歯ブラシを猫の口に当てる画像

猫もヒトと同様、歯のケアを怠ると、歯周病になってしまうことがあります。歯周病は猫の食生活に支障をきたし、健康にも害をおよぼすので、正しいケアの仕方を知っておきましょう。歯石がついてしまった場合の処置方法についてもご紹介します。

そもそも猫に歯磨きは必要? 歯周病は防げる?

結論から言うと、猫も歯磨きをしたほうがよいです。

野生のネコ科動物は肉食のため、肉を引きちぎることで歯の表面の汚れが取れることに加え、あまり噛まずに飲み込むような食事スタイルのため、肉片が口の中に残りにくく、歯のトラブルが少ないと言われています。

一方、ペットの猫の場合は、主食がキャットフードという場合が多いはず。細かく、柔らかくなりやすいペットフードは、肉に比べて食べカスが残りやすく、放置すると歯垢や歯石となって、歯肉炎や歯周炎などのいわゆる「歯周病」の原因になります。

定期的に歯磨きをして歯垢を取り除くことが、歯周病予防には一番です。

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まずは猫の歯の構造を理解しよう

猫の歯磨きをイメージさせる画像

猫の歯の数は乳歯のときは26本、永久歯は30本です。

歯は大きく分けると、表面の「エナメル質」、その下の「象牙質」、神経や血管などが集中する「歯髄」の3層から成り立っています。

また、よく目にする「歯周」とは、いわゆる歯を取り巻く組織のことで、「歯肉」「歯槽骨(しそうこつ)」「歯根膜(しこんまく)」「セメント質」から構成されています。

歯と歯肉の境目には、数ミリの溝(歯周ポケット)があります。ここに歯垢(プラーク)がたまると歯肉など歯周組織の炎症を引き起こします。これが歯周病です。また、歯垢は放っておくとどんどん硬くなってしまいます。これが歯石です。

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子猫の歯磨きはいつから?

大人になってから歯磨きを始めるのは大変、というケースが多いので、子猫のうちに慣らしておくとベター。永久歯が生えそろう生後4~6ヶ月ごろまでには慣らしておきたいところです。

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歯磨きのやり方とコツ

いきなり歯ブラシで磨くのは難しいので、少しずつ時間をかけて慣らしましょう。コツは無理せず、猫が嫌がらないように気をつけてあげることです。

歯ブラシの使い方

歯ブラシは歯の根元部分に対しておよそ45度の角度で当て、小刻みに揺らすようにして磨きましょう。歯ブラシが歯肉に当たって傷つけてしまうこともあるので、力を入れすぎないように十分注意してください。

奥歯(臼歯)の磨き方

猫の頭を上から手で軽く掴み、上唇を親指で持ち上げ、歯を露出させてあげると磨きやすいです。しかし、やや強引に見えるため嫌がる場合も多いので、それが難しいようなら、口の端から歯ブラシを入れ、閉じたままの状態で構わないので磨いてみてください。奥歯は形が複雑で、特に歯石が付きやすい場所なので、重点的に磨いておきたいところです。

頻度はどのぐらい?

食べ物のかすが歯に残り(食物残渣:しょくもつざんさ)、それが歯垢となり、1週間以内に歯石になると言われています。一度歯石になってしまうと、歯磨きでは取り除くことができなくなってしまうため、食物残渣や歯垢でいる間に除去することが重要です。そのため、できれば毎日歯磨きができるとベスト。それが無理でも、2~3日に1回はケアすることをおすすめします。

歯磨きを嫌がる時の対処法

猫ちゃんが歯磨きを嫌がっているのに無理やり行うのは、かえって歯磨き嫌いを助長してしまいます。まずは口の周りを触られることに慣らすことからはじめ、慣れてきたら歯に触る、歯を触らせてくれるようになったら歯ブラシを使う…など、焦らず段階を追って進めましょう。

歯ブラシに猫が好きなおやつをつけてなめさせる、歯ブラシを持つ手におやつを隠しておくなど、まずは「歯ブラシ=いいこと」と教えて、なるべくストレスが少ない方法で時間をかけて歯磨きを習慣化してあげてください。

後述しますが、それでも歯ブラシが苦手であれば、ガーゼや市販の歯磨きシートで歯を磨いたり、飲み水に混ぜて使う液体歯磨きなども販売されています。そのようなデンタルケア商品から始めてみるのも手です。

おすすめの歯磨きアイテム

きちんと猫の歯磨きをするために、正しい歯磨き用品を使用しましょう。各アイテムの選び方のポイントをご紹介します。

おすすめの猫用歯磨き粉

猫の口腔環境に合った歯磨き粉や歯磨き剤が市販されていますので、猫専用の商品を選んで使用しましょう。歯磨きが好きになってくれるよう、猫が好むフレーバーが配合されているものもありますよ。

また、歯磨きが苦手な子のために、口の中に散布するスプレータイプや飲み水に混ぜて使う液状歯磨き剤などもあります。歯磨きのあとすすぐ必要のないものが主流です。

おすすめの猫用歯ブラシ

ヘッドの小さい猫専用歯ブラシがおすすめです。通常のブラシタイプや、歯の上を転がして使用するローラータイプ、柔らかいスポンジタイプなど、さまざまな形状のものがありますから、愛猫に合った商品を選んであげてください。また、小児用歯ブラシで代用することもできます。

人用の歯磨き粉は使っていい?

人用の歯磨き粉を猫に使うのは控えましょう。人用の歯磨き粉の中には、「キシリトール」が配合されているものがあります。キシリトールは人の歯のケアによいと言われていますが、たとえば犬が大量摂取した場合はインスリンが大量に分泌されることで低血糖症になり、最悪命に関わることがあるとされています。

猫に犬と同様の症状が現れるのかはっきりとしたことは言えませんが、与えないに越したことはないでしょう。

万が一人用の歯磨き粉を舐めてしまった場合、体調に変化はないか観察し、気になることがあれば、すぐに獣医師に診てもらってください。

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猫の歯磨き代用品

いきなり歯ブラシと歯磨き粉を使って磨くのはやっぱりハードルが高い、と感じている方も多いはず。そんなときは、もう少し簡単に使用できそうな代用品から始めてみるのも手です。

綿棒を使う

柔らかい綿棒は歯肉への刺激も少なく、歯垢を取ることもできる優れもの。奥歯にも届きやすい形状なので、歯磨き初心者さんにはぴったりです。綿棒の先に歯磨き粉や歯磨き剤をつけて、歯の根元の歯垢がたまりやすいところを磨いてあげてください。しかし、綿棒は飲み込むことができるサイズです。歯磨きの際は、猫が綿棒の先にかじりついて綿を誤飲しないよう、気をつけてください。

猫用歯磨きシート

指に巻いて使うシートタイプの歯磨きアイテムです。歯磨き剤がすでに染み込ませてあるものが主流なので、これひとつでOKというお手軽さがよいですね。

歯ブラシと違い、指先で直接歯や歯肉に触れることができるので、力加減のコントロールがしやすいかもしれません。ただ、指を噛まれないように気をつけてくださいね。

猫用の歯磨きガム

おそらくもっとも簡単、かつ猫も喜ぶであろうデンタルケア法がこれ。しっかり噛むことで歯垢を除去するよう素材や形状に工夫がこらされた、さまざまなデンタルケアトリーツが市販されています。毎日のおやつに取り入れてみるとよいでしょう。

一方で、歯に良いからといって与えすぎると今度は体重オーバーの心配が出てきますので、適正な量を守ってあげてくださいね。

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歯磨きおもちゃ(歯磨きトイ)

楽しく遊ばせながらついでに歯のケアもできてしまう、一石二鳥の機能性おもちゃも多数販売されています。

ヘチマやまゆ玉、マイクロファイバーなど、猫が噛みついたときに歯の表面の汚れを拭き取ってくれる素材が使用されています。ちぎれた欠片を誤飲しないよう、強度の高いものを選んであげてください。

歯石がついてしまったら?

猫の歯磨きをイメージさせる画像

歯石を取りのぞくには、歯科医が使用する「スケーラー」という先の尖った器具で削り落とす方法が一般的です。しかし、専門的な器具である上、とがった先端で口腔内を傷つけてしまったり、歯の表面を削ることでかえって歯石が付きやすい状態になってしまうこともあります。飼い主さんが行うのは難しいでしょう。動物病院で歯石除去する場合は、全身麻酔をした上で、スケーリングなどの処置を行います。

プロに任せる場合

歯の汚れ具合にもよりますが、歯のケアは動物病院でもしてもらえる場合があります。とくに口臭がきつい場合、すでに何かしらの口腔トラブルを抱えているかもしれません。獣医師にきちんと診断してもらい、必要な処置を行ってもらうほうが安心です。

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監修獣医師

麻生拓也

麻生拓也

2012年、日本大学獣医学科卒業。卒業後は都内の24時間動物病院で勤務し、予防業務から緊急疾患まで幅広く従事。2015年よりアニコムグループに入社し、予防、食事を中心にペットサービス事業の企画、運用や電話での健康相談を経験。現在は大学時代の専門の繁殖学を生かし、ペット業界の川上にかかわっている。最近、猫を迎えてから、すっかり猫派になった。