みなさんは愛犬にどのようなごはんをあげていますか?ペットショップに行くと、本当にたくさんのフードやおやつが並んでいて、迷ってしまいますね。犬は自分で食べるものを選ぶことができません。毎日おいしく楽しく食べて元気に過ごすためには、どのようなごはんを選んであげたらよいのでしょうか。
犬のごはんは大きく分けると、市販のペットフードか手作り食に分けられます。今回は市販のペットフードの種類や選び方、上手な与え方についてご案内したます。

ペットフードにはどんな種類がある?

日本で販売されているペットフードは、「ペットフード公正取引協議会」の規約に従って、その目的から、「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」の4つに分類されています。

総合栄養食

犬、猫の毎日の主食として与えることを目的とするもので、総合栄養食と水だけで、犬、猫がそれぞれの成長段階において必要とする栄養素をきちんと摂取することができるフードです。ペットフード公正取引協議会は、AAFCO(アメリカ飼料検査官協会:飼料とペットフードの品質と安全性の基準を設定しているアメリカの組織)のガイドラインに従って「総合栄養食」の基準を定めています。

間食

おやつ、スナック、トリーツなど、ごほうびやコミュニケーションの手段などとして与えることを目的とするフードです。主食の栄養バランスに支障を与えないための給与限度量を表示することが決められています。

療法食

特定の病気や健康状態にあるペットの栄養学的なサポートを目的にしたフードです。それぞれの病気に対応して栄養成分の量や比率が調節されていて、獣医師の指導の下で食事療法に使用されます。

その他の目的食

上記の「総合栄養食」「間食」「療法食」のいずれにも当てはらまないもので、「副食・おかずタイプ」と「栄養補助食」に分けられます。「副食・おかずタイプ」は嗜好性を高める目的のもので、一般食、副食、ふりかけなどがあります。「栄養補助食」は特定の栄養素やカロリーの補給などを目的としたもので、栄養補完食、カロリー補給食、動物用栄養補助食(動物用サプリメント)などがあります。

ドライフードとウェットフード

ペットフードは製品の水分含有量や製造方法によって、「ドライ」「ソフトドライ」「セミモイスト」「ウェット」の4種類に分類されています。

・ドライフード
水分含量10%程度以下のフード。水分含量が少ないため傷みにくく、開封後も比較的長期間保存することができます。1食当たりのコストが安いのもメリットです。ドライフードを与える場合は食事からの水分摂取量が少なくなるため、新鮮な水を十分に与える必要があります。

・ソフトドライフード、セミモイストフード
水分含量25~35%程度の半生タイプのフード。ソフトドライとセミモイストは加工方法が異なり、硬さや質感も若干異なります。やわらかい食感で香りが強く、ドライフードに比べて嗜好性が高いものが多いようです。水分が多く傷みやすいため、品質保持期限が短いものが多く、しっとりさを保つための保湿剤や防カビ剤、酸化防止剤などの添加物が多く使われているものも多いと言われています。

・ウェットフード
水分含量75%程度のフードで、缶、アルミトレイ、パウチ等の製品があります。素材の風味が生かされていて嗜好性が高いため、食欲の落ちている犬でも食べてくれることが多いです。水分含有量が多いので、自分から水をあまり飲まない場合や、尿石症、腎臓病など水分摂取量を増やす必要のある病気に適したフードです。未開封の状態であれば保存期間が長いのもメリットですが、開封後は傷みやすいので、すぐに使い切るか、冷蔵庫等で保存する必要があります。他のタイプに比べて1食当たりのコストが高いのがデメリットです。

選び方の基準

それでは、たくさんあるフードの中から愛犬に合ったものを選ぶときにはどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。フードを選ぶときの基準についてご案内します。

フードの種類

獣医師の指導で療法食を利用している場合を除いて、主食には「総合栄養食」のフードを選び、1日のカロリー必要量の80%以上がそのフードから得られるようにしましょう。必要な栄養バランスを崩さないために、トッピングやおやつなどに使用するフードは多くても20%以内にしましょう。

ライフステージ

犬の成長段階によって必要な栄養素は変わるので、成長段階に合ったフードを選ぶことが大事です。「総合栄養食」のフードには、そのフードが適用されるライフステージが表示されているので、必ず確認しましょう。

犬のそれぞれの成長段階で適したフードは次のようなものです。

成長段階 月齢・年齢の目安 ペットフードの表記 特徴
子犬 生後3週齢前後まで 「哺乳期用」 犬の母乳成分に基づいて
作られた粉ミルクや液体ミルク。
生後7~8週齢前後まで 「幼犬期用」 離乳食と言われるもので、
やわらかく消化の良い
高エネルギーのフード。
母乳や犬用のミルクと併用する。
(この時期は子犬用フードを
ふやかしたものでも可。)
「離乳期用」など
超小型犬:10ヶ月齢まで 「子犬用」 高たんぱく、高エネルギーで、
成長に必要な
ビタミン、ミネラル、アミノ酸などが
強化されたフード。
小型~中型犬:1歳まで 「成長期用」
大型犬:18ヶ月~2歳まで 「パピー」
「グロース」など
成犬 1歳から 「成犬期用」 健康維持に必要な栄養素を
バランスよく含んだフード。
6~8歳前後まで 「維持期用」
「メンテナンス」など
減量用やアレルギーに配慮したもの、
皮膚の健康を考慮したものなど、
様々な目的に合わせたフードもある。
妊娠・授乳期 「妊娠・授乳期用」
「グロース」
高たんぱく、高エネルギーで、
妊娠、授乳期に必要な栄養素が
強化されたフード。
老犬 6~8歳前後から 「高齢期用」
「シニア」
「ハイシニア」
「エイジングケア」など
老齢期の運動量の減少や代謝の低下、
内臓機能の低下などを考慮して
栄養バランスを調整したフード。

これらの成長段階全てに適合した「全成長段階/オールステージ」用のフードもあります。

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原材料

現在、日本国内で製造、輸入、販売されているペットフードは、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」の基準や規格によって規制されています。この法律の制定によって安全性に問題のある原材料を使ったフードは流通しなくなり、以前に比べると安心してフードを選べるようになりました。しかしながら、販売されているフードがすべての犬にとって絶対に安全であることを保障してくれているわけではありません。個々の原材料の安全性についてはいろいろな議論がありますが、飼い主さんがきちんと情報収集をし、わかっている中でわが子に安心して与えられるものを判断して選ぶ必要があるでしょう。
原材料に関して、フードを選ぶ上で注目してみておいた方が良い点について、ご案内します。

① どのようなお肉を使っているか
ドッグフードには鶏肉、牛肉、ラム肉、鹿肉など様々な動物の肉が使われますが、肉の他に内臓や骨、皮などが使われたり、人の食用に適さない品質の肉が使われたりしている可能性もあると言われています。獲物を丸ごと食するイヌ科の動物の食性からも、食材の有効利用という観点からも理にかなっている部分はありますが、そのような原材料の中には安全性の面で不安なものもあると指摘する声もあります。そのような安全性に不安のある材料が使われていないかどうか、パッケージやメーカーのHP、企業姿勢などを確認して選ぶようにしましょう。

② 穀類を使っているかどうか
ペットフードに使用される穀類は、米や麦、とうもろこしなど、主にイネ科の種子です。多くのドッグフードには穀類が入っていますが、穀類の入ったフードは肉食に近い食性の犬の食事には適さないのではないかという考えがあり、穀類を全く含まないグレインフリーのドッグフードも販売されています。 
犬に穀類を与えないほうがよい理由として、穀類が食物アレルギーの原因になりやすいという意見や、犬は身体の構造上、穀類の消化が苦手なため与えない方がよいという意見があります。
確かに小麦グルテンに対するアレルギーを持つ犬もいますが、穀類によるアレルギーは牛肉や鶏肉などのアレルギーに比較すると少ないことが報告されています。また、犬は生の穀類を消化し利用するのは苦手ですが、適切に調理された穀類であればきちんと消化し良質な栄養源として利用できると言われています。以上のようなことから、現在では、穀類に対するアレルギーがあることがわかっている犬以外は、グレインフリーのフードにしなくても問題はないという考えが主流になっています。
ただ、犬は穀物を食べないと生きられないわけではなく、穀物を多く含むフードは糖質が多いため太りやすいという意見もあり、グレインフリーのフードを選択するかどうかは、飼い主自身がメリットデメリットをよく考慮した上で選択する必要があります。

③ どのような添加物を使っているか
ペットフードの添加物には、必要な栄養を補給するための栄養添加物(ビタミン類・ミネラル類・アミノ酸など)、フ-ドの品質を保つための添加物(保存料、保湿剤、酸化防止剤など)、嗜好性や見栄えをよくするための添加物(着色料、発色剤、香料など)があります。
日本で販売されているドッグフードに使用されている添加物は、AAFCOの基準に従って定められたペットフード安全法の「基準規格等」で決められている量以下の使用しか認められていないので、基本的には安全性に問題はないと思って大丈夫でしょう。そうは言っても不安な場合には、例えば見栄えをよくする発色剤や着色料など、犬にとってどうしても必要ではない添加物が含まれていないものを選ぶとよいでしょう。
ここで注意したほうがよいのは、ただ無添加のフードが安心安全かというと、そうとは言い切れないということです。保存料や酸化防止剤などは、フードの品質を保つために必要があって添加されているものです。それらが無添加なために、カビが生えたり酸化してしまったフードは、添加物の毒性の何倍もの健康被害をもたらす危険があります。無添加のフードを選ぶのであれば、必ず品質の保持や保存の方法についてきちんと考慮されているものを選ぶようにしましょう。

犬種を考慮して選ぶ

「総合栄養食」は犬種に関わらず、それぞれの成長段階にある犬に必要な栄養素がきちんと摂れるように設計されているので、基本的には犬種によってフードを変えなければならないということはありません。もし、愛犬にぴったりなフードがなかなか見つからなかったり、犬種特有の疾患に配慮した食事を与えたい場合には、犬種を考慮したフードを選ぶのも一つの方法です。
ドライフードの場合、小型犬用のフードと大型犬用のフードでは粒の大きさが違います。いつものフードで食べづらそうな様子が見られるのであれば、犬種に適した粒の大きさのフードに替えてみるとよいでしょう。
犬種別のフードというのも販売されています。それぞれの犬種で多い生活環境、運動量や太りやすさの傾向、かかりやすい疾患などに配慮して作られています。ただし、同じ犬種であっても、犬によって運動量や代謝の状態、気をつけなければならない病気は様々なので、犬種にとらわれすぎずに、愛犬に合ったフードを探すことが大事でしょう。

今のフードが合っているかを見極めるポイントは?

飼い主さんが選んだフードが愛犬に合っているかどうかをきちんと評価することはとても大事です。次のようなポイントに気をつけて観察してみましょう。

食いつき

食事は毎日のことなので、おいしく楽しく食べられるかは重要なポイントです。特に主食となる総合栄養食は、毎日の食事の8割以上を占めるフードなので、愛犬が喜んで食べられるものを選んであげたいですね。フードのタイプはドライ、半生(ソフトドライ、セミモイスト)、ウェットとあり、味や香りもいろいろなものがあるので、好みのものを探してあげましょう。

うんちの状態・量

フードに含まれる原料や成分の違いによって、うんちの固さや色、量などが変わる場合もあります。極端にうんちの量が増えた場合や、下痢あるいは便秘が続くような場合は体質に合っていない可能性があります。

皮膚や被毛の状態

毛づやが悪くなったり、皮膚の乾燥がひどくなっている場合は、フードが合っていない可能性があります。

体重の推移

痩せ気味の子が適正な体重を維持できる量を無理なく食べられるかどうか、太り気味の子が適正な体重を維持するための量で満足できるかどうかも大事なポイントです。

あまり今のフードが好きではなさそう…どうすればいい?

愛犬の食が進まないとき、次のような原因が考えられます。

① 体の具合が悪い

食欲不振の他に、元気がない、発熱、痛み、嘔吐、下痢などの症状がある場合は、病気が原因で食欲が落ちている可能性があるので、受診しましょう。特に目に見える症状がなくても、丸1日以上食べないことが続く場合は、念のため受診する方が安心でしょう。

② お腹が空いていない

食が細いと飼い主が悩んでいる犬でも、体型をみるとそれほど痩せていないことが多いです。おやつや間食などでお腹がいっぱいになっているケースもありますが、食べる量が少なくても、運動量や代謝の関係で、必要としている分のカロリーはきちんと摂れていることも多いです。フードの袋に書いてある給与量は目安で、必ずしもその量を食べないとベストな体重と健康が維持できないわけではありません。わが子に本当に必要な給与量がどれくらいなのかを、かかりつけの先生と相談しながらきちんと把握しておくとよいでしょう。
食が細く体型も痩せ気味で心配、というような場合には、お散歩や一緒に遊ぶ時間を長くするなど、運動量を増やすようにしてみましょう。

③ もともと食べることに対する興味や関心が薄い

特に小型犬に多いようです。食べることよりも遊ぶことなど他の事に気を取られて食べなくなってしまうケースや、飼い主が心配しすぎて食事を強要したりすることで、食べることに対して悪いイメージを持ってしまっているケースもあります。このような場合は、ごはんに集中できるようにケージの中で食事をするようにする、少しでも食べたら褒めて、食べることは楽しいことという雰囲気を作る、中にフードをつめて転がすと少しずつ出てくるようなおもちゃを利用し、狩猟本能を刺激して遊びながら食べられるようにする、などの方法を試してみるとよいでしょう。

④ やっぱり今のフードが好きではなさそう

犬にも好みがあるので、おいしいと思うごはんとそうではないごはんがあるのは仕方ありません。素材もかたさもいろいろなタイプのフードが販売されているので、好みのものを探してあげましょう。
犬は味覚よりも嗅覚が発達しているので、好みで優先されるのは味よりも香りと言われています。犬は一般的に、肉やレバーなどの内臓肉の香り、果物やさつまいもなどの甘い香りを好むと言われているので、そのような原料を多く含むフードを選んだり、トッピングとして利用してみるとよいでしょう。食事の前に電子レンジなどで軽く温め、香りを立たせるとよい場合もあります。
いつも初めは喜んで食べるのにだんだん食べなくなってきてしまう、という場合は、開封後の酸化による香りや風味の変化が影響している可能性もあります。フードはなるべく小さい袋で購入し、小分けにして冷暗所で保存して開封後の酸化を防ぐようにしましょう。

切り替えの際の注意点は?

フードを切り替えるとき、急に初めてのフードに切り替えてしまうと、香りや味の違いに対する不安から食べなくなってしまったり、食材の変化に消化機能が対応できずに下痢をしたりしてしまうことがあります。いきなりすべて新しいフードに替えるのではなく、今まで食べていたフードに少しずつ混ぜる形で慣れさせていくようにしましょう。通常は、徐々に新しいフードの量を増やしていって1週間程度ですべて切り替えるようなペースで大丈夫ですが、変化に敏感な子やお腹を壊しやすい子の場合はもう少し時間をかけて様子を見ながら少しずつ切り替えていくとよいでしょう。

まとめ

犬も人も、食べたもので身体がつくられます。飼い主さんがどのようなフードを選ぶかが、愛犬の健康に大きく関わってきます。ペットフードに関する情報は世の中にあふれていますが、正しい知識に基づいて、わが子が毎日を元気に楽しく過ごせるようなごはんを選んでいただければと思います。

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監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。