狆(ちん)は、白を基調としたツートンカラーで柔らかく長い被毛に、短い鼻とクリクリした目が愛らしい犬種です。和犬の印象とはだいぶ違いますが、実は日本原産。今回はそんな狆の歴史や性格をご紹介します。

(ちん)ってどんな犬種?

狆は日本で初めて改良された愛玩犬で、江戸時代のころは「犬と猫の中間の動物」「猫のような犬」などとされていた、少し珍しい歴史を持つ犬種です。

名前は「ちいさいいぬ」という意味から来ていて、だんだんと縮まり「ちぬ」「ちん」となっていったといわれています。

歴史

狆の歴史

原産国が日本である狆は、はじめ海外ではジャパニーズ・スパニエルという名前で紹介されました。しかし、スパニエル(猟犬)とは関係がないことから現在では、ジャパニーズ・チンと呼ばれています。

狆のルーツは諸説ありますが、奈良時代の732年に韓国から日本の宮廷に贈られた犬が、現在の狆の祖先にあたるといわれています。

1680年〜1709年の徳川綱吉の時代、狆はお座敷犬(室内犬)として江戸城で飼われていました。

それまでペットといえば、ネズミを獲ってくれる猫のほうが人気がありました。猫は首輪に鈴、ヒモでつないだりと多くの人々に大切に飼われ、犬といえば野良で町中をうろつき、時には吠えたり人を咬んだりなど、あまり好まれてはいませんでした。

そんな中、狆は犬でありながらも猫のように大切にされ、将軍家や上流貴族の中で大変人気のあるペットだったのです。

狆の人気は日本だけでなく、次第に海外へも広まっていきました。

1853年にはペリー提督が狆をアメリカに持ち帰り、ビクトリア英国女王に献上されるなど、海外でも上流貴族の中で人気を集めるようになりました。

サイズ

狆のサイズ

狆は体高23〜25cm、体重2〜54gと、名前の由来通り小型犬に分類される犬種です。

性格は?

狆は飼い主に対する強い愛情を持ち、穏やかな性格をしています。

猫や鳥を見ても追いかけたり、吠えたりするようなことはほぼなく、飼いやすい犬種です。ただし、見慣れないものなどに対して、恐怖や不安を抱きやすい傾向にあるので、子犬のころから社会化をしっかりしましょう。

被毛・毛色について

狆の被毛と毛色

狆の被毛は長く真っ直ぐで、シルクのように柔らかい毛質をしています。

長い被毛は毛玉になりやすいので、日々のブラッシングはかかせません。

毛色は白地で、目の周りから耳にかけてと、体やしっぽに黒かレッド(赤)の斑があります。

寿命はどれくらい?

アニコムの「家庭どうぶつ白書2021」によると、小型犬の平均寿命は14.4歳です。

しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。

気を付けたい病気

狆の気を付けたい病気は、小型犬に多く見られる「膝蓋骨脱臼」「気管虚脱」のほか、「環軸亜脱臼」「てんかん」といった病気にも注意が必要です。

また、狆は鼻先が短い短頭種に分類される犬種でもあるため、暑さに弱い傾向があります。長時間の激しい運動や熱中症にも気を付けましょう。

参考:みんなのどうぶつ病気大百科:狆

を家族の一員として迎える方法

狆をぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。とはいえ、狆をペットショップで見かけることは多くないので、事前に取り扱いがあるか確認してから行くとよいでしょう。

また、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親猫や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集で狆と出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

かわいらしい狆

狆は長く愛玩犬として飼われていただけあり、現代社会においても問題行動が少なく飼いやすい犬種です。室内で十分に動けるスペースがあれば、屋外での運動はそれほど必要ありません。とはいえ、しつけや健康のためにも散歩は必要です。公園に遊びにいったり、時にはドッグカフェでのんびり過ごしたりと楽しい散歩の時間をいろいろ楽しんでくださいね。

監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。 現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。