風が暖かくなり、春の気配を感じるころになると、市区町村の役所からお手紙が来ませんか?そう、狂犬病の予防接種のお知らせです。狂犬病は犬だけでなく、人にも感染する病気です。そして、発症した場合、100%死に至る病気です。愛犬を、そしてその飼い主を守るために、狂犬病の予防接種を受けに行きましょう。

狂犬病とはどんな病気?

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる人畜共通感染症(人にも動物にも感染し、動物から人への感染が成立する病気のこと)です。発症した場合は人も犬も有効な治療法はなく、100%死に至ります。

日本は1950年に狂犬病予防法が設立され、すべての飼い犬に、年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務付けられています。日本は、狂犬病ウイルスが存在しないとされる狂犬病清浄国の一つです。清浄国・地域は全世界で6地域のみで、日本以外には、オーストラリア・アイスランド・ニュージーランド・ハワイ・グアム・フィジー諸島のみとされています(2020年現在)。

感染経路は? 

ウイルスは、病気に感染した動物の唾液中に多く存在します。狂犬病にかかっている動物に咬まれることで、傷口からウイルスが体内に入り感染します。

潜伏期間

潜伏期間は、さまざまな報告があります。噛まれてから短くて1週間程度、長い場合は8ヶ月もの間症状がでないこともあります。けれども、神経症状が現れたら、病気は急速に進行して、多くの場合は7日以内に死に至ります。

ウイルスに感染した動物は、症状が出る約2週間前から、唾液中にウイルスを排出しています。つまりこの期間は、その動物は狂犬病にかかっているとまだわからないけれども、他の動物に感染させる力があるということです。

どんな症状?

ミニチュア・ダックスフンド

狂犬病は、脳脊髄炎(のうせきずいえん)による神経障害が主な症状になります。最初は呆けたようになったり、急に攻撃的になったりという、行動の異常が認められます。次に、目に入るものを手当たり次第噛んだり、音や光に過敏な反応を示します。その後、全身が麻痺していきます。歩行困難に始まり、口を開閉する筋肉やのどの筋肉も麻痺することにより、過剰によだれを垂らしたり、食べものが飲み込めなくなったりします。最終的には昏睡状態に陥り、死に至ります。

狂犬病媒介動物について

狂犬病の原因である狂犬病ウイルスは、ほとんどの哺乳動物に感染します。

犬猫のほか、キツネ・タヌキ・オオカミやコウモリなどの野生動物が、媒介動物として対策を取られています。日本では犬、海外では野生動物による媒介が問題となっています。

狂犬病にかからないためには?

マルチーズ

発症した場合、治療の方法はありません。かからないようにすることが大切です。

ペットもその飼い主も、むやみに野生動物や、野良と思われる犬に近づかないことが一番です。

日本は狂犬病清浄国です。現状では国内において狂犬病の感染リスクはないと考えられますが、発症国に囲まれているので油断は大敵です。

とはいえワクチンで予防できることが分かっているので、犬には狂犬病予防法に定められている通り、年1回の予防接種を必ず受けさせましょう。
もし、海外で野犬や野生動物に噛まれた場合は、現地の医療機関を受診し適切な対処をしてもらいましょう。現地で医療機関に相談できなかった場合は、帰国した際に必ず検疫所にてご相談ください。

狂犬病ワクチンについて

狂犬病ワクチンは、「不活化ワクチン」という種類になります。ウイルスを死滅させて感染能力を失わせた後、免疫をつけるために必要な成分を取り出して作製されます。副反応は起こりにくいと言われていますが、免疫を作る力は弱く、体内での抵抗力である抗体量が短期間で減っていくため、定期的な接種が重要になります。

接種のタイミングは?

首をかしげるボーダーコリー

日本では、3~4ヶ月齢で最初のワクチン接種後、年1回の追加接種が義務付けられています。接種のタイミングは、混合ワクチンの接種とも合わせて、かかりつけの動物病院で相談できると良いですね。

なお狂犬病ワクチン接種後に混合ワクチンを接種する場合は、間を2週間程あけるのがよいとされています。

価格はどのくらい?

各市町村の自治体によって、値段が決まっています。おおむね注射料3,000円程度と済票発行料の500円程がかかります。
犬を初めて飼い、自治体への登録が済んでいない場合は、登録料が3,000円ほどさらにかかります。

自治体で定められた金額のため、動物病院で個別に打っても、自治体主催の集合注射で打っても、大きく値段は変わらないことが多いようですが、別途診察料などがかかる場合がありますので、事前にお問い合わせください。

他の犬を怖がったり、興奮してしまうペットなどは、集合注射ではなくかかりつけの動物病院で注射することも検討するとよいでしょう。

ワクチン接種時、接種後に気を付けるべきことは?

狂犬病ワクチンは副作用が出にくいとはいえ、体は抗体を作るように働くことを強いられます。このため、接種当日に嘔吐や下痢、食欲・元気がないなど、いつもと違う症状がある場合は、接種を延期しましょう。

接種後はワクチンアレルギーによる強いアナフィラキシーショック(アレルゲンなどが体内に入ることによって、全身にアレルギー症状がでて、命の危険を及ぼす状態になる反応)が起こっていないことを確認するために、15分程度は院内で様子を見ましょう。万一、ワクチンアレルギーが起きてしまったときを考え、できれば午前中の受診をお勧めします。また、副作用は、運動が引き金になって起こることがままあります。接種後は安静を心がけましょう。また、シャンプーもワクチン接種後1週間程度は空けてから行うことをお勧めします。

予防接種を愛犬に

ミニチュア・ダックスフンド

1950年以前、日本国内では多くの犬が狂犬病と診断され、人も感染し死亡していました。このような状況のなか狂犬病予防法が施行され、犬の登録、予防注射、野犬等の抑留が徹底されるようになり、1956年を最後に、狂犬病を撲滅するに至りました。

現在も清浄国であり続けているのは、撲滅以後約70年、犬と生活を共にする人々と獣医師が、地道に・そして義務に対して誠実に『予防接種』を受けさせてきた、努力の賜物です。世界中ではまだまだ狂犬病に感染して亡くなる犬や人が大勢います。そして、世界中から物資や人が入ってくる日本もまた、いつ狂犬病の脅威にさらされてもおかしくない状況です。先人たちの努力を無駄にしないためにも、予防接種をぜひ愛犬に受けさせてください。

監修獣医師

箱崎加奈子

箱崎加奈子

アニマルクリニックまりも病院長。ピリカメディカルグループ企画開発部執行役員。(一社)女性獣医師ネットワーク代表理事。 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、的確なアドバイスをしたいという思いから、トリマーとして働きながら獣医師、ドッグトレーナーに。病気の予防、未病ケアに力を入れ、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護師、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。