うさぎが執拗に同じ場所をなめ続けていたり、毛をむしったりしていたら、自咬症になっているかもしれません。 自咬症とは、その名の通り自分を咬んでしまう病気で、エスカレートすると、皮膚を傷つけて皮膚炎を起こす可能性があります。 今回は、自咬症について原因や症状、治療法や予防法を解説します。

うさぎの自咬症ってどんな病気?

うさぎの自咬症とは、うさぎが自分自身を咬んでしまうことで起こる病気です。 毛を自分で引き抜いて毛刈りする行動(自己バーバリング)が進行して皮膚まで咬んでしまったり、皮膚を直接咬んで傷つけてしまったりします。 原因は多岐にわたりますが、ストレスや発情、偽妊娠によるものがよく見られます。

うさぎの自咬症はどんな症状が出る?

うさぎの女の子の画像

毛を引き抜くことによる脱毛や、皮膚を舐めたり咬んだりすることによる皮膚症状(皮膚が赤くなる、ジュクジュクするなど)が見られます。 口の届く範囲である、首の前側や脇腹、お腹、手足に症状が現れます。

女の子が2~3歳ごろに首の周りにできるふくらみを肉垂と言いますが、この部分は症状が出やすい場所です。これは口が届きやすいことや、濡れたりしわが出来たりして皮膚炎を起こしやすいこと、偽妊娠などが関係しています。

うさぎの自咬症の原因は?

発情や偽妊娠などホルモンによるもの

うさぎは発情すると、顎の下の臭腺から出る分泌物をこすりつけてマーキングしますが、それが過剰になることで皮膚炎を起こし、自咬症になる可能性があります。

また、女の子は妊娠すると自分の肉垂の毛を抜いて、巣作りの材料にします。 妊娠していなくても、ホルモンバランスの乱れにより偽妊娠になると、同様に自分の毛をむしる行動が見られます。

ストレス

ケージが狭い、退屈である、騒音があるなどのストレスにより、過剰にグルーミングやマーキングを行ってしまうような状況のときに自咬症が出ることがあります。

皮膚病

うさぎに多い皮膚病として湿性皮膚炎があります。 湿性皮膚炎は、皮膚が継続して湿った状態になることで、細菌が増殖して皮膚炎を起こす病気ですが、それにより患部を気にして咬んでしまうことがあります。

その他には、ノミやダニ、真菌(カビ)などの感染症や、床材のアレルギーなどにより皮膚の痒みがあることで起こることもあります。

うさぎの自咬症に関連する病気はある?

診察されるうさぎの画像

自身の毛をむしった後、飲み込んでしまうことで、毛球症を引き起こす可能性があります。 毛球症の根本的な原因は、毛が胃や腸の中で毛玉になり溜まってしまうことで、胃腸の動きが悪くなる胃腸うっ滞と言われています。

毛球症になると、胃腸の動きが悪くなることや毛玉が溜まるので、食べたものが通過しにくくなり、食欲の低下やうんちの量の減少などが見られます。 胃腸の動きをよくする薬や食欲刺激剤、毛玉を出しやすくする薬、強制給餌などによって治療しますが、毛玉で完全にふさがれてしまっている場合には外科手術が必要な場合もあります。

うさぎの自咬症はどんな治療をするの?

まずは感染症がないかどうか皮膚検査を行って確認し、特定されればその治療を行います。 発情や偽妊娠など性ホルモンによるものが疑われる場合には、去勢手術や避妊手術を検討します。

ストレスが原因と考えられる場合、飼育環境を見直すようにしましょう。ただし、ストレスの根本的な要因を特定するのは難しいことも多いです。自咬症を起こしたきっかけと考えられるものを取り除くなどして様子を見ながら対応していきましょう。 一時的にエリザベスカラーを使用することで、症状の進行を抑えることができます。

うさぎの自咬症の予防法は?

ケージの中にいるうさぎの画像

本来、うさぎは群れで生活している社会性のある動物なので、日中うさぎだけを狭くて退屈なケージに置いておくことで発症する可能性があります。 十分な広さのケージにする、かじり木などのおもちゃを与える、人と触れ合ったり、うさんぽの時間を増やす、騒音や強いにおいのない場所で飼育するなど、ストレスの少ない飼育環境作りを心がけましょう。

また、発情や偽妊娠など性ホルモンの影響で起こることもあるため、去勢手術や避妊手術を受けることも予防につながります。

まとめ

うさぎの自咬症は、さまざまな原因で起こりますが、特にストレスや発情、偽妊娠によるものがよく見られます。 飼育環境を整えてあげることが予防につながるため、うさぎに適したサイズのケージを用意し、コミュニケーションをしっかり取り、退屈させないようにしましょう。

監修獣医師

石川美衣

石川美衣

日本獣医生命科学大学卒業。2008年、獣医師免許取得。卒業後は横浜市の動物病院で診察に従事、また東京農工大学で皮膚科研修医をしていました。2016年に日本獣医皮膚科認定医取得。現在は川崎市の動物病院で一次診療に従事。小さいころからずっと犬と生活しており、実家には今もポメラニアンがいて、帰省のたびにお腹の毛をモフモフするのが楽しみ。診察で出会う犬猫やウサギなどの可愛さに日々癒されています。そろそろ我が家にも新しい子を迎えたいと思案中。