猫の混合ワクチンについて

ワクチンって何?

どうぶつは細菌やウイルスなどの病原体に感染すると、その病原体を退治するための免疫が体の中にできて、同じ感染症にかかりにくくなったり、かかっても軽症で済むようになります。ワクチンはこの免疫の仕組みを利用し、病原体を無毒化または弱毒化したものを接種することで、人工的に免疫を作り出すというものです。
また、ワクチンには個々の免疫のほかに、みんなが予防接種をすることで集団の中で感染症が広がらないようにする集団免疫という側面もあります。
日本では、 3 種から 7 種(猫白血病等は単体ワクチンもあり)の感染症を予防できる混合ワクチンが市販されています。3 種混合ワクチンと呼ばれるものが代表的で、「猫伝染性鼻気管炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)」を予防します。大切な猫を感染症から守るため、ワクチン接種はとても重要です。

 

混合ワクチンの接種時期について

子猫は、母乳(初乳)中に含まれる母猫からの免疫(移行抗体)により、様々な病気から守られていますが、この移行抗体は生後数ヶ月で消失するといわれています(消失時期には個体差があります)。

したがって、子猫自身に免疫力をつける必要がありますが、ワクチン接種を行う際、移行抗体が体に残っている場合には、ワクチンの効果が不十分となってしまいます。十分な効果を得るためには、移行抗体が消失する時期に接種する必要がありますが、個体差が大きいため、初年度のワクチンは 2 回~3 回に分けて追加接種を行います。また、次年度以降も、継続的な追加接種により免疫を維持できることが知られています。

 

ワクチン接種時期の判断は、猫の健康状態や体質などが大きく関係します。健康面などから接種を迷う場合には、免疫力を調べる検査(抗体価検査)を行い、接種の必要性を検討することもあります。
 

ワクチン接種時の注意点

・健康状態が良好なときに接種を受けましょう。
・治療中の病気や服用中の薬などがある場合は、事前にかかりつけの先生によく相談をしましょう。
・接種後、副反応※がでる場合があります。接種後の様子をよく観察できるよう、飼い主の時間的余裕がある日に接種を行う必要があります。副反応は接種後、 24 時間以内に症状が現れることが多いとされます。
・接種後、異常を発見した場合は早急に動物病院へ相談をしましょう。
・接種後、 1 週間程度は安静にしてストレスを避け、様子を注意深く見てあげましょう。
・ワクチン接種後は興奮させず、運動も避けるようにしてください。また接種後 1 週間ほどはシャンプーをしないようにしましょう。
・ワクチンの種類にもよりますが、 接種後、免疫が作られるまでには 2 週間~ 4 週間かかる場合があります。


※ワクチン副反応・・・症状として次のような症状があります。
顔面の腫脹
皮膚の痒み、蕁麻疹
嘔吐、下痢
発熱、元気消失
呼吸困難、虚脱
注射部位に肉腫の発生(発生率は 10 万分の 1 から 100 万分の 1 程度と推測されています)


なお、即時型アレルギー反応のひとつにアナフィラキシーショックがあります。反応は非常に重度であり、体内に抗原物質が取りこまれてから数分~数十分以内に蕁麻疹や呼吸困難、チアノーゼ、嘔吐、血液低下などがみられて、ショック状態に陥ることもあります。命にかかわるケースもあるため、迅速な処置が必要です。早急に動物病院さんに診てもらいましょう。
 
 

猫の混合ワクチンで予防できる感染症

伝染性鼻気管炎(FVR)
猫ヘルペスウイルスにより発症する病気で、猫の「風邪」ともいわれています。症状としては発熱、鼻水、くしゃみ、目ヤニ、食欲不振などがみられ、症状が慢性化する場合もあります。

汎白血球減少症(FPLV)
猫パルボウイルスにより発症する病気で、感染力が強く、子猫が感染し発症した場合に重篤となることが多い病気です。症状としては白血球の減少、食欲不振、発熱、激しい嘔吐、下痢などがみられ、重篤になると死に至る場合もあります。

カリシウイルス感染症(FCV)
くしゃみ、鼻水、咳、発熱といった猫伝染性鼻気管炎とよく似た症状がみられます。さらに症状が進むと、舌や口の周辺に潰瘍ができます。

白血病ウイルス感染症(FeLV)
白血病やリンパ腫など血液系の腫瘍を発生させることで 知られています。また、免疫力を低下させるため、貧血や腎炎、口内炎などさまざまな症状を引き起こし、重篤となることが多い病気です。

■クラミジア感染症

クラミジア感染症は、クラミジア菌の感染により発症する病気で、主な症状は持続性の結膜炎です。その他の症状として、くしゃみ、鼻水、咳などの症状がみられることもあります。

 

※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。

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みなさんからのコメント

Comment
むぎちゃん
2025-03-27 21:45:17
元野良猫を、今は完全室内飼いしています。
今度、猫白血病の検査を受けようと思いますが、かかりつけの動物病院で受けられるのは猫風邪と猫白血病の4種混合ワクチンです。
もし陽性だった場合、4種混合ワクチンを接種しても問題ないでしょうか?
アニコム獣医師
2025-03-31 09:46:34
>むぎちゃん様
ワクチネーションガイドラインによると、猫白血病ウィルスに感染していた場合猫白血病ウィルスワクチンの接種は推奨されません。結果確認後、かかりつけの先生と相談しワクチン計画を立てることをお勧めいたします。
むぎちゃん
2025-04-07 15:16:36
ご回答、ありがとうございます。
陽性の猫には「有効ではない」という記述はいくつか見ましたが、やはり「推奨されません」なのですね。
かかりつけの先生がどのように判断されるか分からないので、少し戸惑っています。
先日、一番若い4歳半の子を白血病で亡くしたので、同居猫の検査をする予定でいます。
猫たちのために勇気をだして先生とちゃんと話してみます。
ありがとうございました。
2025-03-06 11:40:15
4歳の兄弟猫を飼っており、この2匹は完全室内飼いですが、私自身は兄弟猫のお母さんにあたる地域猫のお世話もしています。3匹ともエイズ陽性です。
兄弟猫たちは接種後に下痢、発熱の症状が出たため、アナフィラキシーショックに繋がる可能性も考えて来年から接種は中断と獣医さんから言われています。ワクチンを打たないことのリスクは非常に高いのでしょうか。また、飼い主としてどんなことを気を付けたら良いでしょうか。
アニコム獣医師
2025-03-10 14:29:19
>桂様
ワクチン未接種のリスクは、ねこちゃんの生活環境により異なるため一概には言えませんが、ワクチン予防できるウィルスの中には、感染力が強いものや、重症化するものもありますので、リスクは伴うと考えられます。ただし体質などにより接種が困難な場合は、清潔な環境を保ち、他の動物との接触を避け、定期的な健康チェックやストレスを減らす工夫が大切です。主治医と相談しながら、最善のケアを心がけましょう。

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