うさぎの高カルシウム尿症ってどんな病気?

うさぎのおしっこにはカルシウムが含まれています。そのカルシウムを含む結晶が過剰に生じてしまうことで、おしっこをすることが難しくなったり、膀胱炎などの症状がでる病気を高カルシウム尿症といいます。

不適切な食事や水分不足、運動不足や肥満が原因になるので、生活習慣を管理して予防につとめましょう。

健康なうさぎの尿の特徴

うさぎ

動物のおしっこは透明な淡黄色が基本で、濁りや赤い尿は病的兆候と見られることが多いですが、うさぎでは健康な場合でも白濁していたり、赤茶色の尿を出すことがあります。

白濁している

うさぎは健康な場合でも、結晶成分を含んで白く濁った尿を排泄することがあります。

うさぎは食事からカルシウムを吸収しやすい動物です。体内の不要なカルシウムは尿中に多く排泄しています。炭酸カルシウムやシュウ酸カルシウムとして排泄されるので、白っぽい結晶として見られることがあります。

ケージやトイレの床面の砂っぽいざらつきや、トイレシーツの表面の粉のようなものは、尿中の結晶成分ということも多いです。

排尿障害や血尿などがなく、一回の排尿でまとまった尿量があるようでしたら、結晶が多少混じっていても多くの場合は心配ありません。

しかし、何らかの要因で結晶成分が過剰に増えた病的な状態に陥ることがあります。また、細菌感染や結晶成分の影響、膀胱炎などで白濁することもあります。

うさぎの場合は白濁した尿でもただちに病気と判断される所見ではありませんが、病的な濁りのケースもあります。 排泄回数や体調に変わったようすがあれば、診察を受ける必要があります。

赤っぽい

ポルフィリンという色素の影響で、赤茶色のおしっこを出すことがあります。

ポルフィリン尿は健康なうさぎでごく普通に見られますが、血尿の場合も似たような赤褐色が見られます。見た目だけでは区別が難しいので、赤や茶色のおしっこが出た場合は動物病院で診察を受けることが望ましいです。血尿かどうかは試験紙の反応などで少量の尿でも判断できることがありますから、気になるおしっこがあれば動物病院に持参するとよいでしょう。

うさぎの高カルシウム尿症はどんな症状が出る?

カルシウム結晶を含むおしっこ自体は病気ではありませんが、カルシウムが過剰に増えて膀胱内に砂のようにたまったり、結石が尿の通過を妨げたりすると、病的な高カルシウム尿症となり、症状が現れます。

頻尿または排尿困難、尿やけによるお尻の汚れ、ペースト状の尿が出ることがあります。

排尿障害や結石がある場合は、元気食欲の低下、痛みによる歯ぎしりや背中を曲げた姿勢がでることもあります。何回も排泄姿勢をとるのにおしっこが見られない場合は要注意です。

カルシウムの結晶が排泄されればおしっこはざらざらしますが、結晶が膀胱内に沈んで上澄み部分だけが排泄されるときは、尿は透明なこともあります。そのため、排泄された尿の見た目や尿検査だけではカルシウム尿症の有無を判別できないケースもあります。

カルシウムの成分はレントゲンに写るので、X線での画像検査を行うと、大きな結石や蓄積した結晶は確認可能です。触診によって拡大した膀胱や泥状の結晶がさわれきる場合もあります。

うさぎの高カルシウム尿症の原因は?

3歳以上の中高齢のうさぎに多く見られるので、うさぎ側の身体の要因も関係していると考えられますが、食事内容や飼育環境の影響も大きいです。

不適切な食事

カルシウム含有量の多い食事が原因となります。

うさぎのカルシウム要求量は食物100gあたり0.22mgとされていますが、アルファルファやペレットはカルシウム量が多い傾向にあるので、与えすぎるカルシウム過剰となります。

チモシーなどのイネ科牧草を主食としてたっぷり与え、アルファルファは量を計って与えるとよいでしょう。成長期が完了していたら、体重の5%程度のグラム数が一日量の目安となります。

生野菜は水分摂取できるメリットもありますが、野菜の種類と量によってはカルシウム過剰になることがあります。

<カルシウム含有量が多い野菜類>

  • 小松菜
  • チンゲンサイ
  • 大根の葉
  • ナズナ(ぺんぺん草)

これらはカルシウム含有量が多いので、たくさんあげることは避けたほうが安心です。うさぎが喜んで食べる野菜ですし、与えてもよい食材ですが、チモシーの副食として少量を与えるとよいでしょう。

飲水、水分不足

水分摂取量が少ないとおしっこが濃くなるので、結晶ができやすくなります。排尿回数も減ると膀胱炎などの泌尿器の病気が起こりやすくなります。給水器の形状や設置の高さがうさぎにあっているか確認しましょう。

運動不足・肥満

運動不足や肥満があると結晶や結石ができやすくなります。

一日中ケージだけで生活していたり、ペレット中心の食事やおやつや果物の食べ過ぎは太りやすくなります。

サプリメント過剰

ミネラル分を含むサプリメントやミネラルウォーター(硬水)が問題になることがあります。サプリメントは適量を守り、使用に不明な点があればかかりつけ医に相談しましょう。

うさぎの高カルシウム尿症に関連する病気はある?

尿路結石や腎機能の低下(腎不全)が起こることがあります。

膀胱、尿道、尿管、腎盂(じんう:腎臓の内部のこと)などのおしっこの通り道に結石がとどまる病態を総称して「尿路結石」とよびます。

尿路が完全にふさがれてしまうと、急激に全身状態が悪化します。排尿障害が1日以上続くと腎不全になる可能性が高く、命にかかわることもあります。

緊張や環境変化などの病気以外の要因で排尿を我慢することもありますが、丸一日排尿がない場合は危険な状態の可能性もあります。排尿頻度の低下に気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

うさぎの高カルシウム尿症はどんな治療をするの?

食事と生活習慣が大切なので、動物病院での治療だけではなく、家でのケアも重要です。

動物病院での治療

  • 利尿する

結晶成分の排泄を促すため、尿の量を増やします。点滴で補水すると尿量を増やすことができます。点滴は腎機能低下の治療もかねています。

  • 抗生物質の使用

細菌感染や膀胱炎がある場合、抗生物質で治療を行うことがあります。

  • 外科手術

レントゲンなどの画像検査で大きな結石が確認された場合や、尿道閉塞による排尿困難症状がある場合は、結石を除去する手術が必要なこともあります。

点滴や抗生物質などの内科療法を行っても排尿困難や血尿の症状が改善しない場合は、手術の必要性が高くなります。

手術を行っても、根本的な原因である食生活や運動不足が改善されないと再発してしまうので、術後の家での健康管理が大切です。

おうちでのケア

  • 飲水量を増やす

カルシウムの結晶化を抑えるため、水分摂取を増やして尿を薄めます。 うさぎが飲みやすい給水器を用意してあげましょう。

ボトルタイプの給水器は水が汚れにくいですが、少量ずつしか舐められなかったり、身体を痛めているうさぎでは飲みにくいというデメリットもあります。

お皿タイプは飲みやすいですが、軽い素材の容器では倒してこぼすことがあります。また、汚れが入ると飲まないこともあります。 うさぎの飲水状況を見て複数の給水器を用意するのもいいでしょう。

少量の野菜汁や果汁で水に味をつける方法もありますが、糖分の過剰摂取による下痢や腸内細菌の不均衡、水が腐敗などのおそれもあるので、元気と食欲がある場合は水への混ぜ物は控えたほうが安心です。治療の一環でジュースや流動食が推奨されるときは、獣医師に与え方を確認するとよいでしょう。

  • 生野菜で水分をとる

通常は乾燥牧草中心の食生活が推奨されますが、あまり水を飲んでくれないときは、生野菜を与えるのもよいでしょう。葉物野菜を水で湿らせて与えるのも方法のひとつです。

<水分摂取に適した野菜>

  • レタス、ロメインレタス
  • 白菜
  • サラダ菜
  • キャベツ

これらの淡色の葉野菜は、比較的カルシウム含有量が少なく、うさぎも好んで食べやすい種類です。

急に食生活が大きく変わると下痢を起こすこともあるので、野菜を増やすときは少しずつにして、牧草の採食量は減らさないように気をつけてあげましょう。

  • 清潔なトイレとリラックス環境

汚れたトイレや緊張する飼育環境下では、排尿を我慢してしまうことがあります。 トイレはこまめに掃除し、うさぎが静かに落ち着いて過ごせる場所を作ってあげましょう。

うさぎの高カルシウム尿症の予防法は?

適切な食事と運動不足解消が大切です。肥満にならないよう管理するとよいでしょう。

食事

チモシーなどのイネ科牧草を主食として与えます。

ペレットやアルファルファはカルシウムが多いので、体重の5%までを一日量の目安として量を決めて与えます。 肥満を防ぐため、糖分や炭水化物を含むおやつ類は控えましょう。

「チモシーでも食べ過ぎると太るのでは?」と心配する方もいますが、繊維質主体のイネ科牧草で肥満状態まで太ることは難しいです。

食物繊維不足で病気になることの方が多いですから、チモシーは食べ放題でたっぷり与えるとよいでしょう。

カルシウム含有量の多い野菜(小松菜、チンゲンサイなど)はうさぎが食べてもよい野菜のひとつですが、チモシーの採食量が減るほど与えるのは避けたほうが安心です。

運動

運動によるカロリー消費で肥満が予防できるだけではなく、排尿もしやすくなります。ケージにこもりっきりの生活習慣では尿中のカルシウム結晶ができやすくなりますから、できる限り広いケージにして、サークル内や室内での運動時間をとりましょう。

足腰のケガや病気で運動できない場合は、カルシウム尿症をふくめ、さまざまな泌尿器の病気が起こりやすくなります。尿やけや膀胱炎も起こしやすいです。飲水量を増やしたり、食事から水分摂取できるように工夫してあげるとよいでしょう。

まとめ

うさぎのおしっこは正常な場合でもざらざらした成分を含んで濁っていたり、赤っぽいことがあります。そのため、泌尿器疾患を初期症状で見つけることが難しい場合もあります。

尿中にカルシウム結晶が含まれること自体は病気ではありませんが、食事や生活環境の乱れなどでカルシウム結晶が増え、泌尿器の病気を起こすこともあります。

完全な排尿障害を起こすと1~2日で致命的な腎障害につながる恐れもありますから、おしっこが出ない・少ない、背中を丸めて痛そう、いつもと尿の見た目が違うといった変調があれば、早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

監修獣医師

中道瑞葉

中道瑞葉

2013年、酪農学園大学獣医学科卒。動物介在教育・療法学会、日本獣医動物行動研究会所属。卒後は都内動物病院で犬、猫のほか、ハムスターやチンチラなどのエキゾチックアニマルも診療。現在は、アニコム損保のどうぶつホットライン等で健康相談業務を行っている。一緒に暮らしていたうさぎを斜頸・過長歯にさせてしまった幼い時の苦い経験から、病気の予防を目標に活動中。モットーは「家庭内でいますぐできる、ささやかでも具体的なケア」。愛亀は暴れん坊のカブトニオイガメ。