映画やドラマなどで一度は見たことがあるジャーマン・シェパード・ドッグ。大きくしっかりした骨格と筋肉質で力強い姿に「かっこいい」と思った人も多いでしょう。警察犬などで活躍する姿が知られるジャーマン・シェパードですが、なぜ警察犬などに多いのでしょうか?ジャーマン・シェパードの特徴や性格、飼うときのポイントについて紹介します。

ジャーマン・シェパード・ドッグってどんな犬種?

ジャーマン・シェパードといえば、警察犬のイメージが強いですが、本来は牧羊犬で、名前にもなっている「シェパード」には「羊飼い」という意味があります。その能力の高さから、警察犬、牧羊犬以外にも、災害救助犬などの使役犬として多才な活躍を見せる犬種でもあります。

他にどんな種類のシェパードがいる?

ジャーマン・シェパード・ドッグのことを略して「シェパード」と呼ぶことが一般的ですが、実はシェパードの名を持つ犬は他にもいます。
ジャパンケネルクラブ(JKC)に登録されている犬種の中で、シェパードの名を持つ犬種は8種で、10あるグループのうち【牧羊犬・牧畜犬】と【使役犬】にそれぞれ分類されています。

【牧羊犬・牧畜犬】
・オーストラリアン・シェパード
 アメリカ原産の牧羊犬。
・ダッチ・シェパード・ドッグ
 オランダ原産のコンパニオンドッグ、牧羊犬。
・ベルジアン・シェパード・ドッグ
 ベルギー原産。牧羊犬、護衛・防衛犬、サービスドッグなど。
・ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ
 スイス原産。家庭犬、牧羊犬、作業犬など。
・ミニチュア・アメリカン・シェパード
 アメリカ原産の牧羊犬。

【使役犬】
・コーカシアン・シェパード・ドッグ
 ロシア原産。牧羊犬、護衛犬。
・セントラル・アジア・シェパード・ドッグ
 ロシア原産の使役犬。

同じ「シェパード」ですが、ルーツはそれぞれ異なるため、8種全ての見た目が似ているわけではありません。

歴史

ジャーマン・シェパードは19世紀の終わりに、ドイツで誕生した犬種です。
もともとドイツには牧羊犬がいましたが、犬種として明確な形はなく、各地で交配が行われていたため、様々な見た目や特徴を持っていました。
そこで、能力の優れた犬種を確立すべく、ブリーディングをはじめたのがマックス・フォン・シュテファニッツという人物です。

1899年、シュテファニッツは、ドイツ西部で行われたドッグショーに出場していた牧羊犬を連れて帰り「ホランド」と名付けてブリーディングの基としました。
ホランドは、同年に設立されたドイツ・ジャーマン・シェパード・ドッグ協会に第1号のジャーマン・シェパードとして登録されました。

その後、1907年にアメリカで初めてドッグショーに登場し、翌年1908年にアメリカンケネルクラブ(AKC)に登録されました。

第一次世界大戦がはじまると、軍用犬として使われるなど、時代に合わせて人々が求める役割をこなしてきました。現在では家庭犬としても、世界中で飼われています。

性格は?

ジャーマン・シェパードは飼い主に忠実で、言うことをよく聞くとても賢い犬種です。落ち着きと攻撃性を両方持ちますが、訓練次第でコントロールできる、賢さを持ちます。

しつけのポイント

ジャーマン・シェパードは、賢いからしつけをしなくてもいいわけではありません。遊びやいたずらも好きなので、そうした欲求を訓練で満たしてあげることが飼う時のポイントです。賢い犬種ですが、それはしつけができているからこその特徴です。
また、運動能力も高いので、散歩やドッグランなどで自由に走らせる運動と、頭を使ったトレーニングを組み合わせてあげる必要があります。

成長し身体が大きくなると大人の男性であっても、力で制御することができなくなります。子犬の頃から社会化とお座り、伏せ、待て、おいでなど人の指示に従うオビディエンス・トレーニングをしっかり行いましょう。散歩時などに、指示に従って歩く練習も子犬のうちから行いましょう。

なぜ警察犬に多い?

ジャーマン・シェパードの勇敢さや体力、精神力、飼い主への指示に忠実であるといった特徴が、警察犬として選ばれる理由ではないでしょうか。

指示一つで、犯人に咬みついて離さないでいたり、また離すことも指示一つで行うのは、簡単なことではありません。
ジャーマン・シェパード以外にも警察犬はいますが、オールマイティーな仕事ができるのはやはりジャーマン・シェパードだからこそでしょう。

サイズ

ジャーマン・シェパードは、大型犬に分類されます。体高は男の子が60~65cm、女の子が55〜60cm、体重は男の子が30~40kg、女の子が23~32kg程度です。

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被毛について

被毛は寒さに強いダブルコートで、オーバーコートは硬い直毛です。
毛色はブラックやグレーの単色、赤系のブラウン、イエロー、明るいグレーのマーキングが入っているものが認められています。
ダブルコートで抜毛が多いので、ブラッシングは週に3回程度行いましょう。特に、換毛期は皮膚疾患予防のためにも、丁寧なブラッシングで死毛を取り除いてあげましょう。

寿命

アニコム「家庭どうぶつ白書 2021」によると、ジャーマン・シェパードのような大型犬の平均寿命は11.5歳です。犬全体の平均は14.1歳なので、やや短いことがわかります。

しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。

気を付けたい病気

ジャーマン・シェパードの気を付けたい病気は、股関節形成不全や腎嚢胞腺癌、血管肉腫、胃拡張胃捻転などのほか、イベルメクチン中毒に注意したい犬種とされています。フィラリア予防薬のイベルメクチンの量は、比較的少量とされていますが、不安な場合は獣医師に相談するとよいでしょう。疥癬(かいせん)や毛包虫症(=アカラス)の治療のために使用する場合には高用量になるため、注意が必要です。
また、遺伝病である変性性脊髄症(DM)が多い犬種でもあります。両親犬の遺伝子を調べて、変性性脊髄症にかかる可能性のあるジャーマン・シェパードを増やさないよう取組みが進められています。

ジャーマン・シェパードを家族の一員として迎える方法

ジャーマン・シェパードをぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。とはいえ、ジャーマン・シェパードをペットショップで見かけることは多くないので、事前に取り扱いがあるか確認してから行くとよいでしょう。

また、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親猫や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集でジャーマン・シェパードと出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

かっこよく、有能なジャーマン・シェパードですが、初心者が飼うには難しい犬種です。 ジャーマン・シェパードがストレスを感じないように、しっかりと能力を発揮させる場も設けてあげましょう。オビディエンス競技や、アジリティなどのドッグスポーツなどもおすすめです。

監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。 現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。