
不正咬合(ふせいこうごう)はうさぎに多い歯のトラブル。かかっても自然に治る病気ではなく、一度かかると何度も繰り返します。また進行すると二次的な病気を起こし、命に関わることも。すべてのうさぎがかかる可能性があるので、症状や予防法を知り、日頃から注意してあげましょう。
不正咬合という病気はどんな病気?
うさぎの歯は生涯伸び続けるという特徴があります。歯が伸びた分は、チモシーなどの繊維が多い草をよく噛んで食べることですり減って、適切な長さが保たれます。それが何らかの原因でうまくすり減らなくなると、伸びすぎて噛み合わせがおかしくなってしまいます。この噛み合わせが異常になった状態のことを不正咬合といいます。
症状は、切歯(せっし)と呼ばれる前歯で起こる場合と、臼歯(きゅうし)と呼ばれる奥歯で起こる場合があります。

不正咬合になると、伸びすぎた歯によってうまく口を動かすことができなくなり、食欲はあるけど噛みづらい、うまく食べられないといった症状がみられます。進行すると伸びた歯が口の中にあたり、痛みが出たり傷ができたりします。
そしてよだれが流れる、食欲がなくなるといった症状が現れます。よだれで顎の周りや前足が汚れたり、食べ物を口に入れようとしてやめてしまったり、食の好みが変わって柔らかいものばかり食べたり、頻繁に歯ぎしりをする様子が見られます。便が小さくなったり下痢をしたり、痩せてしまうことも。
痛みなどによるストレスやごはんを十分に食べられなくなることから胃腸の動きが悪くなり、食べ物が胃から腸に流れなくなる「うっ滞」を起こすこともあります。
また、歯根(歯の根もと)の先があごの骨の方向に向かって伸びることもあり、細菌感染を起こして歯根の先に膿が溜まる根尖膿瘍(こんせんのうよう)を起こすことがあります。上の臼歯の歯根が伸びると、その上の涙が流れる管が圧迫されて涙が溢れたり、眼球が飛び出したりします。
さらに、毛づくろいがうまくできなくなって被毛の状態が悪くなり、よだれや涙で湿性皮膚炎を起こす場合もあります。不正咬合が起きることで、歯だけでなく、胃や皮膚などの身体全体に影響する病気の原因にもなってしまいます。
このように不正咬合の影響は全身に及び、進行すると命に関わることもある病気です。
不正咬合の原因は?

食習慣や遺伝的な要素など色々な要因があります。切歯か臼歯のいずれかが不正咬合になると、もう一方の不正咬合が誘発されることもあります。主な不正咬合の原因を確認し食生活を見直しましょう。
- 不適切な食事
食事内容がペレットや野菜に偏ったり、パンのような柔らかいものばかり与えたりして牧草をあまり食べないでいると、歯がすり減る機会が減って不正咬合となります。
- 遺伝的な要因
短頭種と呼ばれる顔を横から見たときに顎が短い品種は不正咬合になりやすいといわれています。ネザーランドドワーフやドワーフホトなどはリスクが高くなっています。
- ケージをかじりすぎること
ケージをよくかじるうさぎの場合、硬い金網をかじりすぎたことで歯が歪み、切歯の不正咬合の原因となります。ごはんが欲しいとき、外で遊びたいときにケージを噛んでしまうような場合には無視をしましょう。無視することで、金網を噛んでも要求には応えてくれないということを学習します。
- 外傷
高いところから落下した際に顔をぶつけるなど、外傷によって噛み合わせがずれてしまうことがあります。
不正咬合にはどんな検査をするの?
不正咬合は視診で確認します。切歯は目で見て、そのまま見ることができない臼歯は耳鏡などを口に入れて確認します。歯根が伸びている疑いがある場合は、レントゲンを撮って調べることもあります。うさぎの口は小さいため、特に臼歯は一般の飼い主が外から変化を見ることは難しいです。
不正咬合の治療法は?
不正咬合は放っておいても治ることはなく、悪化してほかの病気の原因にもなります。食欲不振や涙や鼻水が出るなどの異変が出た場合には、動物病院を受診して治療を受けましょう。動物病院では、伸びすぎた歯を歯科用の器具でカットしたり削ったりして適切な長さに調整します。歯の処置は全身麻酔を使って行うこともあります。不正咬合は一度かかると繰り返すことが多いものです。歯を整えた後は、定期的に通院してチェックしてもらい、必要があれば削る処置を受けることになります。
治療費は?どれくらい通院が必要?
『みんなのどうぶつ病気大百科』によると、不正咬合における1回あたりの治療費は2,700円程度、年間通院回数は1回程度です。
病気はいつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

不正咬合の予防法やケアは?

予防、ケアとしてできることは、普段から牧草をたくさん食べてもらうことです。牧草の種類も重要で、繊維が多いイネ科の牧草を食べてもらうことが大切です。うさぎの牧草として一般的なチモシーの一番刈りが理想的ですが、あまり食べてくれない場合は、刈り取りの時期が異なる二番刈りや三番刈り、ほかのイネ科の牧草(オーツヘイ、イタリアンライグラスなど)、生牧草を与えてみましょう。マメ科の牧草(アルファルファ、クローバーなど)を好むうさぎもいますが、イネ科と比較して繊維が少なく、高タンパク、高カルシウムでたくさん食べると健康に影響があるため、メインの牧草にはできません。
どんな種類を試しても中々食べないときは、牧草をペレット状に固めたキューブ状の牧草ペレットをあげて牧草に慣れてもらうことも、飼い主さんができることのひとつです。なお、うさぎの食事内容を変えるときは、急に変更するのではなく、元々の食事に混ぜながら徐々に切り替えていくようにしましょう。
また、牧草の香りで食欲をそそるために電子レンジで少しあたためると食べてくれる場合もあります。
ほんの少し臼歯が伸びて口の中にあたることで、少しの痛みや違和感が気になって牧草をあまり食べなくなることもあります。牧草を食べる量が減ってきたときや、どんなに工夫しても食べてくれないようなときは、うさぎに詳しい動物病院で歯のチェックを受けると安心です。
かじるおもちゃは、うさぎによっては遊ばないことがあります。おもちゃはストレス解消のためのもので、歯の伸びすぎ予防やケアには適していません。逆に硬すぎるものを噛ませると歯に負担がかかり、噛み合わせがずれることがあるので注意してください。万が一、歯が欠けてしまった場合には、必ず動物病院を受診するようにしましょう。
ケージを激しくかじる場合は、ケージの隙間に鼻先が入らないように金網を付けたり、フェンス型のかじり木をつける、ケージをかじっても無視をしてかじらないようにしつけるなどして対策を。
まとめ

歯はうさぎにとって大切な消化器官。日頃から牧草をよく食べさせることを意識して、歯の健康を守りましょう。臼歯の不正咬合は気づきにくいため、食欲や食べ方、食の好みに変化がないかよく見てあげて、気になることがあれば早めに動物病院で診てもらいましょう。飼い主さんがどんなに気を付けていても、遺伝的な要素で不正咬合になることもあります。かかってしまった場合は獣医師の指示にしたがって定期的に通院して歯のチェックを受け、悪化を防ぎましょう。