可愛らしい柴犬

ウィペットはスリムでありながら、しっかりと筋肉がついていて走ることに特化したバランスの取れた体つきをしています。また、ローズイヤーと呼ばれる半立ちの小さな耳もウィペットの魅力の一つといえるでしょう。そんなウィペットの性格やかかりやすい病気について解説します。

ウィペットってどんな犬種?

ウィペットは中型犬で、国際畜犬連盟(FCI)が、使役、系統によって分類した10のグループのうち「10G:視覚ハウンド」に属しています。

猟犬である「ハウンド」は、視覚ハウンド(サイトハウンド)と嗅覚ハウンド(セントハウンド)に分けられます。視覚ハウンドは目で獲物を捉えて追跡することに特化していて、走るスピードもピカイチです。

ウィペットは最高時速およそ56kmで、トップスピードが出るまでの時間も早く、同じサイズの犬種の中では1番の俊足といわれるほどです。

歴史

ウィペットはイギリス原産の犬種で、19世紀後半に小型のグレーハウンドにマンチェスター・テリアやベドリントン・テリア、ホワイト・テリアなどをかけあわせたことによって誕生しました。

ウィペットは初め、鉱山や工場で働く人や炭鉱夫の間で人気となりました。

当時イングランド北部では、グレーハウンドなど大型の視覚ハウンドによるドッグレースやうさぎ狩りが流行していました。しかし、大型のハウンドは飼育が大変だったことから、グレーハウンドよりも小型のハウンドが好まれ、ウィペットに人気が集中したのです。

ウィペットは「スナップ・ドッグ(咬みつき犬)」と呼ばれたり、「ラグ・ドッグ(ライトニング・ラグ・ドッグ)」などと呼ばれていたこともあります。

スナップ・ドッグの「スナップ(Snap)」は英語で「さっと動く」「パクリと咬みつく」という意味があり、小動物に食らいつかせる遊びが行われていました。これがラビット・コーシングに発展したといわれています。

一方「ラグ・ドッグ」はドッグレースが盛んな頃、直線距離を走らせるためにボロ布を持って呼び寄せたり、追いかけさせたりしたことに由来しています。稲妻のごとくボロ布を追いかける姿から「ライトニング・ラグ・ドッグ」と呼ばれることもありました。

イングランド原産のウィペットは、マサチューセッツ州へ移住したイギリス人によって米国に持ち込まれ、1888年にアメリカンケネルクラブ(AKC)に初めて独立した犬種として登録されました。
イギリスのケネルクラブ(KC)でウィペットが認定されたのは1891年のことでした。

名前の由来

ウィペットの名前の由来は諸説あり、一つはほっそりとした流線型の体躯で駆ける姿が、鞭を打たれて走る馬のように見えることから、鞭を意味する「whip」に由来しているというもの。
もう一つは、古語で「小さく鳴く犬」を意味する「whappet」から付けられたともいわれています。

サイズ

ウィペットは中型犬に分類されます。体重は男の子が約14kg、女の子が約13kg、体高は男の子が47~51cm、女の子が44~47cmです。

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性格

ウィペットはとても温厚で、物静かで優しい性格をしています。無駄吠えなどもほとんどないので室内飼育に適しています。
飼い主に従順でトレーニングに向いている犬種ですが、動くものに素早く反応する視覚を持っています。何かを見つけて走り出すと飼い主の声も耳に入らなくなってしまうことがあるといわれています。
また、内向的な一面があり、初対面の人を警戒することもあります。

しつけのポイント

ウィペットはトレーニングのしやすい犬種です。走ったり、体を動かしたりすることが大好きなので、毎日の散歩のほかに、ドッグランなどで走らせてあげるようにしましょう。

ウィペットが本気で走ると追いつけなくなるので、「待て」や「おいで」のトレーニングが欠かせません。また、頭が小さいので首輪が抜けてしまう事故が起こりやすいです。リードを引っ張ったりすることなく、飼い主の指示に従えるよう散歩の練習が必須です。

被毛・毛色について

ウィペットの被毛と毛色について紹介します。

被毛のこと

被毛は、短く細かい毛をしていて、ツルンと滑らかな手触りをしています。
毛玉の心配はありませんが、時々、濡れたタオルなどで体を拭いたり、マッサージしてあげるとよいでしょう。

毛色のこと

毛色の指定はなく、どんな色でも認められています。
よく見られる毛色としては、グレー、ブリンドル、フォーン、レッド、ホワイトなどです。

寿命はどれくらい?

アニコム「家庭どうぶつ白書 2021」によると、ウィペットのような中型犬の平均寿命は13. 4歳となっています。

しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。

ウィペットの気を付けたい病気

ウィペットは、「白内障」や「進行性網膜萎縮症」といった病気に気をつける他、寒さに弱いので冬は寒さ対策をしてあげましょう。

また、遺伝病である「ホスホフルクトキナーゼ欠損症」にかかりやすいことが知られています。
ホスホフルクトキナーゼ欠損症とは、赤血球内に含まれる酵素の欠損により赤血球の寿命が通常よりも短く、血管、脾臓などで赤血球が破壊され溶血性貧血が起こる疾患です。血管内溶血が起こると、尿中に血色素が排出される血色素尿や黄疸も見られます。

気になる症状が見られたらすぐにかかりつけの病院へ行きましょう。

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ウィペットを家族の一員として迎える方法

ウィペットをぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。ただ、ウィペットのいるペットショップは少ないので、事前に確認することをおすすめします。

ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいですが、性格や気質については親犬の情報を知ることが大切です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親犬や兄弟・姉妹たちの姿を見られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。
繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。子犬とは限りませんが、こうした譲渡会や里親募集でウィペットと出会える機会もあるかもしれません。

イタグレ(イタリアン・グレーハウンド)との違いは?

ウィペットに似た犬種に、イタリアン・グレーハウンドがいます。
どちらも同じ視覚ハウンドですが、イタリアン・グレーハウンドのほうが歴史は古く、またイタリアン・グレーハウンドのサイズは体重が3〜5kg、体高も33〜38cmで、小型犬に分類されます。

まとめ

ウィペットは、特徴的な容姿が美しく、性格も穏やかな比較的飼いやすい犬種です。 子犬の頃からのしつけと、能力を生かした遊び、歩く・走る・止まるなどメリハリのある散歩を意識してあげましょう。能力を生かした遊びには、フライング・ディスクやルアーコーシングなどのドッグスポーツを取り入れてあげるのもおすすめです。

可愛らしい柴犬

監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。 現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。