「猫は本来、あまり体臭がないどうぶつ」と言われています。それでも「口が臭う」「トイレの臭いが気になる」など、飼い主が不安を感じる場面は少なくありません。猫の臭いの種類・原因・日常ケア、そして病気が隠れている可能性について解説します。

猫の臭いにはどんな種類がある?

健康な猫は本来体臭がほとんどありません。猫は起きている時間の3~4割を毛づくろい(グルーミング)に費やし、毛の汚れなども含めて臭いのもとを自分で舐めとります。これは、猫が狩りをするときに臭いで獲物に気づかれないようにするために身についた習性と考えられています。また、猫が好きな日向ぼっこも、被毛を乾燥させ、紫外線による殺菌効果で臭いのもととなる雑菌を減らして、体臭を防ぐことに役立っていると言われています。
それでも、猫と一緒に暮らしていると、臭いが気になることもあります。そのような臭いには、

  • 口臭(猫の口の中から発生する臭い)
  • 排泄物やトイレ周りの臭い
  • 体臭(グルーミング不足や病気、外傷などに伴って皮膚、被毛、耳などから発生する臭い)
  • 部屋や布製品などに残る臭い

などがあります。それぞれ、どのような原因で臭いが発生するのか、また、病的な原因で臭いが強くなったり変化する場合について、解説します。

口臭

生理的口臭

唾液の分泌が減る寝起きなどには、口の中が乾燥して口臭がすることがあります。また、フードの食べかすが口の中に残って、口臭の原因になることもあります。このような口臭は生理的なもので、口の中を潤してあげたり、歯磨きをきちんとすることで改善することができます。

歯垢や歯石

歯垢は、口の中に残った食べかすと口腔内細菌が唾液と混ざってねばねばと歯に付着したものです。歯垢はそのままにしていると1週間ほどで唾液中のカルシウムと反応して石のように固い歯石となります。歯垢や歯石はそれ自体が口臭の原因になるだけでなく、歯肉に炎症を起こして歯周病の原因となります。

歯周病

猫は虫歯になることは多くありませんが、歯周病は多く見られます。歯周病菌は代謝の過程で臭いを産生します。また、歯肉や歯周組織に炎症が起こって出血したり膿がたまったりすることで口臭が強くなります。

口内炎

猫の口内炎は、猫カリシウイルスや猫伝染性鼻気管炎ウイルスなどの感染によるもの、猫エイズや猫白血病、糖尿病や腎臓病など免疫力が低下する病気に伴って起こるもの、歯周病から炎症が波及して起こるものなどが多く見られます。口腔粘膜の炎症や出血、細菌感染などに伴って口臭が強くなります。

口腔内腫瘍

猫では扁平上皮癌という悪性の口腔内腫瘍が多く見られます。腫瘍からの出血や組織の壊死によって、腐敗臭のような口臭がします。

消化器系の病気

消化不良を起こすと、腸内で発生したガスが呼気に混ざることで生臭いような口臭になることがあります。便秘や腸閉塞のときには、便が腸内に長時間とどまって腐敗物質が増えて血液中に吸収され、呼気として排出されるため、口臭が糞便のような臭いになることがあります。

糖尿病や絶食によるケトアシドーシス

糖尿病でブドウ糖が体内できちんと利用できない状況が続くと、体内でケトン体という物質が増えてケトアシドーシスという状態になり、ケトン臭と呼ばれる甘酸っぱいような口臭になります。

肝機能や腎機能の低下

肝臓病や肝硬変などで肝機能が低下すると、消化や代謝の過程で発生する臭いのもととなる物質の解毒処理ができなくなり体内で増加します。また、腎臓病の末期などで尿毒症が進むと、体内で尿毒素が増加します。これらの成分は呼気に混ざって排出され、口臭が強くなります。

排泄物やトイレ周りの臭い

尿の臭い

砂漠で暮らしていた猫の祖先は、濃縮した尿を生成し排泄することで水の少ない環境に適応してきました。この体質を受け継いでいる現在の猫たちも濃い尿を排泄するため、人や犬と比べて猫の尿の臭いはきついと感じることが多いと思います。
さらに、脱水(尿が濃くなる)、膀胱炎などの尿路感染症(細菌感染によりアンモニアが多く産生される)、重度の糖尿病(ケトン体が排泄されるため甘酸っぱい臭いになる)等の疾患があると、尿の臭いがさらに強くなったり、臭いが変化して感じられるようになります。フードやサプリメント、薬などの影響で尿の臭いが変化することもあります。
一方、高齢猫に多い慢性腎臓病になると、尿を濃縮することができなくなって薄い尿を排泄するようになり、老廃物を尿中に排泄する働きが低下するため、尿の臭いが弱くなります。

便の臭い

猫の便の臭いは、タンパク質が腸内細菌によって分解されてできるスカトールやインドール、硫化水素などの成分に、消化中の食べ物の臭いや肛門腺からの分泌液の臭いが混ざった臭いです。肉食動物である猫は動物性タンパク質の摂取量が多く、動物性たんぱく質が悪臭のもととなる物質を作る腸内細菌を増やすため、猫の便の臭いはかなり強いです。
便の臭いは、食事の内容や生活環境、ストレスや疾患などによって変化します。特に消化の状態と腸内環境は臭いに大きく影響します。腸内環境の悪化によって善玉菌が減って悪玉菌が増えると、便の臭いが強くなります。また、消化不良や腸の炎症、腫瘍などがあると、酸っぱいような臭いや腐敗したような臭いが強くなります。

トイレ周りの臭い

トイレの設置してある場所が、換気の悪い場所や湿気のこもりやすい場所だと、雑菌が繁殖しやすく臭いがこもりやすくなります。また、トイレ周りの掃除が不十分で飛び散った尿がきちんと取り切れていないと、残った尿が尿石となって付着し、強い臭いを発するようになります。床材や壁紙などに尿が染み込んでいつまでも臭いを発するもととなってしまうこともあります。スプレー行為やストレス、病気などでトイレ以外の場所で排泄してしまう場合も要注意です。

体臭

グルーミング不足

健康な猫は自分でグルーミングを行うため体臭がほとんどありませんが、高齢や肥満、病気や外傷で体の痛みがあるなど、何らかの理由でグルーミングが十分にできていないと、皮膚や被毛の清潔が保てず、体臭がするようになる可能性があります。

皮膚の外傷や皮膚炎

けんかや事故などでケガをして化膿した皮膚の傷や、細菌や真菌、ノミやダニなどの感染による皮膚炎は、膿や滲出液が見られ臭いの原因になります。

眼や眼の周りのトラブル

結膜炎や角膜炎などの眼の病気や、逆さまつげ、鼻涙管閉塞などがあると、涙や目やにが多くなります。眼の周りの皮膚や被毛が涙や目やにで湿ったり、汚れたままになっていると、雑菌が繁殖して臭いの原因となります。

耳のトラブル

細菌や真菌、ダニなどが感染して外耳炎や中耳炎、内耳炎などを発症すると、膿や分泌物(耳垢)が出て臭いの原因になります。

肛門腺のトラブル

肛門腺は肛門の脇にあり、臭いの強い分泌液を作ります。肛門腺の分泌液は肛門嚢という小さな袋にいったん貯められ、排便の時などに少しずつ排出されます。この分泌液が貯まってくると、お尻周りの臭いの原因になることがあります。また、排出がうまくいかず分泌液がたまりすぎたり、感染を起こして肛門嚢炎や肛門腺破裂を起こすと、臭いが強くなります。

内臓疾患

内臓疾患が原因で代謝異常が起こり、体臭が変化することもあります。糖尿病で高血糖が続くと体内でケトン体という物質が増え、甘酸っぱい臭いになります。肝臓病や肝硬変などで肝機能が低下すると、消化や代謝の過程で発生する臭いのもととなる物質の解毒処理ができなくなり、体臭がするようになります。また、腎臓病の末期などで尿毒症が進むと、体内で増えた尿毒素の影響で体臭が尿臭(アンモニア臭)になることがあります。

猫の臭いを防ぐ日常ケア

歯みがきやデンタルケア

口臭の原因となる歯垢、歯石の沈着を防ぎ、歯周病を予防するためには、歯みがきやデンタルケアが必要です。猫が食事をした後に口の中に残った食べかすが歯垢となり、それが歯石に変化するのに要する期間は約1週間と言われています。歯石になってしまうと歯みがきでは取り除くことができません。理想的には歯みがきは毎食後がよいですが、難しい場合は少なくとも2~3日に1回やってあげるようにしましょう。
歯みがきやお家でのデンタルケアでは対応しきれないような歯石がついてしまっている場合は、動物病院で歯石除去の処置が必要ですが、通常、全身麻酔をかけての処置となりますので、主治医の先生とよく相談して下さい。また、歯周病がある場合は治療を受けましょう。

グルーミング

ブラッシングやシャンプー、爪切り、耳掃除、肛門腺絞りなどのお手入れは、猫の清潔と健康を保ち、臭いを防ぐことに役立ちます。

ブラッシング

皮膚と被毛の汚れや抜け毛を取って皮膚の健康を保ち、猫の体臭を防ぐ効果があります。部屋の中に飛散する抜け毛の量を減らして部屋の清潔を保つことにも役立ちます。ブラッシングは少なくとも2~3日に1回、長毛の猫や換毛期の猫はできれば毎日行うようにしましょう。

シャンプー

健康な猫の場合、通常シャンプーは必要ありませんが、汚れや臭いが気になる場合などは、1ヶ月に1回程度を目安に洗ってあげてもよいでしょう。また、皮膚病にかかっている猫や皮脂が多く皮膚トラブルの多い猫などでは、治療の一環として薬用シャンプーでこまめに洗うことが必要な場合もあるので、主治医の指示に従いましょう。

耳掃除

本来猫の耳には自浄作用があるため、特に耳にトラブルのない猫の場合は、基本的には耳掃除は必要ありません。ただし、1週間に1回程度は耳の状態をチェックして、普段から猫が耳を触られたり、耳の中を見られることに慣らしておくとよいでしょう。
黄色や黒の耳垢がたくさん出てくる場合や赤み、腫れなどがある場合、痛みや痒み、強い臭いがある場合は、外耳炎を起こしている可能性がありますので、お家では触らずすぐに受診するようにしましょう。

眼の周りのケア

涙や目やにが多い場合、原因に応じたケアや治療を行うことが大事ですので、気づいたら受診しましょう。眼の周りを濡れたままにしないようにこまめなケアが必要ですが、眼の周りの皮膚はデリケートなため、ごしごしせず優しく拭き取ってあげるようにしましょう。眼の周りの毛が長い猫は、眼に入りづらいように、短めにカットしておくとよいでしょう。

肛門腺絞り

肛門嚢に分泌液がたまりやすい猫では、定期的に絞りだすケアが必要なことがあります。お尻を気にして舐めたり、お尻を床にこすりつけたりするしぐさは、分泌液のたまりすぎや肛門嚢のトラブルが疑われます。治療や定期的な肛門腺絞りが必要なこともあるので、主治医の先生に相談してみましょう。

定期的な健康チェックと予防処置

口臭や体臭が強くなるような病気を早期発見し適切な治療を受けることも大事です。日ごろから食欲や排泄の状態などをきちんと把握し、気になることがある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。定期的な健康診断と、ワクチン接種やノミダニ予防、フィラリア症予防なども、猫の健康を保つために大事です。

シニア猫や病気の猫のケア

猫が歳をとったり病気になると、若いときや元気な時に比べて臭いが強くなったと感じる飼い主さんは多いようです。体調不良や筋力の低下から自分で舐めてグルーミングをすることが少なくなること、肛門腺のお手入れが自分でできなくなること、排泄の失敗が増えて被毛が汚れがちになることなどが原因として考えられます。ブラッシング、耳や眼、口の周り、お尻周りのお手入れなどをこまめに行い、普段から皮膚と被毛の清潔を保つようにしましょう。全身シャンプーは、水を嫌がってストレスになる猫も多く、特に高齢猫では負担になることが多いので注意が必要です。ペット用のウェットティッシュやドライシャンプーを使ったり、口の周りやお尻周り、皮脂分泌の多いしっぽの付け根やあごの下など、特に汚れやすいところだけ部分洗いするなどの方法だと負担が少ないでしょう。長毛の猫は、顔周りやお尻周り、しっぽなど、特に汚れやすい部分の毛を短めにカットしておくのも、お手入れをしやすくする一つの方法です。
また、腸内環境の悪化や消化機能の低下、歯石や歯周病など口腔内のトラブル、皮膚炎、外耳炎、内臓疾患などの病気などが原因で、それに伴う臭いが強くなるケースもあります。主治医と相談しながら、猫の状態に合わせた治療とケアをしてあげましょう。

トイレを清潔に保つ

排泄物による臭いを防ぐために、トイレを清潔に保つことは欠かせません。尿の臭いは時間がたつにつれて強くなりますので、排泄後はできるだけ早く処理するのが理想的です。様々なタイプのトイレ砂が市販されていて、処理の仕方や必要な頻度もいろいろです。飼い主さんのライフスタイルに合った、なるべく消臭効果の高いもの選ぶとよいでしょう。
また、トイレはできれば1週間に1回程度は丸洗いして清潔を保つのが理想的です。長く使っていると、トイレの素材の表面についた細かい傷に尿の成分が染み込み、臭いの発生源となっている可能性があるので、そのようなときは買い替えを検討しましょう。
猫はトイレの形態や置き場所、トイレ砂の種類などに対するこだわりが強いことも多く、トイレ環境が気に入らないと、ストレスで膀胱炎になったり不適切な場所での排泄するようになることもあります。トイレやトイレ砂などを変更するときは注意しましょう。

部屋や布製品に残る臭いの対策

猫のいる部屋や布製品の臭いで悩まされることが多いのは、尿の臭いです。尿の臭いの消臭には、クエン酸や酸素系漂白剤が有効です。
尿臭の原因の一つであるアンモニアはアルカリ性なので、酸性のクエン酸で中和すると臭いを減らすことができます。トイレ周りや猫が粗相をした場所の床や壁などに、40倍希釈(200mLの水にクエン酸5g)のクエン酸スプレーを吹きかけ、乾いた布でしっかり拭き取りましょう。クエン酸スプレーは猫に対する安全性は高いですが、濃度や使用方法を守り、誤飲には気をつけましょう。
また、酸素系漂白剤は水に溶けると「過酸化水素」を発生させ、酸化反応によってタンパク質や臭いの原因となる物質を分解することで消臭作用や除菌作用を発揮します。猫のベッドやクッション、毛布など洗濯可能な布製品は、酸素系漂白剤でつけ置きした後、洗濯するとよいでしょう。酸素系漂白剤は皮膚や粘膜に対する刺激作用があります。製品に記載の使用量、使用方法を守り、猫が触れたり誤飲したりしないよう十分注意して使用して下さい。
部屋の空気中に漂う臭いについては、こまめな換気を行うことと合わせて、市販の消臭剤を使用するとよいでしょう。猫の臭いには雑菌の繁殖が関与していることが多いため、除菌効果のある消臭剤を使用すると効果的ですが、なめたり誤飲をすると危険なものもあるので、猫にも安全に使えるものを選択し、使用方法、保管方法には十分に注意して下さい。また、アロマや芳香剤など香りのする消臭グッズもありますが、猫はアロマオイルで中毒を起こすことがあるので使用しないようにしましょう。

病院に行くべきい臭いのサイン

次のような状況のときは、体調不良や何らかの病気が臭いの原因となっている可能性があります。原因に応じた治療が必要となることがあるので、受診しましょう。

  • 急に臭いが強くなったとき
  • いつもと違う臭いを感じたとき
  • 便や尿の異常な臭いがするとき
  • 尿の量や回数が増えて臭いがしなくなったとき
  • 臭いと同時に、皮膚や耳、眼、口の中などに赤みや腫れ、痛み、痒みなどの症状があるとき
  • 臭いと同時に、元気がない、食欲がない、吐き気や下痢がある、歩き方がおかしいなど、普段と違う様子が見られるとき

まとめ

猫と暮らすうえで臭いを完全になくすということは難しいですが、ブラッシングや歯みがきなどの日頃のケアで猫の清潔と健康を保つことと、こまめな掃除や洗濯など生活環境の清潔を保つことで、ある程度の臭いを減らすことはできます。一方で、猫の臭いは病気のサインとして出ている場合もあり、普段と違う強い臭いなどを感じたときは注意が必要です。人も猫も元気に心地よく暮らせるように、適切なケアで臭いと上手につきあっていきましょう。

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監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。