまにとっては未知な部分が多いことも確かです。
そこで、実際に細胞治療を受けたワンちゃんの体験談をご紹介します!「治療に踏み切ったきっかけは?」「効果は?」など、実際のところをインタビューしました。細胞治療をするかどうか悩んでいる方は必見です。
今回は、大型犬のバーニーズ・マウンテンの9歳の男の子、ハルちゃんの飼い主さまにお話をお伺いしました。「椎間板ヘルニア」と診断され、自力で排泄も難しかったハルちゃん。細胞治療後はなんと自力排泄までできるように!一般的に、大型犬は細胞治療の効果は出にくいと言われていますが、細胞治療の可能性を感じるハルちゃんのエピソードをご紹介します。
突然歩けなくなったハルちゃん
他のワンちゃんにも優しく、ドッグランなどで遊ぶことが大好きで、甘えん坊な性格のハルちゃん。そんなハルちゃんはある日突然歩けなくなり、椎間板ヘルニアと診断されました。椎間板ヘルニアは、椎間板が脊髄という神経の束を押しつぶしてしまう病気です。神経がダメージを受けることで、痛みや足の麻痺などさまざまな症状が表れます。ハルちゃんの状態はグレード5と言われる重度の麻痺状態でした。
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飼い主さまにインタビュー
ハルちゃんが細胞治療を始めるまでと、治療を受けてからのお話を、飼い主さまにお伺いしました。
―椎間板ヘルニアにはいつから?
朝ご飯を一緒に食べているときに、前兆もなく、突然立てなくなりました。かかりつけの動物病院の先生に、整形外科を得意としている愛甲石田動物病院の紹介を受け、翌日に診てもらったところ、椎間板ヘルニアという診断でした。
最初、「この子に一番必要なものは、車いすです。早く作りに行ったほうが良い。」と言われて翌日すぐに作りに行き、数時間のうちにハルの車いすができました。この時は、先生方も、大型犬なので劇的に良くなるとは思っていなかったのかもしれませんし、私たちも、車いすで歩けるならまだいいか・・と考えていました。
―どんな治療をしてきましたか?効果はどうでしたか?
神経を圧迫している椎間板の手術を行いました。手術後、少し足も動きましたが、「ちょっと動いたね~」という程度でした。その後リハビリを1ヶ月ほど実施。筋肉を落とさないように、車いすに乗せて歩かせたり、マッサージを入念に行いましたが、立ったり歩いたりする気配は全くありませんでした。
―治療や普段の生活のサポートは大変だったことも多いのでは?
自力排泄ができないので、排泄をさせてあげるのが一番大変でした。インターネットなどを参考に、圧迫排尿なども試みたのですが、難しいですね。全然うまくできませんでした。自宅にあるハルの体と同じサイズほどのキャリーカートに乗せて引くと、居心地や刺激がちょうど良かったのか排泄をしてくれて、とても気持ちが楽になったのを覚えています。体が大きいので、朝晩2人がかりで看護していました。
「犬にも細胞治療ってあるんだ」
―細胞治療を受けようと思ったきっかけは何でしたか?
最初に愛甲石田動物病院を受診したときに、先生から選択肢の一つとして聞きました。動物の医療もそんなに進んでいるんだなと感心したのが、第一印象です。手術やリハビリを進めていく中で、目に見える大きな改善がなかったため、次のステップとして再生医療にチャレンジしようと思いました。
ただ、インターネットでいくら検索しても、細胞治療で効果があった大型犬の事例を見つけられず…。排泄の世話が少しでも楽になるなど、何かしら効果があればいいなと思う程度で、そんなに期待はしていませんでした。
―治療を受けるにあたって、不安や懸念点などはありましたか?
大きな不安や懸念点はありませんでした。強いて言えば、ハル自身の細胞を培養して使う(自家細胞を使う治療)のだと思っていましたが、他の子の細胞を使う(他家細胞を使う治療)と聞いて、少しだけ心配になりました。
ですが、先生から「他家細胞だからこそ品質が安定するし、効果や安全性にも影響がないことが確認されているから大丈夫」という説明を受けて、メリットのほうが上回ると感じ、決断しました。
表情が明るくなったハルちゃん
―治療後、ハルちゃんにどのような変化がありましたか?
ハルは合計3回の細胞治療を受けました。1回目の治療後の変化が一番大きかったです。細胞投与して数日後、家族が家に帰ってきた時の喜びをきっかけにして立ち上がり、走ってお出迎えまでできました。勢いあまって玄関から落ちてしまったほどです(笑)。本当に驚きましたし、うれしかったです!
立てなかった頃を思うと、今は夢のようです。喜んだときには自分で立ち上がり、少し歩くことまでできます。よろけた時も、自分で持ち直すことができるようになりました。ハル自身も顔が明るくなりましたし、行動も活発的になりました。体位も自分で変えることができるようになったので、床ずれの心配もなくなったのも、とても大きいです。
―細胞治療を受けようか迷っている方へのメッセージは?
万人に効けばいいですが、こればかりは個体差などもあるのかなと…。ただ、今のハルを見ていると、チャレンジする価値はあると思います!
ハルちゃん、飼い主さま、ありがとうございました!
実はなんと今回のインタビュー中、初めて自力排泄ができたハルちゃん。飼い主さまはもちろん、細胞治療を担当した先生もこれには驚きでした。
「大型犬だから効果はあまりないかも」と諦めるのはまだ早いのかもしれません。
希望を与えてくれたハルちゃん
同じ状況で苦しんでいるワンちゃんたちに、希望を与えてくれたハルちゃん。ご家族にとって、とてもうれしい変化をたくさん見せてくれました。ハルちゃん自身も、自分の力で大好きな飼い主さまのそばに行ける喜びを感じているようでした。
ハルちゃんと飼い主さまに笑顔をもたらした「細胞治療」。ハルちゃんの体験談が、他のワンちゃんの治療のきっかけとなり、更なる笑顔が生まれていくことを願います。
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