
何気ない日常の暮らしの中で、愛犬家はさまざまなことに注意する必要があります。たとえば、人間にとっては健康的な食べ物でも、犬にとっては毒になることも。その代表的なもののひとつが、玉ねぎです。季節を問わず食卓には欠かせない食材なので、常に家にあるという方も多いと思います。今回は、そんな玉ねぎが犬にとって危険な理由や、万が一食べてしまった際の対処法について解説します。
玉ねぎを与えてはいけない理由

犬が玉ねぎを食べると、中毒症状を起こしてしまいます。ときには重症化や死に至るといったリスクをはらむ、危険な中毒症状です。玉ねぎに限らず、長ねぎやニラ、ニンニクといった食材も犬にとっては有害な食べ物なので、ねぎ類全般と認識しておきましょう。
ちなみに玉ねぎを食べても平気な生物は、人や猿のほかにはあまりみられません。犬や猫、インコなどの鳥と暮らしている方も注意が必要です。
玉ねぎに含まれている成分
玉ねぎに含まれている成分の中で犬にとって危険なのは「有機チオ硫酸化合物」です。実は人の体内では、血栓症系の病気の予防効果をもたらすなど嬉しいはたらきをもっている成分でもあります。しかし、同じ哺乳類であっても身体や血液の構造が異なるため、同様の効果は望めないどころか中毒になってしまうのです。
手についた玉ねぎの臭いは大丈夫?
ねぎ類特有の香りは、この有機チオ硫酸化合物が要素のひとつと言われています。当然ながら、食べるよりは手についた臭いだけのほうが中毒になる確率は低くなります。
ただし、臭いが残っているということは玉ねぎの成分がまだ手に残っている可能性もあるということなので、調理したあとの手は入念に洗いましょう。香りの強い石鹸だとしっかり落ちているのかどうかがわかりにくいので、無香料の石鹸で一度洗ってから確認するのがおすすめです。
また、玉ねぎを切っていると目がしみることがありますが、この現象は犬にも起こる可能性があります。涙が出ていなくても目を赤く充血させてシバシバしている様子が見られたら、玉ねぎの影響かもしれません。調理中はキッチンに近寄らせないようにするなどの対策を講じてください。
目がしみる原因となっている成分は硫化アリルとされていて、有機チオ硫酸化合物とは異なる成分ですが、いずれにしても犬の身体にいいものではありません。玉ねぎを使って料理をするときには、犬が近寄れない環境を整えましょう。
玉ねぎを食べてしまったら… どんな中毒症状が出る?
ここでいう中毒症状とは、依存症の中毒とは異なり、身体の機能に異常をきたすことを指します。中毒症状が発症するまでの時間は、数時間〜数日とさまざまな条件によって大きく異なるのが特徴です。
症状
主に貧血の症状を引き起こします。中毒になる理由は、有機チオ硫酸化合物が赤血球に含まれるヘモグロビンを酸化させることに起因しています。
ヘモグロビンや赤血球というワードから、まず連想されるのは血液に関する貧血などの症状かもしれません。貧血と一口に言っても、めまいや粘膜蒼白、意識をなくすといったさまざまな症状がみられます。また、赤血球の色素は腎臓にも影響を及ぼすので、血尿や濃い色の尿になることも。これ以外にも食欲不振、嘔吐、下痢、呼吸困難といったさまざまな症状が報告されています。
さらに、慢性化してしまうと、黄疸から肝臓機能の低下も引き起こす可能性もあります。
食べてしまったときの応急処置
舐めた直後なら、口の周りをよく洗いましょう。もし口の中にいれてしまってもまだ飲み込んでいないようであればすぐに口から取り出します。飼い主さんの判断で薬などを与えるのはかえって危険なので、これ以上は動物病院で獣医さんの指示を仰ぎます。
致死量は?
小さな欠片を食べて重症化した犬もいれば、まるまる一個食べても大きな症状がみられなかった犬もいます。犬の健康状態や年齢、体力、犬種などさまざまな条件が関係してくるので、一概にどれくらい食べると死に至ると断言することはできません。
少量であっても危険であるということを認識しておきましょう。
玉ねぎ中毒の治療方法

犬が玉ねぎを口にしてしまったことに気がついたら、すぐに獣医さんに診てもらいましょう。早期の治療が重要になってきます。万が一、玉ねぎを誤食してしまったら、とても焦ってしまうとおもいますが、落ち着いて食べてしまった量や時間などを確認しましょう。そして、動物病院へ電話をしてから連れて行くようにしましょう。かかりつけの病院や信頼できる獣医さんを、もしものときのためにも今からリサーチしておくと安心です。
動物病院での応急処置
食べてしまってからだいたい4時間以内に動物病院に行くと、投薬などで吐き出させてくれたり、胃の洗浄を行ってくれます。処置のあとは胃炎防止の薬などが処方されることがあるので、経過観察も欠かせません。
もしすでに中毒症状が出ていたら、赤血球の破壊を防ぐ薬の投与や、輸血などの対症療法が行われます。下剤などで残っている成分を出し切ることなどもありますが、解毒剤ではないので根本的な解決法とはいえません。
自然治癒する?
すでに症状が出ている場合は悪化する可能性が大いにあるので、自然治癒の選択肢はないと思ってください。食べてしまったら、必ず動物病院へ連れて行きましょう。夜間や休日でも、救急病院へ駆け込んでください。放置すると、命に関わる重篤な状態になってしまう可能性もあります。
食べないようにする対策

これまで、犬が玉ねぎを食べてしまったあとに起こり得ることを解説してきましたが、未然に防ぐに越したことはありません。玉ねぎに限ったことではないですが、犬にとって危険なものを誤飲してしまわないための方法をご紹介します。
保管場所を考える
玉ねぎは常温でも比較的長持ちする野菜ですが、野菜庫などに保管するのがおすすめです。冷蔵庫に入れることで味に大きな変化があるといったデメリットもありません。冷蔵庫に入れたくない場合は、棚の中など扉のある場所に保管しましょう。
調理中は近寄らせないように
火傷などの観点からも調理中は犬がキッチンに入ってこないようにするのが一番ですが、家の構造上難しいこともあると思います。その場合は、慎重に、犬にとって危険な食材を取り扱っているという意識を持って調理をしましょう。万が一玉ねぎが床に落ちてしまったら、手を止めてすぐに拾ってください。犬は玉ねぎそのものの香りはあまり好きではないようですが、食欲のある犬や調味料の香りに興味を持って近づいてきた犬は、なんのためらいもなく食べてしまいます。
人間の食べ物を与えない
「玉ねぎ」という言葉から連想されるのは、調理される前の丸い姿かもしれませんが、犬にとって危険なのはこれに限りません。加熱しても有機チオ硫酸化合物は消滅しないので、いかなる形態の玉ねぎであっても犬に与えてはいけません。
玉ねぎを使った料理は和洋中問わずたくさんあり、使い方もさまざまなので、気づかないところにも入っていることがあります。とくに、ハンバーグやドレッシングなどに入っているすりおろした状態の玉ねぎは目に見えないので、注意が必要です。
まとめ
人には有益な効果をもたらしてくれても、犬にとっては毒になってしまう食べ物は少なくありません。人が食べているものを欲しがっても、犬のおねだりを聞き入れずきちんとダメなものはダメと教えるのも、思わぬ事故を未然に防ぐひとつの方法です。
飼い主さんのちょっとした心がけ次第で誤食は防ぐことができます。愛犬のために、日ごろから気を付けてあげてくださいね。
