ケガをしていなくても、うさぎの足が正しい位置を保てなくなる病気があります。うさぎの足が外側にのびていたり、不自然に広い角度で開いているのは、もしかしたら病気かもしれません。健康なうさぎでも足を伸ばして伏せるしぐさをしますが、病気の場合との違いを知っておくことで、早期発見に備えましょう。

本記事では、うさぎの開張肢(かいちょうし)についてお伝えします。

うさぎの開張肢ってどんな病気?

うさぎが足を正しい位置に保てなくなり、右足は右側へ、左足は左側へと外側に開いていってしまう病気です。両後足に発症する場合のほか、片足だけ、前足だけということもあります。生後4ヶ月以下の成長期に発症しやすく、徐々に進行することが多いです。

くわしい原因はまだはっきりとわかっていませんが、遺伝的な要因が関係していると考えられています。

うさぎの開張肢はどんな症状が出る?

うさぎの写真

うさぎがケガをした場合には、突然歩き方や姿勢がおかしくなるのが一般的ですが、開張肢の場合はゆっくりと進行していくのが特徴です。

外傷の心当たりもないのに姿勢がおかしいときや、成長期のうさぎの足がだんだん外に広がっているという場合には、開張肢の疑いが強くなります。

開張肢の症状のあるうさぎにレントゲン検査を行うと、足の関節(股関節や肩関節、膝関節など)に脱臼や骨の変形が認められる場合もありますが、見られないこともあります。触診やレントゲン検査の画像のみでは、外傷による脱臼との見分けは難しいので、飼い主さんからの情報も診断の助けになります。診察の際は、ケガなどの明確なきっかけの有無や、初めて異常に気づいた時期について、わかる範囲で伝えましょう。

開張肢と正常な姿勢を見分けるポイントは?

健康なうさぎが、暑いときやリラックスしているときに足をのばしている場合は、人間が正座を崩して横座りしたように、足の方向をおおむねそろえて伸ばすのが一般的です。のびた姿勢をとることがあっても、声を掛けたり、食べ物やおやつに反応してすぐに正しい姿勢に戻れる場合や、部屋の中で遊ばせて正常な歩行やダッシュができるようであれば、健康な姿勢の可能性が高いと思われます。

のびて過ごしているのが暑いときやリラックスしている状況に限定されていれば、ほとんどの場合、心配はいらないでしょう。

一方、開張肢(とくに両後足の症状)では、足にスキー板をはめてハの字の体制をとったような、本来のうさぎには不自然な開張が見られることがあります。後足が大きなハの字型に広がっている、いつも足が開いている、足をひきずるような歩き方をしているなどが見られるときには、注意が必要です。

うさぎの開張肢に関連する病気はある?

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開張肢の発症には、遺伝による生まれつきの股関節脱臼(股関節形成不全)や神経疾患の関連が考えられます。成長期に徐々に進行していくという特徴から、開張肢によって骨が変形する可能性も推測されます。

ただ、遺伝的な要因で骨の変形が起こった結果、足が開く症状が出るという因果関係も考えられるため、どちらが根本的な原因かをはっきりさせるのは難しいと思われます。

うさぎの開張肢に似た症状の病気は?

足の様子がおかしいという症状が出たからといって、必ずしも開帳肢というわけではありません。具体的には、麻痺や運動失調を起こす以下のようなケガや病気の可能性もあります。

外傷

落下などによって腰の骨が折れた場合には、脊髄損傷により下半身の麻痺がおこる可能性があります。うさぎの腰椎(腰の骨のこと)は飛行機のような形をしているため衝撃に弱く、羽のようなかたちの部分が折れやすいため、落下時には大きなダメージを受けやすいです。

ケガの心当たりがある、突然動けなくなっている、失禁が起き、お尻が排泄物で汚れているなどのときは、背骨の破損や腰椎脱臼による後躯麻痺も考えられます。すぐに動物病院を受診しましょう。

泌乳(乳腺から乳が分泌されること)による低カルシウム血症

出産後のうさぎにも、同じような症状がでる可能性があります。

乳汁にカルシウムをとられると筋肉を収縮するためのカルシウムが不足し、麻痺や筋肉の衰弱症状が出ることがあります。分娩後3週間ごろに起きやすいことが知られています。

お母さんうさぎが歩けなくなっていたり、姿勢を保てなくなっていたりする場合は、低カルシウム血症も考えられます。

開張肢の発症は性成熟前の若いうさぎに見られることが多いので、分娩したおとなのうさぎの足に変化がある場合は、開張肢以外の健康トラブルも疑われます。全身の問題で足に症状が出ることもあるため、全身を詳しくかかりつけの動物病院でみてもらいましょう。

子宮蓄膿症

女の子のうさぎには、子宮の中で細菌感染を起こして膿がたくさんたまってしまう「子宮蓄膿症」という病気があります。子宮蓄膿症では、元気や食欲がなくなり、動きたがらなくなる症状が一般的ですが、後足の硬直がでることもあります。細菌の影響で全身状態が急激に悪化することもあるので、早急な治療が必要です。

このように、開張肢以外でも姿勢や足の位置に変化が出る病気があります。

気になる変化があればすぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

うさぎの開張肢はどんな治療をするの?

開張肢には遺伝性の神経疾患の関与も考えられるため、根本的な完治は難しいのが現状です。しかしながら、開く足の関節をテーピングで固定し、姿勢を保てるよう矯正することによって症状の進行を遅らせる方法があります。

どうぶつのテーピングには熟練した技術が求められます。特にうさぎの場合、骨ももろく強く巻きすぎると血流の阻害や痛みが出ることもありますし、ゆるいと保持の効果が得られなくなります。また、うさぎ本人もテーピングを着けた状態に慣れる訓練が必要です。不十分な対応では暴れてケガをさせてしまうことがあるので、テーピングをする側もされる側も慣れるまでは動物病院にお願いしましょう。

動物病院に連れて行くときの注意点は?

「足の角度や姿勢が奇妙」というサインだけでは、開張肢かどうかはまだわかりません。あらゆるケガ・病気の可能性を考えて通院の準備を進める必要があります。万が一、腰の骨が折れていたり、脱臼などが症状に関係していた場合は、乱暴に抱き上げると悪化してしまう可能性もあります。不用意にふれたり動かしたりするのは控えましょう。

添え木などの応急処置もうさぎには難しいことが多く、恐怖や緊張から暴れてしまう場合もあります。かえって危険な状況に陥る可能性もあるので、そっとしておく方が安全です。

通院用のキャリーなどに移すときは、バスタオルなどで包みながら全身をすくいあげるようにして、慎重に運びましょう。

急に足が動かなくなった場合や、元気や食欲がない、全く動かず麻痺が疑われる、足がこわばって硬直しているときなどは、緊急の可能性が高くなります。とくに女の子では子宮蓄膿症に注意する必要があります。

うさぎは完全草食動物のため、半日でもまったく食事をとれていないと急激に具合が悪くなり、命にかかわることもあります。足の変化のほかに食欲不振などの症状もある場合は、受診可能な近くの動物病院ですぐに診察を受けるようにしましょう。

うさぎが開張肢になったら気をつけることは?

開張肢があっても短い距離なら歩くことができれば、その子なりのペースで家庭内で日常生活を過ごせます。症状の強さによっては、段差を乗り越えられなかったり、高いところに口が届かない、寝たきり状態とさまざまなので、生活環境の工夫が必要です。

トイレと盲腸便

一般的なタイプの使用が難しいようであれば、犬用のトイレシートを敷いておしっこで体が濡れないようにバスマットや敷きわらを活用しましょう。おしりを口につけて盲腸便を食べるのが難しそうであれば、すのこや金網の使用を避けて、床に盲腸便が残るようにして落下便を食べられるようにするのもうさぎの助けになります。

食器と給水器

ボトルタイプの水入れからの飲水が難しい場合は、深皿を使ってお水を与える方法もあります。牧草フィーダーからの食事が難しそうなときは、おしっこで牧草が汚れるのを避けるため、一日数回に分けて乾燥牧草を与えるのもよいと思います。

床ずれ

同じ姿勢で長時間いると、圧迫された部位の血流が悪化し、床ずれや皮膚炎などを起こす可能性があります。足やおしりだけでなく、おなか側の生殖器周囲の状態も確認しましょう。毛玉や盲腸便の付着がある場合は、お湯で濡らしたタオルで汚れをふき取り、ブラッシングで清潔にしてあげてください。また、自分でグルーミングができない場合は、よだれやおしっこ、飲み水によって皮膚が濡れた状態となり皮膚炎が起こりやすくなります。吸水性の高いバスマット、顔のせクッションなど敷物を工夫して調整しましょう。うさぎ自身に代わって、お耳の根本や体をマッサージして体へ刺激を与えてあげるだけでも効果があります。

うさぎの開張肢の予防法は?

動物病院にいるうさぎ

生まれつき持っている遺伝子が関与すると考えられているため、おうちにお迎えしたうさぎに対して行える有用な予防法は、残念ながらわかっていません。

複合的な原因で発症している可能性はありますが、遺伝性の疾患の可能性が考えられる開張肢のあるうさぎは繁殖を控えたほうが良いでしょう。

まとめ

開張肢の発症が多くみられる時期は子うさぎのころなので、発症する場合はお迎え直後の時期の可能性が高いです。「変わった姿勢だけど、この子の個性なのかな?」と見逃さずに、わずかな変化から病気を見つけてあげましょう。

なにか気になる様子があれば、念のため早めの受診をおすすめいたします。

監修獣医師

中道瑞葉

中道瑞葉

2013年、酪農学園大学獣医学科卒。動物介在教育・療法学会、日本獣医動物行動研究会所属。卒後は都内動物病院で犬、猫のほか、ハムスターやチンチラなどのエキゾチックアニマルも診療。現在は、アニコム損保のどうぶつホットライン等で健康相談業務を行っている。一緒に暮らしていたうさぎを斜頸・過長歯にさせてしまった幼い時の苦い経験から、病気の予防を目標に活動中。モットーは「家庭内でいますぐできる、ささやかでも具体的なケア」。愛亀は暴れん坊のカブトニオイガメ。