お迎えしたうさぎは生涯健康でいてくれることが理想ですが、飼っていると病気をしてしまうこともあります。急な病気でも適切に対応できるように、うさぎがなりやすい病気を知っておきたいですね。
ここではアニコム「家庭どうぶつ白書2021」の「うさぎの疾患(大分類単位)の請求割合」に基づき、うさぎによく見られる病気をまとめて紹介します。
胃腸うっ滞
「家庭どうぶつ白書2021」で、うさぎで最も請求割合が高いのは消化器の病気(22.6%)でした。その中でも胃腸うっ滞は、ふだんは元気なうさぎでも食事内容や温度の急変、ストレスなどちょっとしたことがきっかけでなりやすいものです。始めは軽い症状でも、進行すると死につながることがあり、急に悪くなることもあるので特に注意が必要です。
胃腸うっ滞は、なんらかの原因で胃腸の動きが悪くなった状態を指します。食欲不振やうんちが小さくなる・少なくなる、お腹が張るといった症状がみられます。軽い段階であれば自宅でのケアで回復することもありますが、うさぎは何も食べられない状態が1日以上続くと、それだけで内臓が命に関わるダメージを負ってしまいます。毎日、食欲やうんちの様子をよく観察して、早めに対処できるようにしましょう。あまり食事を摂らない、うんちがいつもよりずっと少ない・小さいといった様子が見られたら、なるべく早く受診を。特に丸まって震えている、歯ぎしりをしているようなときは腹痛が起こっていて危険な段階です。休日や夜間でも診てくれる動物病院を探して早急に受診しましょう。
チモシーのようなイネ科の牧草をたくさん食べることで、うさぎのお腹の調子(腸内細菌のバランス)を整える効果があります。ペレットやおやつとのバランスを考えながら、できるだけたくさん食べてもらうことが予防につながります。
不正咬合
消化器の病気とあわせて知っておきたいのは、うさぎの歯の病気です。うさぎの歯は生涯伸び続けますが、通常は食事をすることで伸びた分がすり減っていきます。それがうまくすり減らなくなると、歯が伸び過ぎて噛み合わせが悪くなります。こうして噛み合わせに異常が起きた状態が不正咬合です。
不正咬合になると、口をうまく動かせなくなって食べたいのに食べられなくなってしまうほか、伸びた歯が口の中にあたることで痛みが出て食欲不振になったり、口の中が傷ついたりします。また歯の根もとが伸びることで、涙の通り道を圧迫して目から涙があふれてしまったり、歯の根もとに膿瘍ができることも。顔をぶつけるなどのケガや硬いものをかじること、牧草が少ない不適切な食事などが原因となります。
不正咬合は自宅で対処することは難しく、治療のために動物病院で伸び過ぎた歯をカットしてもらうことになります。一度かかると繰り返すことも多く、定期的な通院を指示されることもあります。予防としては、毎日チモシーのようなイネ科の牧草をたくさん食べることが歯のケアになります。ケージのかじり過ぎにも注意しましょう。ただ、気をつけていても遺伝的な要因でなってしまう場合もあり、完璧に予防することはできません。気になる症状があったら受診をしてください。
熱中症
消化器疾患に次いで請求割合が高かったのは全身性の疾患(16.7%)でした。中でもうさぎを飼育するうえで注意したいのは熱中症です。うさぎは暑さに弱く、室温が28度を超えると熱中症になる可能性が高まります。うさぎが暑さを感じると、体を伸ばして横になり、呼吸を早くして熱を逃そうとします。それでも間に合わずさらに体温が上がると、耳が充血して赤くなる、大量のよだれが出るといった症状があらわれます。さらに進行するとふらついたり自力で立てなくなったりして、重篤になると意識障害を起こします。
うさぎが暑がっている様子が見られたら、早めに暑さ対策をしましょう。扇風機だけでは温度は変わらないのでエアコンで室温の調整を。またケージに直射日光が当たることがないようにしておきましょう。
もし熱中症の症状が見られたら、応急処置として濡れタオルで体を冷やします。ただし、急激に体温を下げると危険なことがあるので、冷たすぎる水や氷は使わないようにするなど注意をしましょう。また、意識があり、水が飲める状態であれば、新鮮な水を飲ませます。その後、早急に動物病院を受診してください。応急処置で元気になったように見えても、その後に血尿や肝不全などが起きる場合もあるため、必ず受診しましょう。
ソアホック
全身性の疾患に次いで請求件数が多いのが皮膚の病気(12.0%)でした。ソアホックはうさぎでよく見られる足裏にできる皮膚炎。「足底皮膚炎」、「飛節びらん」とも呼ばれます。うさぎの足裏には肉球がなく、分厚い毛で覆われているだけ。加齢や飼育環境などの影響で足裏の毛がうすくなると、足裏の皮膚に直接負担がかかり、やがて皮膚炎が起こります。後足にできることが多く、始めは毛が薄くなった部分の皮膚が露出し、厚く硬くなって白いタコのようになります。それが炎症を起こして赤くただれ、悪化すると潰瘍になり骨にまで達することもあります。
早い段階ではあまり影響はありませんが、炎症が起こると痛みのためにあまり歩かなくなったり、足を引きずったりします。痛みから食欲がなくなることもあり、一度かかると患部の洗浄と消毒、投薬、保護を繰り返す治療が長期間続きます。すぐに命に関わることはなくても、進行してしまうと完治しにくく、うさぎの生活の質に大きく影響します。加齢や肥満のほか、足が濡れるような不衛生な環境も原因に。水は給水ボトルで与えるなど足が濡れにくい環境にして、汚れやすい場所は掃除をして清潔に保ちましょう。
定期的な爪切りを欠かさないこと、プラスチックや木製のすのこなど足に負担の少ない床材にすることも予防になります。日頃から足裏をチェックするほか、動物病院で定期的に健康チェックを受けておくと、早い段階で気づいて進行を遅らせることや、悪化させる前に治療することにつながります。
角膜炎
皮膚疾患に次いで請求割合が多いのは眼の疾患(10.6%)。うさぎは目が顔の横につき出してついているため、目に傷を負いやすく、そこから炎症が起きることがあります。角膜は目の最も表面にある膜。牧草の先があたることや、ホコリのような小さなゴミが目に入ること、毛づくろいの際にうさぎ自身の爪で引っかくこと、うさぎ同士のケンカなどで傷がつきやすいものです。その傷から炎症が起こると角膜炎になります。
症状は、まぶしそうにする、目があけられない、涙があふれるなど。痛みのために目を気にする様子も見られます。角膜の炎症が悪化して眼の深いところまで広がると角膜潰瘍になります。重症になると目の表面が白く見えたり、本来は透明な角膜が白く濁ったり、眼球内に蛇行する毛細血管が見えたりするようになります。悪化すると視力低下や失明につながるため、目の異常に気づいたら早めに受診することが大切です。
女の子は子宮の病気にも要注意
うさぎは子宮筋腫、子宮蓄膿症、子宮腺癌など子宮の病気になりやすい動物です。避妊手術をしていないうさぎでは、3~4歳ごろから子宮の病気になる子が増え始め、7~8歳ではほとんどがかかるといわれています。
確実な予防は避妊手術をすることです。避妊手術を受ける時期は生後6ヶ月~1歳の間が推奨されています。女の子をお迎えしたら、早めに避妊手術を検討してください。
まとめ
うさぎがなりやすい病気を紹介しました。同じ症状が見られても必ずしもこの病気とは限りませんが、食欲不振やうんちがいつもとちがう、涙が流れる、自分から歩かないといった様子があれば、うさぎの体に何か異変が起こっています。どんな病気も、悪化してからでは治療が長くかかり、取り返しがつかないこともあります。予防に努めることはもちろん、早めにかかりつけの動物病院を見つけて、何かあれば早めの受診を心がけてください。