ぱっちり開いたうさぎの目。

すやすやと眠る間も、完全にまぶたを閉じることは少なく、いつもきれいな瞳を見ることができます。(※安心しきって、完全に目をつぶる子もいます。)

ヒマラヤンや、全身が真っ白の日本白色種のうさぎは、ガラス玉のような真っ赤な目がチャームポイント。ペットショップでお迎えされるうさぎの品種では黒や茶色のつやつやした目の子が多いです。

そんな彼らにも目の病気があります。

目のふちの赤みや涙、左右不対称な目の様子は特に気をつけたい病気のサイン。片目だけのまばたきも、もちろんウインクではありません!

こちらの記事では、うさぎの眼科疾患のひとつ、「ぶどう膜炎」を紹介します。

うさぎのぶどう膜炎ってどんな病気?

うさぎの目の写真

ぶどう膜は、①虹彩 ②毛様体 ③脈絡膜から構成される、眼球の中間層にある血管が豊富な部分のこと。眼球の表面にある「角膜」や、まぶたの内側に見えるピンク色の「結膜」、視覚に関わる「網膜」などと比べると、知らない方も多いぶどう膜ですが、とても大切な組織です。

この、ぶどう膜の部分に何らかの要因で炎症が起こってしまった状態を、ぶどう膜炎と呼びます。眼球の内部の炎症なので、進行には特に警戒が必要です。

  • 虹彩(こうさい)

いわゆる黒目の部分です。真ん中には光の入る穴=瞳孔(どうこう)があります。明るさに応じて瞳孔の大きさを調節する、カメラの絞りの役目をしています。うさぎは、外見的にはほぼ黒目のように見えますが、それはこの虹彩の部分です。

虹彩炎は、ぶどう膜炎のひとつです。

  • 毛様体(もうようたい)

水晶体(目のレンズ部分)の厚みを調節する組織ですが、眼の中の水分(眼房水)を作り出す働きもしています。

虹彩毛様体炎を起こすと、緑内障に発展する可能性があります。

  • 脈絡膜(みゃくらくまく)

網膜を包むように位置する、血管が豊富な膜です。視力に直接関係する網膜に、栄養や酸素を届ける大切な役割をしています。脈絡膜の炎症が網膜にも広がることがあります。

うさぎのぶどう膜炎はどんな症状が出る?

目に炎症が生じるので、涙や充血、痛みによるまばたきなどが見られます。これらの症状はほかの眼科疾患とも共通なので、症状だけでぶどう膜炎だと類推することは難しいです。また、ぶどう膜炎はほかの眼科疾患を併発することが多いため、全般的な目の症状に注意する必要があります。

具体的には、以下のような症状があります。

  • 涙や目やにが出ている
  • 目頭の毛が濡れている、目頭がハゲたり、ただれている

(※涙や目やにが見えなくても、目頭の毛が束になって横倒しになっていたり、ぐちゃぐちゃと見える場合は、眼からの分泌物が出ている可能性があります。)

  • 目のふちや白目が赤く充血している
  • まぶたをけいれんさせる

(※まばたきの回数が少ないうさぎは、頻繁なまばたきは痛みのサインです。)

  • 目が半開きになる(痛みによって目が開けられない状態)
  • 眼球が小さく見える

(※ぶどう膜炎が進行し、炎症が進みきった状態になると、眼がしぼんだように小さくなることがあります。)

  • 瞳孔の大きさが左右で違う

(※緑内障によって瞳孔が大きく開いたり、炎症を起こした虹彩が水晶体に癒着すると虹彩が小さくなったりします。両目ともに発症することもあるので、瞳孔の大きさが左右対称でも、他の症状がある場合は眼科疾患が疑われます。)

  • 眼の表面が濁って見える、青みがかって見える(角膜浮腫)

これらのサインが見られた場合は、急いで動物病院で診察を受けましょう。

うさぎのぶどう膜炎の原因は?

うさぎの顔画像

外傷がきっかけのものと、感染症が血管経由で眼に伝わったものが代表的です。

外傷

物理的に損傷し、角膜の炎症や潰瘍が目の奥に広がってしまった場合などがあります。

同居のどうぶつさんとケンカをしてしまったり、とがった牧草や木製のおもちゃの先端が目に触れてしまった、床材としてチップ状の木くず・おがくず(パインチップなど)を使用していて目に入ってしまったといった要因があると、傷がつく原因となります。

角膜の傷や潰瘍、炎症は時間が経つと悪化してしまい、ぶどう膜炎につながる可能性があります。

感染

細菌感染や、一部の寄生虫の関与が考えられています。病原体としては、エンセファリトゾーン(Encephalitozoon cuniculi)や、うさぎでさまざまな体調不良を起こすことが知られている細菌のパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)などがあります。ストレスやケージの清掃不足などがあると感染症のトラブルは起こりやすくなり、呼吸器にも症状が出るケースがあります(スナッフルなど)。

目だけではなく全身の健康を守るためにも、感染症対策として衛生的な飼育環境を整えましょう。

うさぎのぶどう膜炎に関連する病気はある?

目の構造は密接に関わり合っているため、多くの眼科疾患がぶどう膜炎と関連します。

また、不適切な食事を続けることで歯が伸びすぎると、歯の根元から眼球の圧迫や感染症が起こり、ぶどう膜炎を引き起こすことがあります。

目の痛みを伴うと、元気や食欲の低下も見られます。

角膜炎や角膜潰瘍

眼球が突出して角膜が乾燥する疾患や、外傷による角膜の傷などが原因で、角膜に炎症や潰瘍が起こります。進行すると、ぶどう膜にまで炎症が広がってしまうことがあります。痛みによってまばたきや流涙が起こります。

緑内障

虹彩に炎症が起こると、虹彩と水晶体が癒着し、眼房水の流出口を塞いでしまいます。この状態が続くと眼球がパンパンになって眼圧が上がってしまう緑内障という病気を引き起こします。炎症や眼圧上昇は強い痛みを起こすため、まぶたのけいれんや、流涙、白目部分の充血が起こります。

前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)

眼球の中に白っぽい膿が溜まって見える時は、前房蓄膿が疑われます。虹彩や毛様体に炎症がある(ぶどう膜炎である)ことを意味しています。膿が溜まりすぎると目が変形したり、飛び出して目を閉じることができなくなり、角膜炎も併発します。

不正咬合

体力を奪う疾患として不正咬合がベースにあると、感染性の疾患が起こりやすくなると考えられるため、乾燥牧草を食べていない時には警戒が必要です。口腔内を確認してもらい、歯が伸びている場合は処置してもらいましょう。

うさぎのぶどう膜炎はどんな治療をするの?

まずは、ぶどう膜炎のほかに併発している疾患がないかを確認します。ぶどう膜炎の根本となる原因が見つかった場合はそちらの治療を行いますが、原因が特定できない場合も多いです。

ぶどう膜炎に対する直接的な治療としては、抗炎症・鎮痛剤( NSAIDs :非ステロイド系抗炎症剤)や、抗生物質などの点眼が行われます。感染症の関与を考えて抗生物質の内服を同時に行う場合もあります。

角膜の傷がある場合には、眼に潤いを与えて保護する点眼剤が追加されたり、緑内障を併発している場合は眼圧を下げる点眼薬が併用されます。

複数の点眼薬を使用する場合は、同時の点眼で薬剤が混ざるのを避けるため、時間をずらして投与することも。点眼薬を処方されたら、投与間隔についても確認するとよいでしょう。

うさぎのぶどう膜炎の予防法は?

金桶に入ったうさぎ

角膜に傷がつかないように注意しましょう。また、感染症を防ぐため、衛生的な飼育環境と適切な食事内容を整えて、うさぎの体力が落ちないように気をつけてあげましょう。

外傷を予防するために、具体的には以下のような注意点があります。

  • 床材のチップ

パインチップなどのかたい木材のおがくずを使用するのは控えましょう。目に付着して、角膜を傷つけるきっかけになることも。床材を使用する場合は、敷きわらや牧草の方が安心です。

  • ケンカによる傷

同居どうぶつがいる場合は、闘争に注意しましょう。室内遊びの際は時間をずらしたり、一緒に遊ばせるときは万が一のケンカの際に隔離できるよう毛布などを準備しながら見守りましょう。犬や猫はケージ越しでも手が入ってしまうことがあるため、室内を自由に移動できるどうぶつがいる場合は、うさぎのケージは違う部屋に隔離してあげましょう。

  • 眼を傷つける危険なおもちゃ類

かじって遊ぶことを目的とした木製のおもちゃもありますが、割れたり欠けてしまうと予想外にとがった部分が出ることもあります。とくに、ぶら下げるタイプの製品には要注意。びっくりした時などに急に飛び跳ねると、うまくよけられずに目にあたってしまう可能性があります。枝が突き出すような形状になってしまう前に買い換えてあげましょう。

また、脱走防止でケージの扉を固定するためにクリップ類を使用する場合は、突起がケージ側に入らないように気をつけてあげるといいですね。

日ごろからチモシーなどの乾燥牧草をたくさん食べて、過長歯や不正咬合を予防し、体力をつけることもとても大切です。トイレの清掃もこまめに行いましょう。

まとめ

ぶどう膜炎は眼球の中間層にあたる部分の炎症ですが、ぶどう膜炎に限った特異的な症状は少なく、全体的な眼の異常として症状が現れる傾向にあります。併発する眼科疾患も多いため、診察の際は角膜の状態や眼圧などの確認も推奨されます。眼球の内部まできちんと判断するためにも、眼科検査用の器具を使って状態を把握することが望ましいです。

赤みやまばたきがあっても、「抜け毛やほこりが入っただけかな?」と油断して様子見してしまいがちですが、内部で大きなトラブルが隠れていることもあります。

ぶどう膜炎はほかの目のトラブルが進行することで発生することもあるので、早期の治療が大切です。目の赤みや涙、ウインクのようなまばたき、瞳孔のサイズの違いなど、何かおかしな様子があれば、自宅で無治療のまま経過観察をすることは避けたいもの。

進行してしまうと、うさぎの身体にもお財布にも負担がかかってしまうので、早期の発見と通院を心がけましょう。

監修獣医師

中道瑞葉

中道瑞葉

2013年、酪農学園大学獣医学科卒。動物介在教育・療法学会、日本獣医動物行動研究会所属。卒後は都内動物病院で犬、猫のほか、ハムスターやチンチラなどのエキゾチックアニマルも診療。現在は、アニコム損保のどうぶつホットライン等で健康相談業務を行っている。一緒に暮らしていたうさぎを斜頸・過長歯にさせてしまった幼い時の苦い経験から、病気の予防を目標に活動中。モットーは「家庭内でいますぐできる、ささやかでも具体的なケア」。愛亀は暴れん坊のカブトニオイガメ。