
私たち人間にとって、犬は大きな幸せをもたらしてくれる存在です。人間が犬と共に暮らし始めた歴史は、9000年前にさかのぼるとの説もあります。とても長い時間を共有してきたことが伺えますが、そんな犬との暮らしは想像以上に大変です。こちらの記事では、犬を家族に迎えるにあたって事前に知っておくべき基本的なことをご紹介していきます。
犬と一緒に暮らすための条件は?

犬と共に暮らし始めるにあたり、前もって確認しておかなければならない事柄がたくさんあります。誰もがいつでも、軽い気持ちで迎え入れることができるわけではありません。
経済的余裕はある?
はじめに確認したいのは、経済面です。日常的なごはんやワクチンなどの予防接種はもちろん、病気になれば治療費などあらゆることでお金がかかります。お金だけですべてを救えるわけではありませんが、お金と引き換えに解決されることがあるのも確かです。有事のときに犬のお世話を頼めるプロのペットシッターさんなども、経済的な余裕がなければ依頼することができません。
2019年に発表されたアニコム損保の調査では、犬にかける年間費用は306,801円という結果が出ました。月々でみると、およそ25,000〜30,000円ほどです。犬も年齢を重ねれば病気などのリスクがあがり、医療費にお金がかかる場合もありますし、年齢を問わず持病を持っていれば、この数字はさらに増えます。内容によっては、治療費で数十万円かかることもあるほどです。
また、一般的には猫よりも犬のほうがお金はかかります。2019年のアニコム損保の同調査によると、犬が306,801円だったのに対し、猫は158,680円でした。その差は、倍近くあり、猫と一緒に暮らしたことがあるから犬も大丈夫、というわけにはいかないので注意が必要です。
住まいはペットOK?

現代の犬は、屋内で暮らすのが基本です。庭で番犬として飼育するという時代ではなくなってきました。
屋内で一緒に暮らすとなると、住まいはある程度の広さで犬が自由にできる環境が必要です。家の中に犬にとって危険な一角があるなら、犬がそこへ近づけないよう安全性を確保できるかどうかも考えましょう。そのほかにも滑りやすく犬の足腰に負担がかかる床には、犬用の滑り止めマットなどを取り付けるなど、理想的なインテリアのまま過ごせない部分が出てきます。
賃貸なら、当然のことながら動物と住むことが許されている物件でなければなりません。残念ながら、「犬を飼えないマンションに引っ越すから」という理由で犬を放棄する人がいます。現在の住まいだけでなく、10年、20年先の暮らしのかたちも想像してみましょう。
時間的余裕はある?
犬は、ごはんさえあげていればひとりで生きていける生き物ではありません。お散歩やシャンプー・ブラッシング、歯磨きや爪切りなどのお手入れをはじめ、定期検診、ワクチン接種のための通院も必要です。日常的なお世話だけでもかなりの時間を費やします。また、犬によっては毎日かなりの運動や遊びを取り入れないと、ストレスが溜まってしまう子もいます。
さらに、もともと群れで暮らす習性を持つ犬は、家族と一緒にいる時間に幸せを感じます。一日中お留守番をさせなければならないライフスタイルの人にとっては、犬との暮らしはハードルが高いかもしれません。犬種や犬の年齢によって性格や体力、寝る時間も異なるので、ご自身のライフスタイルに合った犬を迎えることが大切です。
精神的余裕はある?
犬は可愛がるだけでは、社会に適応した性格にならないこともあります。人間やほかの動物と一緒にトラブルなく暮らしていくためには、さまざまなことを教えたり、しつけもしなくてはなりません。犬は賢いので教えれば学習してくれますが、身につくまでには教える側の根気も大切になってきます。やりたい放題やらせたままでいるのは、犬にとって幸せなことではありません。お互いの幸せのために、気長に根気よく、やっていいことと悪いことの区別をつけさせる心の余裕が必要です。
しかし、どんなにお利口な犬でも、一緒に暮らしていると予測不可能な出来事も起こります。お気に入りの家具をガジガジかじられたり、靴や洋服にいたずらされたりなど…。すべての行動を愛犬の愛しい部分の一つとして接することができる理性も、飼い主には欠かせません。
最期の最期まで一緒にいる覚悟はある?
アニコムの「家庭どうぶつ白書 2019」のデータによると、犬全体の平均寿命は14歳となっています。2009年の頃より、約8.4ヶ月も寿命が延びていて、今後も延びる可能性が考えられます。8.4ヶ月という年月の長さは犬の年齢に換算すると4〜5歳分なので、いかに延びたかがわかります。14年とは決して短いものではありません。(一生愛犬と添い遂げたいと思う愛犬家にとって、14年はあっという間でとても短く感じるものですが。)
また、子犬に心を惹かれて家族に迎えるときは、成犬になった大きさも想像する必要があります。また、歳を重ねてからの高齢犬の介護も頭にいれておきましょう。犬の介護は決して楽なものではありません。自分も年齢を重ねることを考えたとき、その頃の自分はどれほどの体力があるのか、きちんと犬のお世話を続けられるのか、いろいろなことに想像力を働かせて熟考しましょう。
もしものときに、預けられるところはある?
飼い主である人間にも、入院やケガのリスクがあります。もしくは、災害などで避難所生活を余儀なくされ、犬とは別の場所で過ごさないといけない期間があるかもしれません。そんなとき、家族に代わってお世話をしてくれる人はいるでしょうか?
まわりに愛犬を安心して預けられる人がいない場合は、ペットホテルなども選択肢のひとつにあげられます。ただしペットホテルも、ワクチン接種の証明書がなかったり、持病がある場合などは受け入れてくれないかもしれません。もしものことが起こる前に、預けることができるペットホテルを見つけておきましょう。いきなり預けるのではなく、半日などの短時間から練習をしてみると犬にとっても飼い主にとっても安心です。
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ひとり暮らしで犬と暮らすときに気をつけたいこと

家族で犬と暮らしている人たちに比べて、大変かもしれません。犬を飼う前に、あらかじめ犬のお世話で協力し合える家族や友人などを確認しておきましょう。
お留守番のこと
仕事などでどうしても長い時間、お留守番をさせてしまうこともあるかもしれません。ひとり暮らしでは、家族に犬のお世話を頼むなどが気軽にはできません。ですが、ペットシッターや犬の幼稚園を利用したり、見守りカメラや自動給餌機を設置するなど工夫できることはあります。
■留守番時に注意したいこと
夏の暑い季節には冷房が欠かせません。朝出かけるときに涼しくても、昼間の気温は上がります。人がいなくても、冷房をつけてから外出しましょう。水も多めに用意しておくと安心です。
逆に、冬場は暖房のつけっぱなしに注意が必要です。エアコンはトラブルが少ないですが、ガスストーブや石油ストーブといった犬に近いところで温風がでるタイプの暖房器具の場合、火傷などのおそれがあります。このような暖房器具は、犬だけになる環境では利用しないようにしましょう。
旅行のこと
旅行に行くにも、ペットを置いていく場合はペットホテル代などがかかります。自身の旅行代だけでなく、お金がかかってくることを覚悟しましょう。そう考えると、海外などへの長期の旅行は行きづらくなるかもしれません。ですが、もちろん犬がいるからこその旅行をすることもできます。最近では犬と泊まれる宿や一緒に遊べるスポットも多くあるので、新たな楽しみを見つけることができるかもしれません。
ひとり暮らしの時にかかりやすい費用は?
お留守番のところで前述したとおり、お散歩などを頼めるペットシッター、宿泊型で預かってもらえるペットホテルをはじめとする、お世話を助けてくれる人や施設に対する出費が比較的多くなるかもしれません。中には、スマートフォンと連動させて犬の様子を見ることができる、見守りカメラを設置する人もいます。
ひとりでは限界があると感じたら、無理をせずに、お金をかけてでも利便性を求める価値観も大切です。
一緒に暮らす犬は、自分に合った子を見つけよう

犬にはいろいろな子がいます。サイズは1kg程度から30kg以上ある子まで、さまざまです。性格も、人と遊ぶのが特別好きな子や、犬と仲良く遊ぶことができる子、走ったり運動が大好きな子や甘えん坊な子など、十人十色です。
人と遊ぶことが好きな子であれば、小さい子どもがいる家族のもとへ迎えられてもストレスなく馴染むことができますが、そうでない場合は、大人の落ち着いた家族と一緒に暮らすほうが向いているかもしれません。その他にも、ひとり暮らしや共働きなどでお留守番が長めのご家庭であれば、子犬を迎えるのではなく、成犬を迎える方がいいかもしれません。
犬種や年齢によって特徴があるので、ご自身の環境にあったピッタリの子を見つけましょう。
犬と暮らすと幸せになる? こんなメリットが!

犬との暮らしは、毎日が笑顔でいっぱいになります。人が犬と触れ合うことでオキシトシンと呼ばれるホルモンが分泌され、ストレスを軽減してくれるとの報告もあります。
規則正しい生活や毎日のお散歩で健康に!?
身体にも良い影響があります。愛犬がいるおかげで早起きをするようになったり、規則正しい生活を送ることができます。毎日のお散歩は、人間にとってもよい運動になります。
疲れているときには、お散歩が大変だと感じるかもしれません。でも、愛犬にとっては飼い主さんと過ごすうれしい時間です。せっかくの愛犬とのお散歩の時間! 犬と歩いている間は仕事のことなどは忘れて、犬を観察し、その時間を楽しみましょう。
新しい出会いも
お散歩で出会う犬とご挨拶をして、近所に知り合いが増えることはよくあります。愛犬家同士、共通の話題があるので打ち解けやすいです。また、自分が犬を連れていなくても愛犬家を見つけると、思わず「愛犬話」が始まる光景は珍しくありません。
人間同士の関係を深めてくれる役割も担っているんですね。
犬と暮らすなら、こんなことに覚悟して!
犬と暮らすことのメリットをご紹介しましたが、一方で大変なこともいくつかあります。
吠え癖
しつけによってある程度なくすことができるものではありますが、犬は吠える生きものです。子犬のうちの早い段階から教えれば吠え癖はなくなりやすいですが、長い間放置してしまうと教え直すことが難しくなります。その際は、トレーナーなどのプロに相談して対応しましょう。
トイレの失敗

子犬の頃だけでなく、成犬になってからもシートの上で上手にできないこともあります。特におしっこは、雷などの大きな音で恐怖を感じたときに失敗してしまったり、ストレスを感じたときにあえてトイレ以外の場所でおしっこをしたり…。一生、根気強く付き合っていくものだと思っておいたほうがいいかもしれません。
犬との暮らしは何ものにも代えがたいもの

犬がもたらしてくれる幸せは、何ものにも代えがたいものです。年齢や時期によっては家のものを壊してしまうといった問題行動が見られることもありますが、総体的にみればこれらは些細なことで、あとから笑い話にできるものがほとんど。しかし、経済的、精神的な余裕や覚悟がなければ、これらすべてを許容することができません。
命の重さはみんな同じです。これからはじめて犬を迎えるという方は、家族が増えることの意味をもう一度考えてみましょう。
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