土佐犬は四国犬にルーツを持つ伝統的な犬種です。闘犬の歴史やニュースに取り上げられる事件から、危険で怖いという印象を持つ人も少なくないでしょう。また、「土佐」の名前から純粋な日本犬と思われやすいですが、マスティフなど洋犬の血も混ざっていて、「ジャパニーズ・マスティフ」とも呼ばれています。
今回は土佐犬の歴史や性格のほか、本当に土佐犬は危険な犬なのか、間違えられやすい四国犬との違いなどについても解説していきます。

土佐犬ってどんな犬種?

土佐犬とは、土佐闘犬やジャパニーズ・マスティフとも呼ばれる日本原産の闘犬です。

元々、土佐犬とは現在の四国犬を指す名前でしたが、名前が紛らわしいこと、四国犬が土佐の地域以外にもいたということから変更され、現在では「四国犬」「土佐(闘)犬」と区別されるようになりました。

勘違いされる方も多いですが、国の天然記念物に指定されているのは当時の土佐犬(現在の四国犬)で、土佐(闘)犬ではありません。

歴史

日本では14世紀よりも前から闘犬が行われていた(12~13世紀ごろにはすでに行われていたとも)といわれ、闘犬文化が進むにつれてより大きく、強い闘犬を求めるようになりました。

それまでは、四国犬が闘犬として用いられていましたが、洋犬の血を交配することでより強い犬を作り上げていきました。

現在の土佐犬としてブリーディングされたのは、19世紀の終わりから20世紀初めの頃。
1872年にブルドッグからはじまり、2年毎にマスティフ、ジャーマン・ポインター、さらに1924年にはグレート・デーンが順に交配。その他に、セント・バーナードやブル・テリアも交配され、現在の土佐犬として確立されました。

今日の闘犬

近年に入り、動物愛護の観点から闘犬を禁止する国が増えています。日本では闘犬自体を禁止する法律はありませんが、一部の自治体は条例で闘犬を禁止しています。

2020年時点で、東京都、神奈川県、福井県、石川犬では条例によって「闘犬、闘鶏、闘牛など動物を互いに闘わせてはならない」と定められています。

北海道でも闘犬を取り締まる条例が存在しますが、「土佐犬を除く」とされ、土佐犬による闘犬を行う場合は許可を得て決められたルールに従うよう明記されています。

【参考】
環境省 動物愛護管理行政事務提要(令和2年度版)「3.闘犬等取締条例の概要」

現在、土佐犬の多くは、番犬やペットとして飼われています。

性格は?

土佐犬は、用心深く勇敢な性格です。
従順で愛情深く、信頼関係をしっかり築けた相手には頼れる番犬となってくれるでしょう。

しつけのポイント

闘犬の気質から、きちんと社会化とトレーニングをしておかないと、飼い主がコントロールできなくなり、咬傷事故などが起きる危険性があります。

子犬のうちから人や動物、自転車やバイクなどの動くものを見ても落ち着いていられるように、社会化を徹底的に行う必要があります。
また「お座り」、「待て」、「おいで」の基本的なしつけの他、リードを持つ人の歩くスピードに合わせて歩けるよう、散歩のトレーニングも重要です。

サイズ

体重は男の子が約67㎏、女の子が約60㎏、体高は男の子が60cm以上、女の子が55cm以上で大型犬に分類されます。

▶大型犬一覧はこちら

被毛について

土佐犬は短く硬い被毛をしていて、カラーはレッド、フォーン、アプリコット、ブラック、ブリンドルがあります。

土佐犬は危険?

土佐犬による咬傷事故や事件は日本でも少なくありません。
2023年12月には神奈川県で、小型犬を散歩させていた女性と小型犬に咬みつくという事件がありました。

札幌市、茨城県、水戸市、佐賀県では、咬傷事故防止のための「特定犬制度」の対象として、土佐犬が指定されています。

茨城県と水戸市では、土佐犬の他にも秋田犬、紀州犬、ジャーマン・シェパード、ドーベルマン、グレート・デーン、セント・バーナード、アメリカン・ピット・ブルテリア(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)が指定されています。

佐賀県では、上記に加えアラスカン・マラミュート、マスチフ(マスティフ)が特定犬種に指定されています。

札幌市では、土佐犬を含む16犬種が指定されています。

飼育者は安全に配慮し鍵のかかる犬舎の中での飼育と、特定犬種を飼育していることが訪問者にわかるように表示する必要があるなどの決まりがあります。

しかし、特定犬種だからといって、指定されている全ての犬が咬傷事故を起こしているわけではなく、多くの犬が飼い主と一緒に平穏に生活しています。
反対に、特定犬種に指定されていなくても咬傷事故が起きる場合もあります。

いずれにしても、土佐犬は危険性のある犬種ということをしっかりと理解し、適切な飼育をする必要があるため、初心者が飼うことは難しいといえるでしょう。

【参照】
佐賀県「特定(土佐犬など)の飼い主の方へ」
茨城県「特定犬は、「おり」の中で飼いましょう!

寿命はどれくらい?

アニコムの「家庭どうぶつ白書2021」によると、土佐犬のような大型犬の平均寿命は11.5歳です。

しかし、ここ数年でフードも色々なものが出ていますし、医療も進んでいるので、寿命はあくまでも目安とし、飼育環境や運動など気を使ってあげるといいでしょう。

気を付けたい病気

土佐犬は、大型犬に多く見られる「股関節形成不全」、「肘関節形成不全」、「十字靭帯断裂」、「胃拡張胃捻転」といった病気になりやすいため、気になる点やいつもと違った様子が見られたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。

【参考】
肘関節形成不全|みんなのどうぶつ病気大百科
股関節形成不全|みんなのどうぶつ病気大百科
胃拡張(胃拡張胃捻転)|みんなのどうぶつ病気大百科

土佐犬を家族の一員として迎える方法

土佐犬をぜひ家族の一員に!と思ったら、どこで出会えばいいのでしょうか。主に考えられる方法は3つあります。

ペットショップで探す

ペットショップなら、フードやトイレなど、犬との暮らしに必要なものを一緒に揃えられるため、迎えたその日からきちんと住環境を整えてあげることができそうです。とはいえ、土佐犬をペットショップで見かけることは多くないので、事前に取り扱いがあるか確認してから行くとよいでしょう。

また、ペットショップではどんな親犬から生まれた子犬かを把握することは難しいです。性格や気質については親犬の情報を知ることが必要です。

ブリーダーさんから紹介してもらう

ブリーダーさんからお迎えする最大の特徴は、迎えると決めた子の特徴やクセ、これまでの成長の様子や環境などをブリーダーさんに直接聞いたり、質問できたりすることです。また、親猫や兄弟・姉妹たちの姿を見る機会も得られる可能性があるので「将来どんな風に成長していくのか」を想像しやすいこともメリットです。

繁殖のタイミングは年に1回、多くて2回です。迎えたい!と思ったときに子犬がいない場合もあります。予約待ちの人気のブリーダーさんもいるので調べてみると良いでしょう。

里親になる

最近は「せっかく犬を迎えるなら、保護犬の里親になりたい」と考える方が多くなってきたようです。譲渡会の情報もチェックしやすくなってきました。こうした譲渡会や里親募集で土佐犬と出会える機会もあるかもしれません。

まとめ

土佐犬は日本で誕生した闘犬で、長い歴史的伝統があります。その一方で、土佐犬による咬傷事故が起きているのも事実です。

そういったことから危険というイメージがある土佐犬ですが正しく適切な環境で飼育すれば、頼れる家族になることができる犬種です。

危険だと言われる犬種でも警察犬として活躍していたり、ドラマや映画、SNSで人気となっている子もいます。

これから飼う方は、特徴をよく調べた上で自分に飼えるかどうか考え、すでに飼っている方は愛犬のためにも周りの人たちのためにも、責任と愛情を持って飼うようにしましょう。

監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。 現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。