甘い香りとジューシーな果肉が人気のメロン。甘いもの好きのワンちゃんにおねだりされたことのある飼い主さんもいらっしゃるでしょう。今回は、犬にメロンを与えて大丈夫か、与えるときの注意点などをご紹介します。

メロンは食べても大丈夫

人の食べ物の中には、犬に与えると中毒を起こす可能性のある成分を含むものもありますが、メロンには犬にとって毒性のある成分は含まれていません。そのため、基本的には犬に与えても大丈夫です。甘くておいしいので、食欲が落ちているときの栄養補給や疲労回復の目的で与えたり、特別なごほうびやおやつとして少量与えるのがおすすめです。ただし、体質によってアレルギーを起こしたり、食べ過ぎたり皮や種を食べてしまって消化不良を起こすこともあるので、与え方には注意が必要です。

メロンの栄養素について

・カロリー
メロンの87.8%は水分です。100gあたりのエネルギー量は40kcalで、りんごやバナナと比較するとカロリーは控え目です。

・糖質
メロン100gあたりに含まれる糖質は9.8gで、果糖、ショ糖、ブドウ糖などが含まれます。これらの糖質は体内ですみやかに吸収されてエネルギーになります。食欲が落ちているときなどのカロリー補給に適していますが、摂りすぎると肥満の原因になります。

・カリウム
カリウムが多い果物としてはバナナがよく知られていますが、メロンの果汁にもカリウムが多く含まれています。カリウムは余分なナトリウムを体外に排出し、体内の水分バランスを整える働きがあり、高血圧やむくみの予防に効果が期待できます。ただし、腎機能が落ちている犬ではカリウムを十分に尿中に排泄できないため、高カリウム血症になる可能性があるので注意が必要です。

・β‐カロテン
赤肉種のメロン(夕張メロン、富良野メロンなどの果肉がオレンジ色のメロン)には、β‐カロテンが多く含まれています。β‐カロテンは犬の体内でビタミンAに変換されます(*猫はこの変換酵素を持たないためβ‐カロテンをビタミンAに変換できません)。ビタミンAは目や皮膚、粘膜、被毛の健康に関与しています。また、抗酸化作用があり、身体を酸化から守ることで免疫力の強化や病気の予防に効果が期待されます。

メロンに含まれる栄養素(りんご、バナナと比較)

可食部100gあたり メロン りんご バナナ
エネルギー(kcal) 40 56 93
水分(g) 87.8 83.1 75.4
たんぱく質(g) 1.1 0.2 1.1
脂質(g) 0.1 0.3 0.2
炭水化物(g) 10.3 16.2 22.5
食物繊維(g) 0.5 1.9 1.1
 糖質(g) 9.8 14.3 21.4
カリウム(mg) 340 120 360
カルシウム(mg) 8 4 6
ビタミンA(βカロテン当量)(μg) 33(赤肉種は3600) 27 56
ビタミンC(mg) 18 6 16

参考:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 文部科学省

メロンをあげるメリット

メロンは甘くておいしいので、愛犬が喜ぶ特別なごほうびになります。愛犬とのコミュニケーションを深めたい時などに、上手に利用しましょう。また、病気のときなど、体力や食欲が落ちているときでも食べてくれてカロリー補給ができる可能性があります。

どれくらいの量がいい?

メロンは犬にとっての主食ではなく、おやつに分類されます。おやつの量は1日の摂取カロリーの10%以内が目安ですが、メロンは水分を多く含むため、たくさんあげると下痢をしてしまったり、お腹がいっぱいになって主食のフードが食べられず、栄養バランスが崩れてしまう可能性もあります。甘くておいしいのでそればかり欲しがるようになってしまうこともあるので、特別何かよいことがあったときのごほうびなどに、少量をあげることをおすすめします。犬の大きさに合わせて一口サイズに小さくカットしたものを数個程度にするとよいでしょう。

与える時の注意点

皮と種は与えないで

犬にメロンを与えるときは、皮と種を取り除き、果肉の部分だけをあげましょう。メロンの皮は固く消化されにくいため、大きさによっては喉や消化管を傷つけたり詰まったりしてしまう可能性があります。メロンの種も消化されないので、大量に食べると消化不良で下痢をしてしまうことがあります。皮や種もいい匂いがするので、取り除いた後の皮や種を誤飲されないよう十分に気をつけて下さい。

小さくカットしてから

メロンが大好きな犬は、与えられたメロンを喜んで丸呑みしてしまうこともあります。大きいままだと詰まってしまうこともありますので、犬の大きさに合わせて一口サイズに小さくカットしてから与えましょう。

アレルギーに注意

体質によって、メロンを食べるとアレルギー反応が起こり、皮膚症状(痒み、赤み、発疹など)や消化器症状(下痢、嘔吐など)が出る場合があります。重症の場合は、血圧の低下や呼吸困難などのアナフィラキシーショックが起こる可能性もあります。初めてメロンを与えるときはごく少量を様子を見ながら与え、症状が出ないかどうかよく確認しましょう。

また、メロンは口腔アレルギー症候群を起こしやすい果物として知られています。口腔アレルギー症候群は、花粉症がある場合に、その花粉と似た構造を持つたんぱく質を含む果物を摂取したときにアレルギー反応(交差反応)が起こり、口腔内の粘膜などに痒みや腫れなどの症状が起こります。メロンの場合は、イネ科植物やブタクサ、ヨモギなどの花粉に対してアレルギーを持っている場合に発生しやすいので、これらのアレルギーがある犬にはメロンは与えない方がよいでしょう。

タンパク質分解酵素「ククミシン」に注意

メロンを食べたとき、唇がピリピリしたり喉がイガイガしたりすることがあります。これは、メロンに含まれるタンパク質分解酵素である「ククミシン」という成分によって、唇や口腔内の粘膜が刺激されるために起こり、犬でも同様の反応が起こる可能性があります。また、ククミシンが口腔アレルギー症候群を引き起こすアレルゲンとなることも報告されています。ククミシンの含有量はメロンの品種や時期によって異なりますが、大量に摂取すると症状が出やすいので、犬にメロンを与えるのは少量にした方がよいでしょう。

メロンの加工食品はNG

メロンのゼリーやお菓子など、メロンを使った加工食品は犬には過剰な糖分が含まれている場合があるので、与えない方がよいでしょう。

まとめ

メロンは少量であれば犬に与えても大丈夫です。量や与え方、アレルギー症状などに十分注意し、主食の栄養バランスを崩さないように与えるようにしましょう。皮や種は取り除き、誤飲されないよう気をつけましょう。おいしいメロンを上手に使って、愛犬とのコミュニケーションを深められるとよいですね。

監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。