
眼のもっとも表面をおおっている膜を「角膜」といいます。
うさぎは、もともと眼球が突出している構造から、角膜に傷がつきやすく、そこから「角膜潰瘍」という病気を発症しやすいといわれています。
今回は、うさぎの角膜潰瘍について、原因や症状、治療法や予防法をお話ししたいと思います。
うさぎの角膜潰瘍ってどんな病気?

角膜とは、眼球の前方にある、眼の表面をおおっている透明な膜です。角膜の下には虹彩という組織があります。例えば眼の色は、虹彩に含まれるメラニン色素の量によって変わり、多くの日本人では黒、うさぎでは、色素を持たないアルビノやヒマラヤン種では赤、その他にブラウン、ブルーグレイ、ブルー、マーブルといった色に分類されています。この色素のついた部分(日本人で言う黒目)を覆っているのが角膜です。
角膜は、眼に光を取り入れることで物を見えるようにする役割と、光を屈折させて眼のピントを合わせる役割をはたしています。無色透明で、血管は走っていません。そのため、涙や眼房水(がんぼうすい:眼の中の水)が角膜に栄養や酸素を供給しています。
うさぎは自然界では常に捕食される危険があり、広い視野を確保して肉食動物から逃げられるようにするため、眼がやや突き出した状態で顔の両側面に位置しています。また、体に比べて眼球が大きく、まばたきの回数が少ないこともあり、角膜に傷がつきやすく、角膜の病気を起こしやすいといわれています。
角膜潰瘍とは、角膜に傷がつき、その傷が進行して、眼の表面だけでなくより深くまで炎症が広がる病気です。眼の痛みを伴い、悪化すると眼に穴が開く角膜穿孔(かくまくせんこう)を起こすことがあります。
うさぎの角膜潰瘍はどんな症状が出る?

羞明(しゅうめい:眼をまぶしそうにすること)、涙目(眼にうるっとした涙が見える状態)、流涙(すでに涙が流れている状態)、目やに、結膜(白目の部分)の赤みといった症状が見られます。眼に痛みがあるため、顔周りを触られるのを嫌がったり、じっとして動かなくなったりするといった症状が出ることもあります。
また、角膜混濁(角膜の表面が白く濁ること)が見られることもあります。こうなると、視覚に影響が出る可能性があります。
角膜穿孔を起こすと、眼房水が流れ出てしまい眼が小さくなって失明の危険もあります。できるだけ早めに動物病院へ行くようにしましょう。
うさぎの角膜潰瘍の原因は?
- 異物の混入
牧草や床材のくず、ほこりなどが眼に入ってしまうことで起こります。
- 外傷
同居動物とのけんかや、突発的な動きによる壁への激突、ローリング(立てずに横に転がり続けてしまうこと)による床との接触などにより角膜に傷がつきます。
- 乾燥
うさぎはもともと瞬きが少ない動物です。それに加えて、さまざまな病気により眼が大きく飛び出てくることで、まぶたが閉じない状態になると、角膜が乾燥して涙で保護できなくなってしまい、角膜潰瘍を引き起こします。
うさぎの角膜潰瘍に関連する病気はある?
不正咬合
うさぎの角膜潰瘍に関連する病気として最も注意が必要なのは、不正咬合です。不正咬合とは、歯が伸びすぎてかみ合わせが悪くなる病気で、歯が伸び続ける動物であるうさぎでは発症する可能性が高く、これによってさまざまなトラブルを引き起こします。不正咬合になって上の歯の根元が伸びると、そこに細菌感染が起こり、膿がたまった袋を作ることがあります(眼窩膿瘍:がんかのうよう)。それが眼を圧迫して眼が飛び出た状態になり、角膜潰瘍が起こりやすくなります。
また、歯の根元が伸びることで涙の通り道である鼻涙管が閉塞すると、細菌が感染しやすくなることで結膜炎や涙嚢炎といった眼の病気が起こりやすくなり、そこから角膜潰瘍につながることがあります。
眼の異常
もともとの眼の構造的な異常により、まぶたが内反(まぶたの向きが内側に向いてしまっていること)してまつ毛が角膜にあたってしまったり、逆さまつ毛が生えていたりすることで角膜潰瘍が起こることがあります。
また、先述した不正咬合や細菌感染が原因で、結膜炎や涙嚢炎などの病気になると、眼に違和感があり、爪でひっかいて角膜を傷つけてしまうことで発症するケースもあります。
他には、緑内障になると眼房水がうまく排泄できずに眼がパンパンに大きくなってしまうため、角膜潰瘍を併発しやすくなります。
うさぎの角膜潰瘍はどんな治療をするの?

眼に異物があるようなら除去します。 細菌感染に対して、抗生剤の点眼や全身投与を行います 。 また、角膜の修復を目的として、角膜障害治療薬や角膜保護薬などを点眼します。 症状が重度な場合、瞬膜で傷を覆う手術(瞬膜フラップ)などを行うこともあります。 基礎疾患として歯や眼の病気がある場合には、そちらも一緒に治療する必要があります。
うさぎの角膜潰瘍の予防法は?
眼に異物が入るのを防ぐため、細かいくずの多い牧草や床材は使用を控えるようにしましょう。
爪が伸びていると眼を傷つけやすくなります。定期的に爪切りを行いましょう。
また、同居動物とのケンカを避けるため、相性を確認し、悪そうであれば接触させないようにしましょう。特に男の子のうさぎ同士はケンカする可能性が高いため注意が必要です。
そのほか、歯の不正咬合が原因で起こることがあるため、歯が伸びすぎないようにすることも大切です。繊維質の多く含まれた牧草をたくさん食べさせることで歯は削れます。おやつやペレットをあげすぎるとそれだけでお腹がいっぱいになってしまい、歯が伸びやすくなるため、量をコントロールして牧草をメインで食べさせるようにしましょう。

まとめ
角膜潰瘍になってしまうと、強い痛みを伴うためうさぎにとって非常にストレスになりますし、治療にも時間がかかってしまいます。 そのため、角膜潰瘍にならないように気をつけることが非常に大切です。
日ごろから、涙や目やにといった眼の異常に加え、爪や歯の状態もよく確認するようにしましょう。また、うさぎの目を守るためには、早期発見・早期治療が最も重要です。おかしいと思ったらすぐにかかりつけの動物病院に行くようにしてください!