
男の子の犬を迎えたら考えておきたい「去勢手術」のこと。去勢手術の方法や目的、手術をするタイミングのことなどについて解説します。手術をすることで得られるメリットやデメリット、気になる手術のリスクなども併せてご紹介します!
犬の去勢手術とは

去勢手術とは、精巣の外科的処置で「睾丸摘出術」を指します。
実際どのような手術かというと、陰嚢(いんのう)の少し頭側を切開し、中の精巣だけを取り出します。女の子の避妊手術とは異なり、お腹は開かない手術になるため、体に対する負担は避妊手術よりは少ないです。
治療を目的に行うこともありますが、基本的には健康な犬(主に子犬)に対して、さまざまな疾患の予防や、行動をコントロールする目的で行われます。
どんなメリットや効果があるの?

去勢手術をすることで、愛犬にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
病気を防げる!
睾丸を摘出してしまうので、「精巣腫瘍」など睾丸の病気の心配はなくなります。特に陰睾(いんこう)でお腹の中に精巣が残ってしまった子は癌化する確率が高いことがわかっているので、去勢手術は積極的に検討した方が良いでしょう。その他、「前立腺」のような男の子特有の器官の疾患、「肛門周囲腺腫」や「会陰(えいん)ヘルニア」など、男性ホルモンに影響される疾患を予防、または治療することにも役立ちます。
また、てんかんや内分泌異常など、全身性の疾患のコントロールに去勢手術が有効な場合があります。手術を行う際は現状の症状について獣医師と相談するようにしましょう。
マーキングが減る
性成熟が始まると、男性ホルモンにより縄張り意識が芽生えるため、マーキング行動をします。最初(成熟のはじめ)のタイミングで手術すれば、ホルモンの分泌が抑えられてマーキング行動は収まることが多いです。ところが、この時期を逃しマーキングが習慣化してしまうと、手術をしても収まらない可能性があるので注意が必要です。
ストレスが減る
未去勢の場合、交尾欲や他の犬に対する攻撃性、縄張り本能などさまざまなストレスを感じやすくなります。去勢手術をすることでこれらのストレスを予防することができます。
望まない繁殖を防げる!
飼い主さんの望まない繁殖を防ぐことができます。万が一、脱走してしまったり、ドッグランなどで誤って女の子と交尾してしまう、という事故を防ぐことができます。また、多頭飼いの場合にも安心です。
手術にリスクはある?
去勢手術にかかわらず、全身麻酔のリスク、体にメスを入れ手術を行うことはリスクを伴います。術後は、傷口の感染などもありえるので、抜糸までは、傷口が汚れるようなシチュエーション(雨の日の散歩、泥はねが起こるような道)は避けましょう。

また、手術後は、ホルモンバランスの変化により、太りやすくなります。運動を心がけて筋肉をつけたり、去勢後用のフードに切り替えたりして、体重管理に気を付けるようにしましょう。
手術の流れは?
手術をする場合、どのような流れになるのでしょうか。
手術前
手術を行う病院に去勢の相談に行きましょう。子犬であれば、成長具合や睾丸が下りてきているかなどを診てもらった上で、手術日を決めます。
また、病気の治療以外で去勢手術を行う場合、健康な状態で行うことが基本となります。手術前の体調管理には気をつけましょう。下痢や嘔吐がある、食べる量がいつもより少ないなど、いつもと違うサインがある場合は、予約日当日であってもすぐに獣医さんに相談して、手術を延期しましょう。
また、手術後は抜糸も含め1週間から10日ほどは、全身のシャンプーやカットを行うことはできません。トイ・プードルなど、トリミングが必須の犬種の場合は、事前にカットなどを済ませるようにするとよいですね。ただし、トリミングは意外と犬にとっては負担になり、体調を崩すこともあります。手術直前の予約は避けるようにしましょう。
手術当日
当日は絶食・絶水を指示されることが多いです。これは、全身麻酔時に嘔吐による誤嚥
(ごえん※)を防ぐ目的があります。絶食・絶水がどのくらい前から必要なのかは病院からの指示があるので確認して忘れずに実行しましょう。
手術の流れは病院によって多少異なりますが、一般的に全身麻酔、手術を行えるか術前検査を行い異常がないことを確認したうえで手術を行います。
※誤嚥:唾液や食べものを飲み込むときに、誤って気管に入ってしまうことをいいます。
手術後
退院は、病院の方針により、当日あるいは数日の入院後になります。
手術後は、1週間から10日後を目安に抜糸が行われます。その間は過激な運動は避けましょう。通常のお散歩や室内での生活は、特に制限をする必要はありません。
このほか、犬は痛みや違和感に対してなめようとする本能があります。退院直後はまだ手術部位に痛みが残っていることが多く、また家に帰った安心感から傷口をなめようとする犬がほとんどです。しかし、手術の傷口をなめてしまうと傷が治りにくくなり傷口が開いてしまうこともあります。傷を気にするようであれば、抜糸まではエリザベスカラーや手術後用の洋服を着て傷口をなめないようにさせましょう。
手術はいつからできるもの?

生後9~10ヶ月齢で性成熟に達します。大型犬または超大型犬ではもう少し成熟は遅くなります。5~7ヶ月に性成熟が始まり、自分より弱い個体に乗ったり、マーキングをしたり、という行動がで始めます。またこの頃になると、乳歯が抜けて永久歯に生え変わり体自体も成熟し始めるためこの時期に手術を行うことが推奨されています。
体重が2キロに満たない小さい子の場合は成長を十分に待ってから行う方が安心です。
筆者自身は生後半年以降、体重2キロ以上を一つの目安としています。
近年は、精巣が陰嚢(いんのう)に触知される生後2ヶ月ころに去勢手術を行う病院もあります。
手術のタイミングはそれぞれの獣医師の考えや、子犬の成長にもよります。かかりつけの動物病院とよく相談して予定を立てましょう。
■小型犬は、乳歯の生え変わり具合で手術のタイミング決めも
体の成熟に加えて、小型犬種では、乳歯の抜け具合から手術のタイミングを決めることもおすすめです。小型犬種では、乳歯がうまく生え変わらず、永久歯と二重に生えてしまうことがしばしばあります。そうなると自然には抜けず、人工的に抜歯する処置が必要になります。乳歯が完全に抜ける目安は1歳齢になりますので、乳歯が残っている場合は、体の成熟具合と合わせて、抜けるタイミングを見て手術の予定を立てるのもよいでしょう。
全身麻酔は愛犬にとっても負担になりますので、タイミングを合わせて抜歯と去勢を一気にできると余分な負担をかけずにすみます。
まとめ

去勢手術は、男の子の犬が、家族としてより快適に暮らすために有益なことです。去勢手術を行うことで、男の子特有の縄張り意識やそれに伴う行動のコントロールをすることができます。また将来的に起こりえる病気の予防にもなります。
子犬を家族に迎え入れたら、まずはかかりつけの動物病院で手術について、相談をしてみてください。
