うさぎがかかりやすい皮膚病の一つに、湿性皮膚炎があります。

湿性皮膚炎は、持続的に皮膚が濡れた状態が続くことで起こる皮膚病ですが、発症の背景に病気が隠れている可能性があります。

今回は、うさぎの湿性皮膚炎について、原因や症状、治療法を解説します。また、ならないようにするために日常的に気を付けることも確認しましょう。

うさぎの湿性皮膚炎ってどんな病気?

水を飲むうさぎ

湿性皮膚炎は、さまざまな原因によって皮膚が継続して湿った状態になることで、細菌が増殖して皮膚炎を起こす病気です。

一時的に濡れてもすぐに乾くのであれば問題になりにくいのですが、濡れた状態が続くと発症しやすくなります。

うさぎの皮膚は湿気に弱く、湿性皮膚炎になりやすいため注意が必要です。

うさぎの湿性皮膚炎の原因は?関連する病気はある?

皮膚が湿ってしまう原因として、涙、よだれ、排泄物、飲み水によるものなどがあげられます。 そこに、黄色ブドウ球菌や緑膿菌、パスツレラ菌といった細菌が増殖し、皮膚に炎症を起こすことで発症します。

起こりやすい部位と、皮膚が湿る原因については以下のものがあります。

  • 眼の周り

結膜炎などの眼の病気や不正咬合などの歯の病気があると、涙が多く流れることで眼の下が常に濡れた状態になります。

  • 顎、首回り、胸

不正咬合などの歯の病気や口内炎などの口の病気があると、よだれが多くなることで顎の下が濡れた状態になります。

また、飲水ボトルや器でお水を飲んだ際に濡れることもあります。

特に女の子のうさぎは、成長にしたがって首回りが膨らむ「肉垂」ができ、そこが水の器に入ることで湿りやすく注意が必要です。

  • おしりのまわり

膀胱結石などの泌尿器の病気や後躯麻痺(こうくまひ)などの神経の病気があると、おしりのまわりやお腹が尿で濡れた状態になります。

また、消化器の病気で慢性的な下痢があることによっても肛門まわが汚れて発症しやすくなります。

  • 肥満

肥満になると皮膚がたるんでひだ状になり、陰部など皮膚が重なった部分に湿気がこもりやすくなります。

  • 飼育環境

高温多湿な時期・環境や、掃除のされていない不衛生な環境での飼育も原因となります。

うさぎの湿性皮膚炎はどんな症状が出る?

皮膚の赤み、脱毛、ただれ、ジュクジュクした分泌物が出るといった症状がみられます。

痒みや痛みはある場合とない場合がありますが、強い痒みを起こしてかきむしり出血するケースや、強い炎症を起こして痛がるケースもみられます。

うさぎの湿性皮膚炎はどんな治療をするの?

うさぎの画像

うさぎの湿性皮膚炎の治療は、皮膚の治療だけではなく基礎にある病気に対しての治療を行うことが大切です。

  • 基礎にある病気の治療

眼の病気であれば点眼や鼻涙管洗浄、歯の病気であれば不正咬合の治療、泌尿器の病気であれば投薬治療や結石の手術、慢性の下痢であれば投薬治療や食事の改善などを行います。

ただし、後躯麻痺など治療が難しい病気もあります。その場合は、濡れないよう吸水性の高い敷物を使用したり、薬用シャンプーで洗って皮膚を清潔にしたりしましょう。

  • 皮膚に対する治療

濡れた毛や皮膚は、生理食塩水や薬用シャンプー、消毒剤を用いて汚れを取り除き、十分に乾燥させます。

  • 原因菌に対する治療

増殖した細菌に対して、抗生剤の投与を行います。 痛みがある場合には痛み止めを使用することもあります。

治療費は?どれくらい通院が必要?

みんなのどうぶつ病気大百科』によると、湿性皮膚炎における1回あたりの治療費は2,862円程度、年間通院回数は1回程度です。

病気はいつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

うさぎの湿性皮膚炎の予防法は?

高温多湿な環境は発症しやすくなります。空調を上手に使って、適切な気温や湿度を保ちましょう。

不衛生な環境もよくありません。トイレやケージはこまめに掃除し、しっかり換気することも大切です。1日1回の掃除に加え、床が濡れていたり、ゆるいうんちが出たときには、その都度、清潔にするようにしてください。

また、肥満は原因の一つです。食生活を見直し、太らせないようにしましょう。

日常的なブラッシングも効果的です。皮膚の状態を観察しながら行うと、皮膚病の早期発見にもつながります。

基礎に病気があると湿性皮膚炎を起こしやすくなるため、よだれや涙目など気になることがあればすぐに動物病院を受診するようにしましょう。

まとめ

うさぎの湿性皮膚炎は、皮膚の問題だけではなく他の病気が隠れている可能性があります。 そのため、日ごろからうさぎの健康状態に気を配ることが予防につながります。

また、定期的に皮膚の状態を確認し、皮膚が湿った状態が続かないようにすることも大切です。

監修獣医師

石川美衣

石川美衣

日本獣医生命科学大学卒業。2008年、獣医師免許取得。卒業後は横浜市の動物病院で診察に従事、また東京農工大学で皮膚科研修医をしていました。2016年に日本獣医皮膚科認定医取得。現在は川崎市の動物病院で一次診療に従事。小さいころからずっと犬と生活しており、実家には今もポメラニアンがいて、帰省のたびにお腹の毛をモフモフするのが楽しみ。診察で出会う犬猫やウサギなどの可愛さに日々癒されています。そろそろ我が家にも新しい子を迎えたいと思案中。