犬に多い病気である「アトピー性皮膚炎」は、これまで一般的に「治らない」と言われていました。しかし近年、こうした病気を「治す」可能性を秘めた選択肢として、動物の幹細胞を用いた「再生医療(細胞治療)」が注目されています。

本記事では、「アトピー性皮膚炎」に対して再生医療(細胞治療)を実施した結果、改善の兆候がみられた症例をご紹介します。

※治療の効果については、その子の状態、対象の病気、投与方法などによって大きく異なります。

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犬のアトピー性皮膚炎とは?

犬のアトピー性皮膚炎は、何らかの刺激に体が過剰に反応し、皮膚にかゆみを生じる病気です。外部寄生虫や感染症などの感染がなく、ハウスダストや空気中のカビ、花粉など本来は無害なはずの環境からの刺激に対して、過剰に反応してかゆみがでる皮膚炎をアトピー性皮膚炎といいます。

食物アレルギーはアトピー性皮膚炎とは定義されませんが、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の増悪因子となることがわかっています。そのため、アトピー性皮膚炎の場合は食事管理が必要になることもあります。

アトピー性皮膚炎(12歳/柴)での再生医療の実例

■Before  再生医療(細胞治療)実施前

全体的に脱毛・皮膚の赤みが見られ、顔の毛も減ってしまい目の周りが黒っぽく見えます。

■After 再生医療(細胞治療)実施後

目に見えて毛の量が増え、顔の毛もしっかりしてきました。皮膚の赤みもほとんど見られません。

~田中花ちゃんの飼い主さまのお声~
アトピー性皮膚炎の治療はもう何年も続けていて、これまでにも皮膚専門医の診察を受けたりと、積極的な治療は何度か試みてきました。しかし、一時的に皮膚の調子が良くなることはあっても、しばらくすると再発してしまっていました。 食事療法やお薬も色々試しましたが、皮膚の状況は悪化する一方で、特にお尻周りの脱毛が酷く、このままこの脱毛が全身に波及してしまったらどうしようと心配していました。
再生医療の実施後は、目に見えてアトピー性皮膚炎が改善してきている実感があります。特に、首や足の毛が増えてきていることが嬉しく、若く、元気だった頃の姿に戻ってきたように思います。

アトピー性皮膚炎(5歳/ジャーマン・シェパード)での再生医療の実例

■Before  再生医療(細胞治療)実施前

再生医療(細胞治療)実施前

皮膚が赤くなり、周囲の毛がゴワゴワとし、耳垢がついてしまっています。

■After 再生医療(細胞治療)実施後

再生医療(細胞治療)実施後

耳垢がなくなり、ゴワゴワだった毛もスッキリと綺麗になりました。

~荒井杏心ちゃんの飼い主さまのお声~
皮膚の炎症(湿疹含め)はだいぶ治まってきた気がします。
何よりもストレスでなのか、痩せてしまっていた身体も徐々に体重が戻ってきました。
強い薬とかを服用したくない為の選択でしたが、やって良かったと思います。

アトピー性皮膚炎(9歳/ミニチュア・ブルテリア)での再生医療の実例

■Before 再生医療(細胞治療)実施前

かゆみのために顔を搔いてしまい、特に鼻の辺りの皮膚が赤くなってしまっています。

■After 再生医療(細胞治療)実施後

顔の赤みがなくなり、再生医療実施前と比べて綺麗な皮膚になりました。

~早川佑南ちゃんの飼い主さまのお声~
愛犬はアトピー性皮膚炎を患い、耳と体をかゆがり、かきこわして赤くなったり傷が出来て痛がったりしていました。また、胃腸の不調と関節炎もありました。
それら全てに効く可能性のある、副作用の少ない治療法ということで、幹細胞投与を行っていただきました。
治療後も耳と体をかゆがり、よくかいていますが、耳は以前ほどかきこわして赤くなってしまったり、膿んでしまったり、傷が出来て痛がったりはしていないように感じます。

アトピー性皮膚炎(2歳・フラットコーテッド・レトリバー)での再生医療の実例

■Before 再生医療(細胞治療)実施前

体の毛が薄くなり、皮膚が見えてしまっている部分もあります。

■After 再生医療(細胞治療)実施後

薄くなってしまっていた部分の毛が伸び、全体の毛量も増えました。

~西澤とむちゃんの飼い主さまのお声~
3月ごろから毛が抜け始め4月下旬には四肢の毛がほぼなくなり、皮膚が剥き出しに近い状態でした。また、とてもかゆがっていました。
かかりつけの動物病院の先生からアトピー性皮膚炎ではないかとのことで、幹細胞点滴を紹介されました。
治療が高額なこと、1回では効果が出ない場合があるなどの説明を受けましたが、点滴をしてもらうことにしました。点滴後、みるみると毛が生え始めて、犬友達のオーナーさんにも、以前よりふさふさしたねといわれ、かゆがりも減りました。

再生医療を受けられる病院はこちら

再生医療は、全国どこの動物病院でもできるという訳ではありませんが、以下の病院で受けていただくことができます。

■アニコムどうぶつ病院グループ病院(一部)
アニコム先進医療研究所株式会社が運営する動物病院の一部では、再生医療の適切な普及・拡大を目的とする「動物再生医療技術研究組合」に加入しているため、再生医療を受けることが可能です。

アニコムどうぶつ病院グループ一覧はこちら
※アニコム先進医療研究所株式会社のHPに移動します。注射器のマークがある動物病院で再生医療が受けられます。

■動物再生医療技術研究組合の加入病院
「動物再生医療技術研究組合」に加入している他の動物病院でも再生医療を受けることが可能です。

動物再生医療技術研究組合参加病院一覧はこちら
※アニコム損保が加入している再生医療の研究を行う組合(動物再生医療技術研究組合)のHPに移動します。

なおアニコム損保では、飼い主さまに代わり、かかりつけの動物病院へご連絡することも行っています。ご希望の場合は以下のアニコム損保あんしんサービスセンターへご連絡ください。

【あんしんサービスセンター】
► 0800-888-8256
受付時間: 平日 9:30~17:30 / 土日・祝日 9:30 ~15:30
※サービス向上のため、通話内容を録音させていただきます。

【WEBでお問い合わせ】
お問い合わせはこちら※1,2

※1 アニコム損保が加入している再生医療の研究を行う組合(動物再生医療技術研究組合)のHPに移動します。
※2 お問い合わせへの回答は動物再生医療技術研究組合から行います。

「動物再生医療技術研究組合」で行われる再生医療を受けた方に、協力金をお支払い

アニコム損保では、2021年7月より、「動物再生医療技術研究組合」において対象となる臨床研究を受けた方に、『再生医療協力金』をお支払いしています。臨床研究をさらに進めることで、病気で苦しむ犬や猫を少しでも減らしたいという思いで取り組みをすすめています。ご興味のある方は、ぜひ下記をご確認ください。

協力金の概要や申請方法についてはこちらから▼
再生医療協力金詳細バナー

アトピー性皮膚炎にかかりやすい犬種ってある?

アニコム損保の人気犬種ランキングTOP10犬種を対象に、アトピー性皮膚炎のかかりやすさを調査した結果、フレンチ・ブルドッグシー・ズーはアトピー性皮膚炎にかかりやすい傾向があることがわかりました。

※かかりやすさ:病気にかかった頭数 / 全体の頭数

また、犬種ごとにアトピー性皮膚炎の初診時年齢を見ると、フレンチ・ブルドッグポメラニアンは比較的若い年齢から通院が始まっていることがわかります。

こうした結果から、特にフレンチ・ブルドッグはアトピー性皮膚炎にかかるリスクが高く、若い年齢から注意が必要だと言えるでしょう。

アトピー性皮膚炎は、一度発症するとなかなか治りづらく、愛犬がかゆがっている様子は飼い主としても本当につらいもの。日頃から愛犬の様子をよく観察して、気になる症状が見られたら、早めに動物病院を受診してください。またもしアトピー性皮膚炎と診断された場合には、再生医療という選択肢があるということも覚えておいていただけたらと思います。

監修獣医師

河本光祐

河本光祐

岩手大学農学部獣医学科卒業後、岐阜大学大学院 連合獣医学研究科にて博士号を取得。2011年 アニコム損害保険株式会社に入社、保険金支払や経営企画、 獣医師としての臨床業務など幅広く従事。現在はアニコム先進医療研究所の代表取締役社長を務める他、再生医療の研究を行う動物再生医療技術研究組合の理事長も兼任する。 愛猫は病院保護猫のカキタロウ、ツブスケ。