子犬と戯れる子猫

よく猫は犬よりお金がかからない、といわれます。はたして本当のところはどうなのでしょうか。本当だとしたらどういった部分で差が出ているのか、犬、猫それぞれにかかる費用について確認してみましょう。

猫と犬、年間支出費用調査では犬は猫の2倍!

子犬と子猫
それでは、さっそく年間の支出から猫と犬、それぞれにかかる費用を比較してみましょう。

犬は約30万円、猫は約16万円

2019年のアニコム損害保険株式会社のペットにかける年間支出調査(以下:アニコムの年間支出調査)によると、犬の飼育にかかる年間費用は306,801円。猫は158,680円となっています。犬は約30万円、猫は約16万円。なんと犬の飼育費は猫の約2倍でした。ここまで差があるとは驚きですね。

では、その差はどこで生まれているのでしょうか。アニコムの年間支出調査の項目別で見ると、犬の「ケガや病気の治療費」は44,869円。一方、猫は23,919円で、犬の治療費は猫の約2倍となっていました。その他に大きく差があった項目は「しつけ・トレーニング料」、「シャンプー・カット・トリミング料」、「遊べる施設」、「洋服」。いずれも猫はほとんど費用がかかっていないのですが、犬は数千~数万円かかっています。確かに室内飼いの猫ではしつけ・トレーニングをすることもあまりなく、警戒心が強い猫の性格上、外に遊びに連れ出すことも少ないですね。猫と犬の飼い方の違いで費用に大きく差がついているようです。

去勢・避妊手術の費用は犬と猫、どっちが高い?

計画外の妊娠を避けるだけでなく、発情に伴うストレスや生殖器関連の病気を減らすために行う去勢・避妊手術。多くが若いうちに行われ、初めて経験する手術となるでしょう。その手術にも犬と猫で違いがあるのか見てみましょう。

犬・猫の去勢手術費用

動物病院によって費用はまちまちですが、平成27年度の日本獣医師会の調査では、犬の去勢手術で最も多い価格帯は15,000~20,000円未満でした。一方の猫の場合は、10,000~15,000円未満。犬の方が5000円ほど高い傾向となっています。

犬・猫の避妊手術費用

避妊手術も去勢手術の場合と同じく動物病院によって費用は異なります。平成27年度の日本獣医師会の調査では、それぞれの一番多い価格帯は犬の避妊手術(卵巣子宮切除)が25,000~30,000円未満、猫の避妊手術(卵巣子宮切除)が20,000~25,000円未満でした。こちらも去勢手術と同じく犬の方が5000円ほど高くなっています。

ワクチン費用は犬と猫、どっちが高い?

診察されている猫
大きな病気をすることなく、健康に長生きしてほしいことは犬も猫も変わりません。そのためにはワクチンで感染症を防ぐ予防も大切です。アニコムの年間支出調査では犬の「ワクチン・健康診断等の予防費」は27,653円、猫は12,814円。その費用も犬は猫の2倍以上となりました。

犬の予防措置にかかる費用(ワクチン接種、寄生虫予防の内容と費用)

犬の場合、日本では法律で狂犬病の予防接種が義務付けられています。具体的にいうと、生後91日以上の犬の飼い主さんは毎年1回、狂犬病の予防注射を受け、注射済み票の交付を受けなければならないとされています。狂犬病の予防接種の費用は2,000~5,000円くらいです。

狂犬病以外のワクチンは飼い主さんの任意で接種します。日本でできる犬の混合ワクチンは2種から9種までありますが、単に多い方を打てばより良いということにはなりません。住んでいる地域での病気の発生状況や生活環境に合わせて判断することになります。混合ワクチンの費用は5,000~10,000円ほどです。子犬の時は年に2~3回行い、その後は定期的に接種を続けて免疫を維持します。3~4年に1回ともいわれていますが、次の接種時期は獣医師と相談して決めていきます。

また、犬ではフィラリア予防も重要です。フィラリアは蚊に刺されることで寄生虫の幼虫に感染し、その幼虫が犬の体内で成長してさまざまな症状を起こす病気。大量の虫が心臓に住みついて死に至る危険もあります。フィラリアの予防方法は、月に一度予防薬を投与することです。

まず動物病院で検査を行ってからお薬を処方してもらい、予防期間の間、欠かさず投薬を続けます。予防期間は蚊の活動期間に合わせて地域によって異なります。費用はお薬の種類や投薬を続ける期間によって変わってきます。

ノミやマダニに対する予防も忘れてはなりません。ノミやマダニは犬の体の表面に寄生して吸血する寄生虫です。ノミやマダニに吸血されると、皮膚炎やアレルギーの原因となることがあります。マダニは近年人への感染が問題となっている重症熱性血小板減少症(SFTS)などの人獣共通感染症を媒介することも知られています。寄生を防ぐには、1~数ヶ月に一度予防薬を投与します。予防薬には皮膚につけるスポットオンタイプや、飲み薬があります。予防期間は気温に合わせてなど地域によって異なります。費用もお薬の種類や予防期間によって変わります。

猫の予防措置にかかる費用(ワクチン接種、寄生虫予防の内容と費用)

猫には法律で義務付けられているワクチンはありません。だからといってワクチンを打たなくても良いということではありません。日本で受けられる猫の混合ワクチンは3種から7種があります。代表的なものは3種ワクチン(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症)で、すべての猫に接種が推奨されています。3種混合ワクチンの費用は3,000~5,000円くらいです。ワクチンは一度だけでなく、定期的に継続して接種することで効果を維持できます。接種の間隔は一般的には1年に1回とされていますが、飼育環境によっては3年に1回程度の接種になることもありますので獣医師とよく相談をしましょう。

フィラリアは犬の病気として知られていますが、猫もかかることがあります。犬と同様に蚊によって感染し、心臓や肺の血管に寄生します。死に至ることもあり、診断が難しい病気のため、予防が大切です。犬と同様に動物病院で検査をしてからお薬を出してもらい、定期的に投薬します。費用はお薬の種類や使用する期間によって異なります。

猫でもノミやマダニの予防は大切です。多くの猫は散歩に行かないので寄生のリスクはないと思われがちですが、人の衣服などについて外から家の中に持ち込まれたり、預け先などで外出した際に寄生されることがあります。予防法は犬と同様で、費用もお薬の種類や予防期間によって変わります。

もしものためのペット保険

予防だけでも何かと必要な費用がありますが、病気やケガで通院や手術、入院となった場合、一気に費用負担が大きくなります。高額な動物の治療費のためには健康なうちから備えることが大切です。そんなとき、心強いのはやはりペット保険でしょう。

猫が病気をしたときにかかる治療費

ここまでで、猫は犬に比べて費用負担が少ないことがわかりました。ケガや病気の治療費も犬が上回っていましたが、決して猫の治療費が安いわけではありません。病気やケガによって治療費は異なりますが、アニコムの保険金請求理由で多いのは「慢性腎臓病」。その場合の1頭あたりの年間診療費の平均値は272,598円でした。2位は「嘔吐/下痢/血便」で37,601円、3位は「膀胱炎」で45,741円と続きます。

猫は腎臓の病気にかかりやすく、高齢になるにつれて病気にかかるリスクは高くなります。費用は若いうちから準備しておきたいものです。もちろん自分で貯金をすることも一つの方法ですが、貯金はついつい他のことで使ってしまいがちです。ペット保険なら確実に猫のために支出していることになりますし、今日明日に何かあったときにも頼れるという安心感もあります。

【関連サイト】
家庭どうぶつ白書2019p17

まとめ

猫は犬に比べてお金がかからないことがわかりました。ただし、油断は禁物です。かわいい猫のためにおやつを厳選したり、おもちゃを増やしたりしていると「貢ぎ物費」が青天井に。現にアニコムの年間支出調査では、猫の洋服にかける費用が1年前と比べて1.8倍になっています。防災用品の支出も猫ではおよそ2.2倍に増えており、今後費用の差は縮まっていくかもしれません。犬でも猫でも高額な医療費のことも考えて準備をしましょう。

【関連リンク】
ペットにかける年間支出調査 2019|アニコム損保HP
混合ワクチン(1)<犬>|みんなのどうぶつ大百科
混合ワクチン(2)<犬>|みんなのどうぶつ大百科
狂犬病について|みんなのどうぶつ大百科
ワンちゃんのフィラリア予防|みんなのどうぶつ大百科
ワンちゃんのノミ・マダニ予防について|みんなのどうぶつ大百科
ネコちゃんの混合ワクチンについて|みんなのどうぶつ大百科
ネコちゃんのフィラリア予防|みんなのどうぶつ大百科
ネコちゃんのノミ・マダニ予防について|みんなのどうぶつ大百科

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監修獣医師

別府雅彦

別府雅彦

北海道大学獣医学部を2009年に卒業。学生時代は野生動物学教室でクマのフェロモンに関する研究を行う。卒業後は神奈川県の地域中核病院に勤務。脊椎外科や整形外科を中心に、ワンちゃんとネコちゃんの医療に従事。アメリカ獣医内科学会など、学会での発表も行う。信念はどうぶつと飼い主さんが主人公の物語をお手伝いすること。信念を日本に、世界に広げるべく活動中。