ぐったりを横になる猫

私たち人間にとっても、つら~い口内炎。ポツンと1つできただけで、食事がしみて痛いですよね。それは猫にとっても同じこと。いえ、人間以上に辛いかもしれません。猫の場合、口内炎がたくさんできたり、大きく腫れ上がったりすることがあるからです。

猫の口内炎の主な原因

猫の口内炎の多くに、ウイルスが関連していると言われています。また、ウイルスが感染しやすいような免疫状態の低下に陥っていても発症する場合があります。

感染症による 口内炎

上部気道ウイルス(猫カリシウイルスや猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)の感染症によるものが多いといわれています。

免疫低下による口内炎

FeLV、FIV感染、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、腎不全などによって、体を守るための「免疫」が抑えられた状態となり、二次的に口内炎を発症することもあります。

歯周病による口内炎

歯周病は、歯の周囲にたまった歯垢や歯石の中の細菌によって、歯茎などの歯のまわりが炎症を起こす病気です。重度の歯周病、歯肉炎になることで、口内炎をも引き起こしてしまう可能性があるのです 。

猫の口内炎の4つの症状

口内炎を発症すると、主に次の4つの症状が見られます。
猫の様子をよく観察して、口内炎が疑われる症状が見られたら、早めに動物病院へ連れて行きましょう。

向かって左奥の歯肉部分の炎症
▲向かって左奥の歯肉部分の炎症

よだれが増える

痛みそのものや、その痛みによってよだれを飲み込みづらくなることから、口から垂れるよだれの量が増える場合があります。その痛みを気にして、しきりに患部(口のあたり)を手でこすることから、手の部分がよだれでベトベトになることもあります。

食欲が減る

口の中に食べ物を入れると、しみたり、痛みを感じたりするので、食事を嫌がり、「空腹なのに食べられない」「食べたくない」といった状態になります。食事量が少なくなるだけでなく、食事を中断するようになる、食事中に奇声を上げるなどの行動がみられることもあります。

口臭がきつくなる

歯周病等が併発している場合は特に、口臭がきつくなることが多くあります。
猫があくびをしたときや猫に舐められたあとなど、普段と違う口臭はしないか、臭いがきつくなってきていないかなど、チェックをしましょう。

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毛づくろいをしなくなる

猫は、舌を器用に使って毛づくろいをします。しかし、舌までおよぶ口内炎を発症していると、舌を動かすたびに患部が痛むので、毛づくろいを嫌がるようになります。そのため、毛並が悪くなってきてしまうことも。

猫の口内炎の治療方法

猫の口内炎の治療方法のイメージ画像

痛くて、食べるのも嫌になってしまう口内炎。早く治してあげたいですよね。主な治療方法をご紹介します。

投薬治療

口内炎の原因や症状によって異なりますが、感染に対する抗生剤やインターフェロン、炎症や痛みを抑えるためのステロイド剤、消炎鎮痛剤、免疫抑制剤などを投与することが多いです。

歯石を取る

口内炎の原因が「歯周病」ということがわかっていれば、歯石を除去して口内をきれいにし、原因を除去します。歯石除去の多くは全身麻酔下で行うことが多いため、猫の身体にかかる 負担を把握するためにも、獣医師とよく相談して行いましょう。

抜歯する

上記のように歯石をとるだけで口の中をきれいにできればよいのですが、中には歯周病が進行しすぎて歯がグラグラの状態になっていることもあります。こういう場合には抜歯を行い、問題となる歯ごと原因を取り除くこともあります。

上記のような直接的な治療だけではなく、元になっている病気を同時に治すことが重要です。

食事や水分の補給

これは、根本的な治療ではなく、あくまで栄養補給のための対症療法です。強い痛みから食事や水分摂取量が減り、体重が落ち、さらに状態が悪化していきます。このためには、なるべく嗜好性が高く(おいしい)、食べやすいフードを選び、自ら食べてもらえる工夫をする必要があります。また、水分の摂取も重要で、脱水を起こしている場合には点滴が必要となることもあります。

「再生医療」という選択肢

「慢性口内炎」の治療法のひとつとして、「再生医療」という選択肢もあります。「再生医療」とは「細胞」を用いて行う治療法です。方法は以下のとおり、とてもシンプルです。

再生医療の治療法の説明

この治療法は、本来、身体が持っている「修復機能」や「自己治癒力」を利用して、病気を治していくものです。手術などに比べると身体への負担が少ないことも大きな特徴です。

慢性口内炎に対する再生医療は現在まだ臨床研究段階ですが、あきらめないで済む日がくるかもしれません。ご興味のある方は、かかりつけの動物病院の先生に相談してみてください。

猫の口内炎の予防

猫の口内炎の予防方法のイメージ画像

かわいいわが子には、つらい口内炎にはなってほしくないもの。
ワクチン接種や日頃のケアが予防につながることもあるので、日常的に意識してお手入れをしてあげましょう。

ワクチン接種

予防のひとつとして、口内炎の原因となるウイルスのワクチン接種を受けましょう。猫カリシウイルスや猫白血病ウイルスなどの感染症には、ワクチンがあります。ただ、ワクチンにも種類があり、どのワクチンが一番適しているかは生活環境によっても変わります。かかりつけの獣医師と相談してみてください。

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フードの工夫

歯垢や歯石が口内炎の原因となるケースは多くあります。なるべく歯垢や歯石がたまりにくいフードを選択することがポイントです。一般的には、ドライフードの方が歯石がつきにくいと言われています。

マウスケア用品を使う

口内環境をきれいに保つことが、口内炎の予防に役立ちます。小さい頃から少しずつ口の中を触るようにして、触られることに慣れてもらい、抵抗なく歯磨きができるようになるのが望ましいですね。

シート状の歯磨き用品や指サック式の歯ブラシなど、さまざまな歯磨きグッズがあるので、歯磨きが苦手な子にはいろんなタイプのものを試してみて、お互いやりやすいものを見つけてあげるとよいでしょう。

どうしても口の中を触られるのを嫌がる子には、最初は飲み水に混ぜて飲ませるタイプ や口の中に数滴垂らす程度のものなどもあるので、トライしてみるのもいいかもしれません。

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サプリを使う

免疫力が落ちると口内炎ができやすくなるため、免疫力を上げるために、栄養補助になるサプリメントを使うという方法もあります。かかりつけの先生と相談しつつ、補助的に試してみるのも良いかもしれません。飲み込むタイプの他にも、歯や歯ぐきに塗るタイプのものもあります。

まとめ

猫の口内炎は、人間の口内炎と比べ、患部が限定的ではなく、口の中や奥に広がっていることもあり、想像以上に辛いものです。
早期に発見して、早期に治療をしてあげてください。定期的に健康診断をして、口腔内の健康状態もあわせて確認するようにしましょう。

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監修獣医師

浅野七草

浅野七草

山口大学獣医学部卒業後、エキゾチックアニマルの診療も行う動物病院に勤務し、 野生鳥獣の保護にも携わった。 その後、専門学校にて解剖学や感染症等の講師として勤務し、 2023年アニコム損害保険株式会社に入社。