イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、大きく垂れた耳と豊富で柔らかな飾り毛から華やかな印象をうける犬種です。人が好きで穏和な性格も魅力的です。
今回はイングリッシュ・コッカー・スパニエルの性格や飼い方、しつけのポイントを解説します。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルってどんな犬種?

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは鳥猟犬の一種で、猟の際にハンターの合図で草むらから鳥を飛び立たせる(フラッシュ)という役割を持った「フラッシング・ドッグ」として活躍していました。

名前にあるコッカーとは野鳥の一種である「ヤマシギ」のことで、スパニエルとは「スペインの」という意味があります。

アメリカン・コッカー・スパニエル(アメコカ)との違いは?

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、アメリカン・コッカー・スパニエルの元になった犬種です。

大きな違いとして、被毛のボリューム感、頭部の形、マズルや耳、胴体の長さがあります。

アメリカン・コッカー・スパニエルのほうが、一回り小さく胴体やマズルはコンパクトで頭部は丸みがあります。耳は長く、被毛はボリュームがあるのが特徴です。

歴史

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは19世紀に作出された、イギリス原産の鳥猟犬です。
水辺で活躍するウォーター・スパニエルに対し、陸上で活躍するスパニエルということから「ランド・スパニエル」とも呼ばれていました。

現在、イングリッシュ・コッカー・スパニエルには仕事をしやすいように交配された「ワーキングタイプ」と、スタンダードとしてFCI(国際畜犬連盟)に認められる「ショータイプ」の2タイプが存在します。
ワーキングタイプは活動しやすいように、コートが短くボリュームも少なめで、全体的に軽いのが特徴です。

1620年に、イギリスからアメリカに向かう船、メイフラワー号に乗っていた2頭の犬のうち、1頭が「コッカー・スパニエル」だったといわれ、そこから交配が進められ、「イングリッシュ」と「アメリカン」の2種類のコッカー・スパニエルが誕生することになります。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルがイギリスから送られた後、アメリカで独自の発展を遂げていきました。

しかし、本来のイングリッシュ・コッカー・スパニエルと特徴が異なることから、1946年にはアメリカン・コッカー・スパニエルとイングリッシュ・コッカー・スパニエルが別の犬種としてアメリカンケネルクラブ(AKC)に認められました。

性格は?

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは、明るく穏やかで協調性があり、人と作業をすること、人を喜ばすことが好きな犬種です。
そのため、トレーニングもしやすく家庭犬としてはもちろん、アジリティなどのスポーツも一緒に楽しむことができます。

しつけのポイント

トレーニングしやすい犬種である反面、もともと猟犬であったことを忘れてはいけません。
活発で刺激に敏感な一面を持っているため、「吠え」や「飛びつき」「咬みつき」といった問題行動が出やすい傾向も見られます。子犬の頃からの社会化と「お座り」「待て」「呼び戻し」の基本のトレーニングを日々のコミュニケーションとして取り入れることが大切です。

食事の前だけでなく、ケージから出す時や散歩に行く時、帰った時などに「お座り」「待て」をさせるなど、生活の中に複数回取り入れると定着しやすくなります。

また、運動不足やコミュニケーション不足によって、ストレスが溜まると問題行動をするようになることも。
散歩に行けないときには、家の中でおもちゃを使った引っ張りっこ遊びやボール投げ、頭を使うトリックゲームなどを取り入れるのがおすすめです。

突発性激怒症候群

突発性激怒症候群とは、その名の通り突発的にキレて攻撃行動がでてしまうもので、「スプリンガー・レイジ・シンドローム」ともいわれる先天的疾患です。

・きっかけがないにも関わらず攻撃行動が出る
・周囲のものを壊す
・周囲の人や動物を攻撃する

といった特徴があります。

しつけで改善されることはなく、薬の服用で落ち着かせるなどの治療が必要になるので、かかりつけの動物病院で相談しましょう。

サイズ

イングリッシュ・コッカー・スパニエルの体重は13〜14.5kg、体高は38〜41cmで、中型犬に分類されます。

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被毛について

イングリッシュ・コッカー・スパニエルの被毛は長く柔らかい毛質で、オーバーコートとアンダーコートのダブルコートです。

飾り毛は四肢と胴体の部分に豊富についていて、耳の毛にもボリュームがあります。

毛色

認められているカラーバリエーションは豊富で、単色のブラック、レッド、ゴールデン、レバー、ブラック・タン、レバータンの他、2色のパーティカラー、3色のトライカラー、タンとあります。

中でも、「ローン」という地の色に白毛が細かく混ざった毛色は、特徴的といえるでしょう。地の色によって呼び名が異なり、ブルーローン、オレンジローン、レモンローン、レバーローン、レッドローンなどがあります。

お手入れのポイント

ダブルコートのため換毛期には抜け毛が目立ちます。また毛が長いため絡まりやすく、日々のブラッシングはかかせません。

毛玉ができてしまうと、汚れが溜まり皮膚炎などの原因になるだけでなく、皮膚が引っ張られることで痛みが伴い体を動かしづらくなります。

皮脂の出やすい犬種なので、月に1回はトリミングサロンでシャンプーとカットをしてもらうと、お手入れの負担も減りつつ健康を維持することができます。

寿命はどれくらい?

アニコム『家庭どうぶつ白書2023』によると、イングリッシュ・コッカー・スパニエルの寿命は13.7歳とされています。

ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。

気を付けたい病気

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは甲状腺機能低下症やアレルギー性皮膚炎、進行性網膜萎縮症、股関節形成不全などになりやすいため、気になる点やいつもと違った様子が見られたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。

また耳が大きく垂れているので、蒸れやすく外耳炎も発症しやすいです。普段から耳の中を軽く拭いてケアしてあげましょう。

しつけをしているのに、攻撃行動が出る場合には「突発性激怒症候群」の可能性があります。

イングリッシュ・コッカー・スパニエルを家族の一員として迎える方法

イングリッシュ・コッカー・スパニエルをぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。とはいえ、イングリッシュ・コッカー・スパニエルをペットショップで見かけることは多くないので、事前に取り扱いがあるか確認してから行くとよいでしょう。

また、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親猫や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集でイングリッシュ・コッカー・スパニエルと出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

イングリッシュ・コッカー・スパニエルは人が大好きで活発な犬種です。
お迎えの前に、一緒にどう過ごしたいか、すでに一緒に暮らしている方は、今後どんなことにチャンレンジしたいかを想像してみると、楽しみが広がります。
イングリッシュ・コッカー・スパニエルの飾り毛やカットスタイルを楽しみながら、ドッグスポーツやダンスに挑戦するのも素敵ですね。

監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。 現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。