「愛犬の目がなんだか白くなってきた気がする…。」「最近、物にぶつかるようになった…。」そんな症状が見られ始めたら、「白内障」の初期症状かもしれません。本記事では白内障の症状や治療法について解説します。また、少しでも進行を遅らせるためにできることもご紹介します!

犬の白内障とは?どんな病気?

眠そうなイングリッシュ・セッター

目の中でレンズの役割を果たしている構造物を、水晶体と言います。この水晶体が、何らかの原因で混濁した状態が「白内障」です。この混濁は不可逆的なため、一度白くなった目は、元には戻りません。混濁の範囲が広がってくると、視覚に影響が出てきて、やがては目が見えない状態になります。遺伝や加齢が原因の場合、混濁は数ヶ月~数年かけて進行します。

症状について|4つのステージ

白内障は、混濁の範囲により初発白内障~過熟白内障と4つのステージに分けられます。

①初発白内障:
白濁は水晶体のふちにある状態。
視覚への影響もほとんどないため、飼い主が見ても気付きにくいです。

②未熟白内障:
白濁が水晶体の中に見え始めてくる状態。
視界がぼやける、かすむなどの視覚障害が現れ始めます。

③成熟白内障:
白濁が水晶体全体に及んでいる状態(瞳孔の部分が真っ白な状態)。
視力の低下が顕著に出てきます。

④過熟白内障:
白内障の最終段階。
失明する一歩手前の状態です。水晶体が硬くなる、炎症を起こす、脱臼するなどの症状も現れ始めます。

初期症状は?

ビーグル

初期の段階では、日常生活あるいは動物病院での通常の診察では、白くなっていることに気が付きません。視覚への影響もほとんどありません。ただし、白内障の原因が遺伝性で、目が見た映像を映し出す役割をする網膜に異常がある場合は、この段階あるいはもっと前から、夜になると見えづらくなる症状(夜盲症)が出ることがあります。夕方あるいは明け方の、電気をつける前の薄暗い部屋だと、動きたがらない、物にぶつかる、などの症状がある場合は、白内障が始まるサインかもしれません。

症状が進行すると…?

白内障が進行すると、混濁は水晶体全体に広がり、視覚に影響が出ます。見た目にもわかるくらい、目が白くなってきます。また水晶体自体も委縮したり、硬くなる変化が現れるため、目の構造自体が崩れてくることがあります。

気を付けなければならないのは、白内障に「ぶどう膜炎」を併発している場合です。炎症の程度は、白内障のステージが進むと重度になる傾向があり、痛みを伴うようになります。場合によっては緊急的な治療が必要となる、「緑内障」に移行することがあります。白目の赤み(充血)や目をつぶりがちなど、痛みのサインが出ている場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

白内障のトイ・プードル(眼が白く濁っている)
▲白内障のトイ・プードル(眼が白く濁っている)

原因は?

犬では、白内障の多くは年齢によるもの、あるいは遺伝によるものです。ただし、これ以外にもさまざまな原因があり、外傷や薬剤、糖尿病などの全身疾患に併発して起こることもあります。原因が多岐にわたるため、どの年齢や品種にも起こる可能性がありますが、アニコムの「家庭どうぶつ白書2020」によると、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、柴、シー・ズー、ゴールデン・レトリーバーなどの犬種が白内障にかかりやすいといわれています。

もしなってしまったら、どんな検査をするの?

診察されるビーグル犬

白内障が疑われる場合、目の内部を覗く検査を行い、混濁の具合やどのステージにあるのかを確認します。特に高齢で混濁がゆっくり進行する場合は、同じように水晶体が混濁する「核硬化症」との鑑別が必要になります。核硬化症は、加齢により水晶体が硬くなることで光を通しづらくなり、見た目が濁っているようになる病気です。けれども、白内障と違って生理的な変化で、視力に影響を及ぼさないため、治療は必要ありません。

急に目が白くなった場合は、糖尿病など全身性の病気が原因でないことを確認するために、血液検査をしてもらうことをお勧めします。

なお、目の内部を覗くには、専門的な機器が必要になるため、動物病院によっては検査ができないこともあります。まずはかかりつけの動物病院に、白内障が心配なことを相談してみると良いでしょう。

治療法や予防法を含め自宅でできるケアについて

横たわるマルチーズ

治療法や予防法、自宅でできるケアについてご紹介します。

治療法は?

白内障は、不可逆的な変化です。そのため、目の混濁を取り、再び見えるようにするには、外科的な処置(混濁した水晶体を吸引し、人工レンズを挿入する処置)をするしかありません。ただし、網膜にも異常がある場合は、神経に異常を伴っているため、混濁を取り除いても視力が回復することはありません。手術を望む場合は、まずこの網膜の異常の有無を確認する検査を行う必要があります。ただし、この検査も、そして目の手術自体も、特殊な機械や装置を必要とするため、専門の病院で行われることが多いです。また検査も手術も全身麻酔が必要になるため、老齢の場合は、リスクが高くなることは否めません。

■10歳以下の場合は?

白内障は老齢性疾患の代表的なものの一つではありますが、若年性白内障と言われる、10歳以下で発症する場合もあります。老齢性の場合は進行もゆっくりなので、外科的な治療と内科的な治療どちらを選択するか、よく考えて決める時間がありますが、若年性白内障の場合、進行は急速に進んでいきます。網膜の異常が出てしまうと手術による改善が期待できなくなるので、手術までの判断は時間勝負となります。手術は眼科を専門とする病院でしかできないことも多いので、日頃からそういった病院が通院できる範囲にあるのか調べたり、かかりつけに相談してみても良いでしょう。

その他できることは? 予防法はある?

ソファに横たわるシェルティ

外科的な処置を望まないのであれば、混濁の進行を遅くするために、点眼やサプリメントの服用が勧められます。人間では、ビタミンCやビタミンE、アントシアニン(ブルーベリーなどに多く含まれます)や、ルテイン(ホウレンソウなどに多く含まれます)など抗酸化作用のある食べ物を摂取することが勧められます。けれども犬がそれらを食品で摂取しようとすると、栄養バランスが偏ったり大量に食べなければいけなかったりするため、サプリメントでの摂取をお勧めします。なお、これらは混濁の初期に効果があるため、予防的な服用としてもお勧めです。

■おうちでできること、ケアは?

そのほか、おうちの方にしていただきたいケアとしては、室内の見直しです。白内障になると視力が落ちてくるため、家の中がつまずいたりぶつかったりしないような環境か、確認してみてください。また、家具の配置はなるべく変えないようにしてあげるなどの工夫もしましょう。家の中だけでなく、散歩時も側溝など踏み外しやすい場所は避けるように気を付けてあげてください。

まとめ

撫でられるダックス

白内障は、年月をかけてゆっくり進行する場合が多く、完治には手術が必要になります。ただし、点眼やサプリメントで進行を遅らせることはできます。また、犬はもともと生活の多くを視覚ではなく、嗅覚や聴覚などに頼って暮らしているため、おうちでのケアも合わせれば、病気を抱えていても快適な暮らしを送ることができます。まずは、白内障が気になったら、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

【関連リンク】
白内障 <犬>|みんなのどうぶつ病気大百科

監修獣医師

箱崎加奈子

箱崎加奈子

アニマルクリニックまりも病院長。ピリカメディカルグループ企画開発部執行役員。(一社)女性獣医師ネットワーク代表理事。 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、的確なアドバイスをしたいという思いから、トリマーとして働きながら獣医師、ドッグトレーナーに。病気の予防、未病ケアに力を入れ、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護師、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。