一般的に下痢とは、便の水分量がいつもより増した状態になることをいいます。消化不良など、消化管に問題があることで急性の下痢になる場合や、なんらかの病気が原因で下痢をすることがあります。
下痢の「原因と対策」をあらかじめ知っておくと、いざというときにも安心ですよ。
猫の下痢の種類
ひと言で「下痢」と言っても、その便の状態や症状には違いがあります。まずここでは、下痢の種類について触れます。
水分の多い下痢(水様便)
一般的に、便に含まれている水分量は約70%といわれ、その水分量が80%以上になった状態が「下痢」と呼ばれます。水分量が90%以上になると、水のようないわゆる「水様便」といわれる便になります。
水分のやや多い下痢(軟便)
正常な便は、固くコロコロしていますが、「水分のやや多い下痢」というのは、水様便より固いけれども、触ると簡単につぶれたり、持ち上げると便の跡が残るような、いわゆる「軟便」の状態をいいます。
血や粘液が混じる下痢(血便・血様便)
下痢便に赤い血が混じっている場合は、出口である肛門に近い大腸からの出血が疑われます。真っ黒な便が出る場合(黒色便)もあり、これも血便の一種です。胃や小腸で出血したものが黒く変色するため、黒色便になります。
また、ゼリー状の「粘液」が混じる「粘液便」は、主に大腸へのダメージがあるときによく見られます。
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急性の下痢と、慢性の下痢
下痢には、急性と慢性があります。ある日突然下痢になる「急性」では、1~2週間以内に収束します。一方で、「慢性」の下痢は、一般的な治療を行っても数週間にわたって続きます。
考えられる猫の下痢の原因
では、下痢の原因はどういったことが考えられるでしょうか。主な原因について紹介します。
感染による下痢
ウイルスなどの微生物の感染によって引き起こされる下痢です。
- ウイルス性
代表的なウイルス性感染症は、パルボウイルスを原因とする「猫汎白血球減少症」や、コロナウイルスを原因とする「猫伝染性腹膜炎」などです。前者は、3種混合ワクチンを接種することで、後者は完全室内飼育を心がけることで一定程度予防することができます。 - 細菌性
細菌を原因とする代表的な感染症は、カンピロバクター感染症が挙げられます。カンピロバクター属菌がおなかの中にいても、多くの猫は症状を示しません。ただ、免疫力の低い時期(子猫のときなど)や、体調が悪くなった時に、下痢や嘔吐を発症します。人でもよく食中毒になるニュースが流れますね。 - 寄生虫性
コクシジウムや、線虫などといった寄生虫によっても下痢を起こします。外で生活していた子猫などでは、感染していることも少なくありません。症状がなくても、一度は病院で調べてもらいましょう。
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食事による下痢
食べた食事と関連のある下痢です。
- 消化吸収不良
消化吸収不良は、消化管の働きが悪い時に起こりやすく、主に食べ過ぎや、ごはんの種類が急に変わったりすることなどで見られることが多いです。 - 食物アレルギー
様々な食物アレルギーが原因で発生する場合もあります。原因となるアレルゲンを含まない食べ物を選ぶ必要があります。
異物による下痢
薬物や殺虫剤等の中毒物質や、異物を誤飲して起こる下痢です。いずれも、きちんと片づけておくことで予防ができます。十分注意しましょう。
また、異物とは言わないまでも、抗生剤など、通常処方される薬でも下痢を起こすことがあります。そんな時は、すぐに獣医師に相談しましょう。
病気による下痢
感染症以外の病気では、内臓疾患が原因で下痢が起こることがあり、この場合、膵臓や肝臓、内分泌の病気や、消化器の病気などが考えられます。
また、腸管の悪性腫瘍が原因で、慢性的に下痢をするケースもあります。
ストレスによる下痢
引越しなどで生活環境が大きく変わることや、過密な飼育、長時間の移動といった、いわゆるストレスによる下痢も珍しくありません。
猫によって個体差がありますが、部屋の模様替えや、家族が増えたり、新たな飼育猫が加わったりすることでストレスを感じる場合があります。環境に慣れることでおさまることが多いですが、長く続く場合は、ストレスだけが原因でない可能性も考え、獣医さんに相談しましょう。
猫が下痢になった場合の対策
猫が下痢をしてしまったら、飼い主としてどうすればよいのでしょうか。ここでは、下痢になったときの対策について触れます。
猫や便の様子を観察する
猫の様子と、便の状態をよく観察しましょう。猫に元気はあるか、食欲はあるか、ないのであれば、いつもの何割くらいか、ほかに症状(嘔吐など)はないかなどをチェックしてください。また、便は、色、形、回数、やわらかさ、便と一緒に出ているものはないか、いつから下痢をし始めているのかなどをチェックしておくと良いでしょう。
できれば、便はすぐに捨てず、なるべく新しい便を病院に持っていくか、携帯電話で写真を撮っておくと診断の手助けになります。
血便や嘔吐など病院に行くべき症状は?
「いつもより少しだけ柔らかいくらいで、本人(猫?)はピンピンしている!」くらいであれば、それほど心配いらないかもしれませんが、基本的には、獣医師の判断に任せることが無難です。とくに、以下の症状がある場合には、できるだけ早めに受診するようにしてください。
- 元気がなくぐったりしている
- 食欲がほとんどない、水も飲まない
- 血便/黒色便、粘液便、激しい水様便が出ている
- 下痢が激しく、脱水気味
- 幼齢である
- 嘔吐も併発している
- 長期間下痢が続いている
- 飲水量が異常に増えている
ごはんの量や頻度、種類を変える
消化管の状態を良くも悪くもするのが、食事です。下痢を起こした時は、消化しやすいようにフードを少しふやかして与えたり、無理のない範囲で量を減らすなどして、腸を休ませてあげることも大事です(子猫の場合は、量を減らすと体調が悪化することもあります。必ず獣医師に相談してください)。
また、消化器に優しい療法食に変えるのもひとつの手です。ただ、急にフードの種類を変えると、食べなくなったり、余計に下痢がひどくなることもあります。獣医師にも相談し、今までのフードと混ぜながら、ゆっくりと切り替えていくのがコツです。
人間用の下痢止め市販薬は、NG!
市販されている人間用の下痢止めなどの市販薬を猫に飲ませることは、絶対にやめてください。下痢止めに限らず、人間用の薬は人間の体重に合わせて調合してあるため、猫には過剰投与です。また、人間と猫では代謝のメカニズムも異なるため、個人での判断は避け、動物病院で処方された薬を正しく投与するようにしましょう。
猫が下痢にならないために
下痢は猫の身体に大きな負担を与えます。かわいい猫が下痢にならないために、まずは急激な環境変化などで余計なストレスを与えないようにしましょう。引越しの際は、何日か新居に連れて行って慣れさせたり、新しい猫を迎えた時は、なるべく部屋を分けたりすることでも対処できます。また、フードも「安さ」で選ばず、その猫にあったものを選ぶように心がけることが重要です。誤飲誤食がないように家を清潔に保ったり、ワクチン接種を定期的に行い、予防してあげることも重要です。
病気やケガをする前に…
病気やケガは、いつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまったり、ケガをしてしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

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