診察されている猫

愛猫にはいつも健やかでいてもらいたいもの。でも、いつ、どんな災難が愛猫に降りかかってくるかわかりません。いくら避けたいと思っていても、病気やケガで入院や手術をすることもありえるのです。考えたくはありませんが、もしものときのために、あらかじめどのくらいの費用がかかるか知っておいて、心構えをしておきましょう。ここでは、アニコムが発行する『家庭どうぶつ白書2019』のデータをもとに、猫の入院費、手術費について見てみます。

猫はどんな病気で入院する?費用はどれくらい?

慣れない環境に身を置かれる「入院」は、猫にとってストレス以上のなにものでもないでしょう。飼い主にとってもつらいものです。それでも治療のためには仕方がありません。では、猫はどんな病気で入院することが多いのでしょうか。

猫の入院理由は「慢性腎臓病」がいちばん多い

猫の入院理由上位10位は以下の表のとおりです。

猫の入院理由TOP10

順位 傷病名 件数(件) 1回あたりの
平均入院日数
1回あたりの診療費
中央値(円) 平均値(円)
1 慢性腎臓病
(腎不全含む)
1,244 4.6 45,873 69,003
2 消化管内異物/誤飲 389 3.8 96,487 111,587
3 嘔吐/下痢/血便
(原因未定)
365 3.6 45,559 67,097
4 糖尿病 313 3.4 28,944 51,817
5 尿道閉塞 286 5.3 62,878 100,999
6 膵炎 250 3.5 41,202 66,533
7 胃炎/胃腸炎/腸炎 234 3.7 46,224 57,001
8 元気喪失
(食欲不振含む、原因未定)
226 3.5 43,200 56,825
9 歯周病歯肉炎
(乳歯遺残に起因するもの含む)
221 2.2 59,508 74,518
10 心筋症 193 3.2 42,451 67,197

1位の「慢性腎臓病」は、1回あたりの平均入院日数が4.6日、診療費の平均値が約70,000円となっています。慢性腎臓病は、猫がかかりやすい病気といわれていますが、このデータからも納得できますね。続いて2位は「消化管内異物/誤飲」で約110,000円。上位10位の中では最も高額です。エコー検査やレントゲン検査、場合によってはバリウム検査を行ったり、内視鏡を使用しての処置を行うこともあり、診療費がかかるのも致し方ないといえます。

「尿道閉塞」の約100,000円もトップ10の中では高額といえます。尿道閉塞は、尿道に結石が詰まってしまったり、腫瘍などが原因で尿道が圧迫されて、尿道がふさがってしまう病気です。日頃から愛猫の様子を観察して、排尿時や尿自体に変化があったら、動物病院へ連れて行くようにしましょう。

【関連リンク】
家庭どうぶつ白書2019 p17
病気と上手く付き合おう(03<慢性腎臓病について>|みんなのどうぶつ病気大百科
異物誤飲に注意(1) <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
尿石症 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

猫はどんな病気で手術する?費用はどれくらい?

麻酔を伴う手術は、病気を治すためであっても、愛猫の身体に大きな負担をかけることなので、飼い主としては心が痛むものです。では、猫はどんな病気で手術をすることが多いのでしょうか。手術について見てみましょう。

猫の手術理由でいちばん多いのは「歯周病/歯肉炎」

猫の手術理由上位10位は以下の表のとおりです。

猫の手術理由TOP10

順位 傷病名 件数(件) 1回あたりの診療費
中央値(円) 平均値(円)
1 歯周病歯肉炎
(乳歯遺残に起因するもの含む)
439 50,598 6151
2 消化管内異物/誤飲 324 106,267 125,618
3 その他の皮膚の腫瘍 122 66,652 79,938
4 膀胱結石 103 138,893 192,889
5 全身性の腫瘍 96 76,625 97,851
6 外傷
(捻挫/擦過傷/打撲)
77 55,620 76,524
7 嘔吐/下痢/血便
(原因不明)
75 124,200 143,454
8 乳腺腫瘍/乳腺腫瘤 56 126,735 146,885
9 骨折(後肢) 55 196,719 205,424
10 子宮蓄膿症 49 105,984 114,576

トップは「歯周病/歯肉炎」で、手術1回あたりの診療費の平均値は約60,000円でした。2位は消化管内異物/誤飲(約130,000円)、3位は皮膚の腫瘍(約80,000円)と続きます。「歯周病/歯肉炎」は、口腔内のケアをすることで予防が可能です。誤飲も、飼い主が注意していれば防げるもの。異物を食べたり、飲み込んだりしないよう、日ごろから室内を整頓しておきましょう。

10位以内で一番、高額なのが「骨折」で約200,000円となっています。骨折は、交通事故や落下事故が原因であることが多いので 、それらを防げる環境を作ることが大切です。

【関連リンク】
家庭どうぶつ白書2019 p17
歯周病(歯肉炎・歯周炎)<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
骨折<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

猫の去勢手術の費用は?

診察されている猫
治療のための手術ではありませんが、生殖器関連の病気や生活上のトラブルを防ぐために、男の子が受けておきたいのが去勢手術です。

去勢手術はいくらかかる?

猫は生後6~10ヶ月で性成熟を迎えるといわれています。手術をせずに過ごすと、立ったままの姿勢であちこちに尿をするスプレー行動をするようになります。そうなる前に、獣医師と相談して、去勢手術を行うのをおすすめします。

では、去勢手術にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。動物病院によって異なりますが、10,000~20,000円程度のケースが多いようです。手術をする前に行う術前検査や手術後の診察などで、5,000~10,000円ほどかかることも留意しておきましょう。

【関連記事】
猫の去勢をする前に飼い主が知っておきたいこと
猫の去勢後の注意点!いつからごはんをあげていい?大きな変化はある?

猫の避妊手術の費用は?

女の子の場合も、発情期のストレス軽減や生殖器系の病気の予防のために、避妊手術をしておきたいもの。予定しない妊娠を回避するためにも、避妊手術を行ったほうがよいでしょう。

避妊手術はいくらかかる?

避妊手術の場合も、費用は動物病院によって異なりますが、15,000~30,000円の範囲が一般的です。この手術費用に加えて、手術前の検査費、入院費などで6,000~15,000円程度かかるので、忘れずに準備をしておきましょう。

【関連記事】
猫の避妊手術をする時期や費用は?メリット、デメリット、性格は変わるの?

入院費、手術費、1年間ではどのくらいかかる?

ベッドにたたずむ猫の写真
冒頭で紹介したデータは、病気別の費用でしたが、「入院費」と「手術費」として、それぞれ1年間でどのくらいかかるものなのかを見てみましょう。

入院費、手術費、ともに12万円以上

アニコム損保の調べによると、入院費は年間で約130,000円、手術費は約140,000円となっています。もちろん、入院も手術もしてほしくないのが、飼い主の願いですが、万が一のときに備えるのも飼い主の役目です。

また、緊急事態にお金がない!ということがないように「万が一の備え」として、ペット保険の加入についても検討してみてはいかがでしょうか。愛猫も家族の一員。いざというときに頼れる保険があるのは、心強いものです。

猫ちゃんの保険ならアニコム損保におまかせ

【関連記事】
猫のペット保険は必要?知っておきたい猫の保険のこと

※記事内のデータの調査対象は、以下のとおりです。
2017年度始期で契約開始した猫100,472頭(0~12歳)

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【関連リンク】
家庭どうぶつ白書2019 p17
病気と上手く付き合おう(03<慢性腎臓病について>|みんなのどうぶつ病気大百科
異物誤飲に注意(1) <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
尿石症 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
歯周病(歯肉炎・歯周炎)<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
骨折<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

どうぶつの病気に関するデータを公開

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監修獣医師

別府雅彦

別府雅彦

北海道大学獣医学部を2009年に卒業。学生時代は野生動物学教室でクマのフェロモンに関する研究を行う。卒業後は神奈川県の地域中核病院に勤務。脊椎外科や整形外科を中心に、ワンちゃんとネコちゃんの医療に従事。アメリカ獣医内科学会など、学会での発表も行う。信念はどうぶつと飼い主さんが主人公の物語をお手伝いすること。信念を日本に、世界に広げるべく活動中。