
元気いっぱいに遊び回るわが子を見ていると、幸せそうで私たちまで元気になれる気がしてきます。そんな愛犬が突然立ち上がれなくなってしまうと、どうしてよいかわからずパニックになってしまうかもしれません。ここではワンちゃんが立ち上がれなくなってしまったとき、どうしたらよいのか、どんな原因が考えられるのか、解説します。
犬の後ろ足が動かない…? 考えられる病気は?
ワンちゃんの後ろ足が麻痺する病気として椎間板ヘルニアは有名です。あまりにも有名なのでほかの病気でも後ろ足が動かなくなるということはあまり知られていないかもしれません。ここでは原因を大きく3つに分けて解説します。
神経の病気
背骨の中には脊髄(せきずい)呼ばれる神経の束が通っています。脊髄は脳からの指令を全身に伝えたり、全身からの情報を脳に伝えたりする役割があります。ここが何らかの原因で傷つけられてしまうと、足を動かすという指令が伝わりにくくなり後ろ足が麻痺してしまうことがあります。代表的な病気として椎間板ヘルニアや変性性脊髄症、脊髄梗塞、脊髄腫瘍などがあります。
骨、関節や筋肉の病気
骨、関節や筋肉は互いに密接にかかわって身体を動かしています。これらの臓器の正常な働きが妨げられると足を上手に動かすことが難しくなり、麻痺したように見えることがあります。多い病気としては骨折、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼などがあります。また、全身性の病気や加齢により、筋肉が衰えたりすることで、後ろ足に力が入りづらくなることもあります。
血管の閉塞
身体の中で血栓と呼ばれる血液のかたまりが作られて血管に詰まってしまうことがあります。大動脈が左右の後ろ足に枝分かれする部分は血管が細くなるため、血栓が詰まりやすい場所の一つです。大動脈血栓塞栓症と呼ばれ、後ろ足に血液が運ばれなくなってしまうことで足を動かすのに必要な酸素や栄養が届かなくなり足をうまく動かせなくなります。血栓は心臓の病気などで発生します。
また、お腹の中にできた腫瘍などが大きくなることで血管を圧迫して血管を閉塞してしまうこともあります。
初期症状について

原因によって異なりますが、突然動かせなくなる場合と、徐々に進行する場合があります。また、病気の重症度によって多少は動かすことができる不全麻痺から完全に動かなくなる完全麻痺など症状にも差があります。
突然の場合
突然立てなくなってしまった場合は、椎間板ヘルニアや骨折、血栓症などで早急な治療が必要な場合が多いです。すぐに動物病院に連れていき獣医師に診てもらいましょう。
徐々に進行する場合
徐々に進行する場合は、初期症状としては麻痺として気づかれないことも多いです。歩いているときに足が絡まる、小さな段差で足が引っ掛かるなどちょっとした動きの違和感として見つかり、特に高齢の場合は老化のせいと思われて見過ごされてしまうこともあります。最初は軽度の麻痺であっても時間の経過とともに悪化していくこともあり、原因によって急激に進行することがあります。このような小さな違和感の裏に大きな病気が隠れていることもありますので、見過ごさずに動物病院で相談するようにしましょう。
もしなってしまったら、、治療法は?

原因によって治療法は大きく異なります。間違った治療法では、病気を悪化させる恐れがありますので、まずは原因を見つけることが大切です。できるだけ早く病院に連れていき獣医師に診てもらいましょう。
手術をする場合は?
椎間板ヘルニアや骨折の場合は、手術で治せることがあります。ただし、中には完全に元通りにはならず麻痺が残ってしまうこともあります。麻痺がおこってから時間が経ってしまうと治すことが難しくなるケースがありますので、早めに診断してもらうことが大切です。
手術をしても治せない場合は?
脊髄梗塞や変性性脊髄症など手術をしても治せない病気もあります。その場合でもお薬での治療やリハビリで、ある程度回復させたり、悪化を防いだりすることができます。
麻痺が残ってしまった場合は?
麻痺が残ってしまった場合は、足の働きを維持するためにマッサージやリハビリを行うことがあります。湯たんぽなどで足を温めて血行を促したり、人の手で足を動かして動きの練習をしたり、器具を使ってバランスをとる練習をします。設備が整っていれば水中で歩行練習をするようなこともあります。病気や症状によって必要なリハビリはさまざまですので、動物病院でよく相談しましょう。
予防方法は?

骨折や脱臼などの場合、高いところから落ちてしまうなどの事故が原因となることが多いです。そのようなところに上らないように環境を整えたり、激しい運動はしないようにするなどである程度防ぐことができます。
また、血栓塞栓症など他の病気の合併症として起こる場合は、原因となる病気を治療することで合併症としての麻痺を引き起こす可能性が減らせます。
完全に予防することが難しい病気もありますが、健康診断などで普段から健康管理を行い、身の回りに危険な場所がないか気を配るように心がけましょう。
まとめ
突然ワンちゃんが立てなくなってしまうと、動揺してしまいどうすればよいのかわからずパニックになってしまうかもしれません。大きな病気が関わっていることも多いので、まずは落ち着いて病院に連れていき、獣医師に原因を見つけてもらうようにしましょう。中には急速に進行して命に関わることもあります。どんな時でもすぐ病院に行けるように、夜間やかかりつけの休診日にも診てもらえる救急病院などを探しておきましょう。
後ろ足が麻痺していると自分で歩くことができないので飼い主さんが抱っこして動かさないといけません。椎間板ヘルニアや骨折を起こしている場合、痛みのあまり抱っこを嫌がってしまうこともあります。痛みが強いときには、できるだけワンちゃんの体勢を動かさないようにしてクレートなどに移して連れていきましょう。また、普段からの心がけで防ぐことができるものもありますので、生活環境や健康管理に気を付けてあげましょう。
