
「室内犬だからきっと大丈夫だろう」と甘くみてはいけない犬のノミ。犬に寄生する感染経路や、寄生してしまった場合にみられる症状について解説します。また、犬に寄生する虫として、よく一緒にくくられるダニとの違いもお話します。大事な愛犬にノミを寄生させないために、飼い主ができることをご紹介します。
犬に寄生するノミについて
ノミは体長2ミリメートルほどの、ゴマ粒のような小さな虫で、左右に薄っぺらい体をしています。羽はなく、強大な後ろ足から生み出されるジャンプによって、宿主である犬や猫、ときには人間の足に飛びつきます。
ちなみにこの「宿主」というのは、ノミが生活して卵を産める動物を指します。犬には犬を、人間には人間を宿主としたノミが寄生します。けれども、どのノミも、宿主以外の動物にひっついて吸血することができます。そのため、愛犬にノミが寄生した場合、家族である飼い主さんにも被害がおよぶ可能性があります。
ダニとの違い

犬に寄生して吸血する虫には、「ダニ」もいます。ノミと比較されるダニは、正確にはクモの仲間で、マダニという種類です。ハウスダストなどの原因となる微細なダニとは、種類が異なります。大きさは2ミリメートルほどですが、吸血時は10倍以上の大きさになることもあります。
ノミとダニの違い
ダニは、卵から幼ダニになり、若ダニを経て成ダニ(成虫)になります。ノミとの大きな違いは、成ダニ以外も吸血をし、吸血をして満腹になると一度宿主から離れて過ごし、またおなかが空くと宿主にとりつくことを繰り返す点です。吸血には平均3~5日、長い場合は10日以上かかり、この間は成ダニでも産卵はしません。そのため、愛犬に寄生している段階で駆除できれば、家の中で増えることは少ないです。
もしダニをみつけてしまったら
感染は室外からであることがほとんどです。ダニは口吻(こうふん)という器官で、がっちり皮膚にくらいついて吸血しているため、見つけたからといって無理に引っ張るのはやめましょう。ダニ本体は取れても、口吻が犬の体内に残ってしまい、皮膚炎の原因になることがあります。
必ず、駆除剤を滴下して自然に落ちるのを待つか、かかりつけの動物病院で適切な処置をしてもらいましょう。
犬のノミの感染経路
ノミは卵から幼虫になり、さなぎを経て成虫になります。犬に寄生して吸血をするのは成虫のみです。成虫は、ノミの一生の5%程度の期間です。では、残りの95%の期間、ノミはどこにいるのでしょうか?答えは環境中、つまり家の外なら地面の上、家の中なら愛犬のお気に入りのクッションやベッドの上、あるいはお部屋のカーペットの上などにいます。
ノミの感染経路として一番多いのは、地面や草のかげにひそんでいたノミの成虫が、散歩などで通りかかった犬にとびついて寄生する場合です。しかしこれ以外にも、例えば家の敷地に出入りする野良猫がノミの卵を持ち込み、玄関や庭先で愛犬に寄生するパターンもあります。また、飼い主さんのズボンのすそに、たまたま飛びついていたノミが家の中に持ち込まれ、愛犬に寄生することもあるでしょう。
やっかいなのが、家の中にノミが入り込んでしまった場合です。ノミは、湿度が高く(70%以上)、気温が低すぎないような時期(18℃~27℃)では、おおむね3週間で卵から成虫になります。一年中、冷暖房により一定の温度や湿度が保たれている現代の家の中では、あっという間にノミが大繁殖する可能性があります。また、これ以外の気温が低い時期でも、ノミは卵やさなぎの状態で3ヶ月~半年もの間、環境条件がよくなるのを待つことができるのです。そのため、冬になって、「もう外は寒くてノミなんかいないだろうから」と、愛犬にノミ予防薬をつけなくなった途端に、再びノミがついてしまう場合もありえます。
ノミが寄生したときの症状

ノミは針のような口を皮膚に刺して、吸血します。犬は刺された箇所にかゆみを感じるため、体中あちこちをかきむしったり、かむようになります。かゆみからイライラなどの不安感が増し、攻撃的になったり、触られるのを極端に嫌がるようになることもあります。
症状について
ノミが好む寄生箇所は背中・脇の下・下腹・内股などです。これらの箇所に湿疹や赤み、さらには、掻くことによる傷や脱毛の症状がみられることが多いです。
このほかにも、ノミの唾液成分によるアレルギーを起こして、全身に皮膚炎症状が出ることもあります。また、ノミの寄生が重度になると、貧血や体重減少などの症状も引き起こされるので、注意が必要です。
対処法
たとえ一匹でも愛犬の体にノミを見つけたら、そのノミが卵をすでに産んで、愛犬の体や家の中にばらまかれている可能性があります。大量のノミは犬だけでなく人間も吸血するようになります。また、ノミの死骸や糞は、人間の喘息やアレルギーの原因となることもあります。なるべく早くかかりつけの動物病院で、駆除剤を投与してもらいましょう。そもそもノミは素早いので、1匹寄生している程度では、目で確認するのは難しいものです。つまり、ノミを見つけた時点で、すでに何匹も寄生していると思った方が良いでしょう。
多くの場合、不自然に体を掻く、あるいは愛犬のよくいる場所に、砂粒のようなごみ(ノミの糞)が落ちていることで、寄生が疑われます。
愛犬に駆除剤を投与したら、同時に家の中は徹底的に掃除機をかけ、愛犬の寝具だけでなく、部屋に敷いているラグなども、洗えるものはすべて洗濯しましょう。可能であれば、噴霧式の駆除剤を家の中に撒くことをお勧めします。前述のように、ノミの卵や幼虫は環境中に生息して、愛犬に再び寄生する機会をうかがっています。これらを駆除しなければ、愛犬への寄生は駆除・予防薬で防げても、ノミを家の中から追い出すことはできません。
ノミを寄生させないために! 予防法をご紹介
ノミは寄生してから駆除するのではなく、寄生させないことが重要です。飼い主として予防対策は必須です。
予防薬を上手に使おう
予防薬を定期的に使うようにしましょう。動物病院で処方される予防薬は、ノミの駆除ができるタイプのものです。繰り返しますが、冬でも感染の機会はあるので、一年を通して予防薬を使うことをお勧めします。
■予防薬は動物病院で
予防薬は、動物病院で購入するようにしましょう。ホームセンターなどで売られている予防薬は、医薬部外品になるため、効果が弱かったり、滴下剤の場合は皮膚炎をおこしたりする可能性もあります。
シャンプー、ブラッシングでお手入れも欠かさずに
ノミ寄生を防ぐ訳ではありませんが、通常のシャンプーやブラッシングでのお手入れは、皮膚の状態を見て、ノミが寄生しているかいないかを確認するのに効果的です。
予防薬と併用して虫除けグッズ(スプレーやチャーム型のものなど)を使用するのも効果的です。
ノミ予防薬を使うことを習慣に

家の周りやコンクリートの道路の上しか散歩しないから、ノミの寄生とは関係ない、と思っていませんか? ノミは案外身近なところにひそんでいて、家族である人間が持ち帰ってしまうこともありえます。
ノミの寄生は予防薬で防ぐことができます。家の中で大発生してしまうと大変厄介ですし、ノミの寄生によるかゆみは愛犬にとってつらいものです。愛犬のためにも、家族のためにも、ノミ予防薬を定期的に使うことを習慣にしてください。
