ボルゾイはモデルのようなスラリとした足に、小さな顔、豊かな飾り毛が美しい犬種です。
品のある優雅な印象を受けますが、足が速くオオカミ狩りをしていた歴史があります。
そんなボルゾイの性格や気を付けるべきことについて解説します。
ボルゾイってどんな犬種?
ボルゾイは大型犬で、国際畜犬連盟(FCI)が使役、系統によって分類した10のグループのうち「10G:視覚ハウンド」に属しています。
猟犬である「ハウンド」は、視覚ハウンド(サイトハウンド)と嗅覚ハウンド(セントハウンド)に分けられます。視覚ハウンドは目で獲物を捉えて追跡することに特化していて、走るスピードもピカイチです。
ボルゾイは時速およそ56km〜64kmで走ることができることから、ロシア語で「俊敏」を意味する名前が付けられました。
歴史
ボルゾイはロシア原産の犬種で、その祖先はもともと中東、中央アジアにいたサイトハウンドにあります。
17世紀にサイトハウンドと、ロシアに古くからいたベア・ハウンドやロシアン・シープドッグといった作業犬と交配させ、大型化していったとされています。
現在の優美な姿からは想像できませんが、オオカミ狩りの猟犬として古くからロシアの王侯貴族と深い関わりを持っていました。
しかし1861年、農奴制の廃止をきっかけに猟犬の繁殖が減少。猟犬を保護するため1873年に帝国猟犬普及協会が設立されます。翌年1874年にはドッグショーが初めて開催され、これをきっかけに現在のボルゾイの形・血統が定められました。
ボルゾイ(ロシアン・ウルフハウンド)が最初にアメリカに持ち込まれたのは1889年のこと。そしてアメリカンケネルクラブ(AKC)で正式に犬種として認められたのは1891年でした。
1800年代後半にボルゾイの人気が高まりましたが、1917年のロシア革命で数多くが犠牲となり、一時は絶滅の危機に陥りました。
しかし、ロシア国外の愛好家たちにより状況は回復。それまで「ロシアン・ウルフハウンド」の名前で知られていましたが、1936年に現在の「ボルゾイ」に改名されました。
現在は、家庭犬としてはもちろん、ショードッグやルアーコーシング、ドッグレースで活躍しています。
サイズ
ボルゾイは大型犬に分類され、体重は男の子が38~48kg、女の子が35~45kgほどです。体高は男の子が75~85cm、女の子が68~78cmで、後足で立ち上がると大人の男性の肩に前足がかかるほどの大きさです。
性格
ボルゾイは温和で家族に対して愛情深い性格です。家の中では、静かにリラックスして過ごすことも多いです。しかし、鋭く優れた視覚を持つため、スイッチが入ってしまうと興奮して対象物を追いかけてしまうこともあります。
しつけのポイントは?
社会化が不足すると、猫や犬などに対して興奮したり、不安を感じたりしてしまうので、子犬期から様々な動物や環境に触れさせてあげましょう。また、「待て」を教えて、どんな場面でも落ち着けるよう練習することが必要です。
体が大きいので、散歩中に興奮して急に走り出してしまうとリードを持つ人が転んだり、引きずられたりして、ケガに繋がる可能性があります。散歩中も飼い主の指示に従えるよう子犬の頃から練習しておきましょう。
ボルゾイは怖い?
ボルゾイは体が大きく、足も速いため、もしも勢いよく向かってこられたら怖いと感じる人も少なくないでしょう。ボルゾイによる咬傷事故もニュースなどで取り上げられたことがあります。
ただし、逃走や咬傷事故といったことはボルゾイに限らず起こり得ます。
犬種を問わず、しっかりとしつけ・トレーニングをすること、リードを持ってコントロールすることが求められます。
被毛・毛色について
ボルゾイの被毛と毛色について紹介します。
被毛のこと
ボルゾイはダブルコートの犬種です。ダブルコートとはオーバーコートとアンダーコートの二重構造のことで、抜け毛も多いです。
ボルゾイの被毛はとても柔らかな長毛で、ストレートからウェーブのかかった毛がみられます。特に、胸や四肢、尻尾には「フェザリング」と呼ばれる羽毛のような飾り毛がありますが、毛玉になりやすいため日々のブラッシングがかかせません。
毛色のこと
毛色は種類が豊富で、白、ブラック、レッド、グレー、ブリンドル、フォーン系(レッド・フォーン、シルバー・フォーン、グレーフォーンなど)が認められています。
単色はもちろんのこと、タン(黄褐色)やパイド(白地に一色または二色の斑が体にあるもの)も認められていますが、鼻の色はブラック以外の淡い色は認められていません。
寿命はどれくらい?
アニコム「家庭どうぶつ白書 2021」によると、ボルゾイのような大型犬の平均寿命は11.5歳となっています。
しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。
ボルゾイの気を付けたい病気
ボルゾイは大型犬によく見られる、「胃拡張(胃拡張胃捻転)」や「股関節形成不全」「骨肉腫」の他、「外耳炎」や「甲状腺機能低下症」に注意しましょう。
胃拡張は、食事中や食事の後に起こることが多いため、食べやすい高さにフードボールを置いてあげたり、一度に食べさせずに複数回に分けて与えたり、食後すぐの運動は控えるなどをして予防しましょう。
ボルゾイの子犬をお迎えするには?
ボルゾイをぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。
ペットショップで探す
ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。ただ、ボルゾイのいるペットショップは少ないので、事前に確認することをおすすめします。
ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいですが、性格や気質については親犬の情報を知ることが大切です。
ブリーダーさんから紹介してもらう
ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親犬や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。
繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。
※アニコムグループの(株)シムネットが運営する『みんなのブリーダー』へ移動します。
里親になる
最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。子犬とは限りませんが、こうした譲渡会や里親募集でボルゾイと出会える機会もあるかもしれません。
ボルゾイに「お金持ち」のイメージがあるのはどうして?
ボルゾイの歴史を知っている人であれば、元々貴族が飼っていた犬種のイメージがあるでしょう。
歴史を知らない人でも、ボルゾイの優雅でおしゃれな容姿に、かっこいいイメージがあったり、「犬と飼い主が似る」とも言われることから、飼い主さんもきっと優雅でおしゃれな人なのかなと連想してしまうのも一つでしょう。
また、それなりの家の広さが必要だったり、車がないと移動が難しいなど、大型犬は裕福な人が飼うイメージがあることも理由の一つかもしれません。
まとめ
ボルゾイは落ち着いた優雅な一面と、鋭い視覚、俊足を持ちオオカミをも追っていた勇敢な一面を持ち合わせた犬種です。
現在は家庭犬として飼われていますが、体が大きいので悪気がなくても相手をケガさせてしまうことがあるかもしれません。子犬の頃からしつけをし、その能力を活かしてルアーコーシングなどのドッグスポーツに挑戦するのもおすすめです。