猫の排便回数や便の状態などから、日々の健康チェックをしている方も多いと思いますが、血便が出たとなったら、驚きますよね。
突然の事態でもあわてず対応できるように、今回は猫の血便が出たときの対処法をご紹介します。
猫の血便の度合いと危険度は?
ひとくちに血便といっても、出血箇所により、色や血液の混ざり具合などが違います。いくつかご紹介しましょう。
便が黒くなっている
胃や十二指腸などの上部消化管や小腸に出血が見られる場合、消化管内を通過する過程で血液が消化され、黒いタール状の便となって出る場合があります。
このような黒い血便を「メレナ」と呼びます。
軽度の胃潰瘍や胃腸炎によるメレナの場合は、適切な内科治療を受けることで、比較的順調に回復することが多いでしょう。一方で、異物や腫瘍などで消化管に穴があいてしまったこと(消化管穿孔)が原因の場合には、全身状態不良につながるケースが多く、発見の時期に関わらず死亡してしまうこともあり、危険度が高いと言えます。
便に鮮血が混じっている
便に鮮血が混じっている場合は、大腸の前半部分で出血している可能性があります。一見して血液とわかるため、比較的気づきやすいかもしれません。
とくに免疫力の低い子猫の場合、消化管内の寄生虫が原因となることが多く、下痢や嘔吐といった症状を伴うこともありますが、早期に糞便検査等を受け、駆虫薬を与えることで、比較的、順調に回復するでしょう。
また飲水量の少ない猫の場合、水分量が低下して硬くなった便が、消化管を傷つけてしまい血便となることもあります。こうした通常の便秘であれば、排便を促す処置や投薬により改善することがほとんどですが、腫瘍に関連する便秘の場合には、改善せず死亡してしまうこともあります。
便の表面に血が付いている
便に混ざっているというより表面に血液が付着しているような場合、より排泄出口に近い、大腸の後半部分(直腸)や肛門付近からの出血が考えられます。
お尻から出血が止まらない?
一見、お尻から出血しているように見えても、血便ではなく「血尿」であることもあります。
とくに、オスで多い尿道閉塞を発症したときは、うんちをきばるような姿勢でポタポタと真っ赤な血液が出るため、ずっと出血しているようにも見えます(なお、この状況は致死的です。すぐに動物病院へ連れて行ってください)。
また、肛門嚢(腺)が炎症することで起きる「肛門嚢破裂」や肛門周囲の腫瘍でも、お尻からの出血に見えることがあります。
【関連リンク】
肛門嚢(腺)炎 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
猫の血便の原因
前述の通り、血便にもさまざまなタイプがありますが、そもそもなぜ血便が出るのでしょう。いくつか、考えられる原因をあげてみましょう。
ストレスによるもの
環境の変化が苦手な猫はストレスにより胃腸が荒れ、血便が出ることがあります。最近引っ越しをした、近隣で工事が始まった、他の動物が増えたなど、心当たりがある場合、ストレスが原因となっている可能性があります。
ストレスケアをすると同時に、動物病院でしっかりと診察を受けることも忘れずに。
病気によるもの
消化器管の炎症や腫瘍など、症状のひとつとして血便があげられるさまざまな病気があります。くわしくは後述しますが、血便以外の体調の変化や症状がないか、しっかりチェックしてください。
寄生虫によるもの
寄生虫が原因で起こる血便もあります。そのひとつ、「猫鉤虫(ねここうちゅう」と呼ばれる1~2cmの白い糸状の寄生虫が小腸に寄生することで起こる「猫鉤虫症」では、タール状の黒い血便が見られることがあります。
異物誤飲によるもの
何かしらの異物を飲み込み胃腸が傷ついたことで出血し、血便となって出る場合があります。
また、玉ねぎなど猫が食べてはいけない食品や薬物、観葉植物などを誤飲することで起きる中毒症状も原因のひとつと考えられます。
猫が誤飲した可能性はないか、お家のなかの疑わしい箇所をチェックしてみましょう。
【関連リンク】
異物を誤飲したときの対処について <お家の中にあるもの編> <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
植物・異物・薬品による中毒 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
猫の血便で考えられる病気
先の通り、血便の原因は病気から誤飲まで、さまざまです。この章ではなかでも、血便を引き起こす可能性のある疾病をピックアップします。
胃腸炎
胃腸炎にはウイルスや細菌感染によるもの、薬物・異物によるもの、アレルギー性のものなど、さまざまなタイプがあります。
下痢、嘔吐、脱水、腹痛などの症状が見られ、病状が進行すると、血便が出ることがあります。
グルーミングの際に飲み込んだ被毛が詰まって起こる「毛球症」がきっかけになる場合もあります。
腫瘍
高齢の猫では、リンパ腫など消化管にできた腫瘍が原因で血便を起こすことがあります。
症状としては、腫瘍の場所や進行具合で異なりますが、長期的な軟便や食欲低下、体重減少も重なることが多いです。
腫瘍は発見が遅れがちですが、日々の様子で変化があれば通院しましょう。
【関連リンク】
リンパ腫 <猫> |みんなのどうぶつ病気大百科
トキソプラズマ症
トキソプラズマ原虫への感染が原因で起こる寄生虫症の一種です。感染している猫の糞便や、感染した豚などの生肉や生焼けの肉を介して感染します。
成猫では、大部分は症状が出ない「不顕性(ふけんせい)感染」ですが、生まれて間もない子猫や免疫力が低下した猫の場合には、発熱や、呼吸が早くなるなどの呼吸器症状のほか、食欲不振や下痢、血便などの消化器症状が現れ、重篤となることが多いです。人間にも感染する可能性のある病気なので注意が必要です。
【関連リンク】
人獣共通感染症(ズーノーシス)/トキソプラズマ |みんなのどうぶつ病気大百科
猫パルボウイルス感染症
「猫汎白血球減少症」とも呼ばれ、猫パルボウイルスに感染することで起こる病気です。感染力が強く、このウイルスに感染している猫の糞便などに含まれる猫パルボウイルスを口から摂取することで感染します。
感染すると、数日の潜伏期間の後、急激な白血球減少がみられ、血便や下痢のほか、発熱や食欲不振、嘔吐、脱水などの症状を起こし、重篤になると死に至る場合もあります。
とくに、子猫が発症した場合に重篤となることが多いので、注意が必要です。
【関連リンク】
猫汎白血球減少症〈猫伝染性腸炎) <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
猫の血便が出たらどうすればいい?
便に血が混じるというのは、何らかの健康トラブルが起きています。まず、何よりきちんと診察を受けることが大切です。
病院で原因を調べてもらう
先に説明したとおり、血便を引き起こす原因は多岐にわたりますし、緊急性が高いものも多いです。一見、元気に見えたとしても、必ず病院で診察を受けましょう。
血便は捨てないようにする
出血箇所や原因を探るため、血便の状態を実際に見ることは、獣医師が診察を行う上で大切なことです。血便は捨てずに、写真を撮っておいたり、動物病院に持参したりするようにしましょう。
血便が続く場合
重複しますが、血便が出るということは、何らかの健康トラブルが起きている証拠です。血便が続く場合は、重篤な可能性があるので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
まとめ
猫の健康のことを考えると、血便は軽く考えるべき症状ではありません。
同じような色味の血便であっても、軽度のこともあれば血便が出る段階では病状が進行していて、死につながる可能性のある病気が潜んでいることも考えられます。日頃から便の色や硬さ、頻度などをしっかりチェックし、変わったことがあれば、早急に動物病院に相談し、治療を行ってあげてください。
病気をする前に…
病気やケガは、いつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまったり、ケガをしてしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

【関連リンク】
肛門嚢(腺)炎 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
異物を誤飲したときの対処について <お家の中にあるもの編> <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
植物・異物・薬品による中毒 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
リンパ腫 <猫> |みんなのどうぶつ病気大百科
人獣共通感染症(ズーノーシス)/トキソプラズマ|みんなのどうぶつ病気大百科
猫汎白血球減少症〈猫伝染性腸炎) <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
ウンチをチェックしよう|みんなのどうぶつ病気大百科