犬が好きな人なら一度は見たり聞いたりしたことのある「ドッグスポーツ」。アジリティーなどの大会が有名ですが、活躍する犬の姿を見ると思わず見入ってしまいますよね。ドッグスポーツといっても、アジリティーやドッグダンスなどさまざまな種類があることをご存じでしょうか。今回はそんなドッグスポーツについて、種類や魅力をご紹介します。

ドッグスポーツとは? どんな種類があるの?

ドッグスポーツにはさまざまな種類、競技があります。欧米などの海外に行くと、日本ではなかなか見られない競技の大会なども開催されていて、その種類の多さに驚きます。こちらでは、比較的有名な競技をピックアップしました。それぞれ特徴などをご紹介していきます。

アジリティー

ハードルを越える犬

もっとも知名度が高い競技のひとつが、アジリティーです。競技する姿をテレビや雑誌などで見たことがある方も多いと思います。

簡潔にいうと、アジリティーは犬の障害物競走です。ハンドラー(指導手)と一緒に参加します。広い会場のコース上に置かれたハードルやトンネル、シーソーなどを、定められた時間内に正しくクリアしていきます。ゴールまでのタイムで順位が決められます。ハンドラーである人間も一緒に走らなければならないため、かなりの体力や脚力が必要です。

レベル別のほかに、障害の種類や数が異なる部門別、犬の体高別などにわかれています。

エクストリーム

一見アジリティーによく似ていますが、飼い主と愛犬の絆をより深めることが目的となっている点が、大きな違いです。アジリティーにはハンドラーとして飼い主以外の人が参加することが可能ですが、エクストリームのハンドラーは飼い主でなくてはなりません。また、エクストリームに挑戦・参加することで参加者たちのマナーの向上を目指すのはもちろん、まわりの愛犬家へのマナー啓発にもつなげることがもう一つの目的となっています。

タイムを競うというルールはありますが、あくまでも飼い主さんと愛犬が一緒に楽しむことが第一条件で、犬をコントロールすることへの重要度はアジリティーと比較して低くなります。クラスは2種類あり、体高が40cm以下の犬が参加するミニチュアクラスと、それ以外のオープンクラスに区別されています。

フリスビー

フリスビーをキャッチする犬

「フリスビー」や「ディスク」「フライングディスク」とも呼ばれることのある専用の円盤を使った競技です。多くの方が最初に想像するのは、遠くに投げられたディスクを犬が走って追いかけ、空中でキャッチする姿かもしれません。しかし、実際にはさまざまな種目があり、中にはダンスをするようにフリスビーを投げる種目も。それぞれ物理的に合計ポイントを競うものや、美しさを競うものなど、異なるルールが設定されています。

いずれの種目にも共通しているのは、ハンドラーの技術がとても重要だということです。フリスビーをいかに安定して投げられるかが競技内容の質を高める要になってきます。ほかのドッグスポーツは犬と一緒に練習することがほとんどですが、フリスビーはハンドラーが一人で練習する時間も自ずと多くなるので、コツコツ練習することが好きな飼い主さんに向いています。

フライボール

名前から、高く飛んでいるボールをキャッチするようなスポーツを連想する方も多いと思いますが、実際にはもう少し複雑な競技です。

競い合うのは、スタート地点を出てから、直線のルートを行って帰って来るまでのタイムです。ルートには4つのハードルとボールがセットされているフライボールボックスが用意されています。まずは、ハードルを越え、その先にあるフライボールボックスをタッチすると出てくるボールをキャッチし、咥えたまま再び4つのハードルを越えてスタート地点に戻ります。

走るスピードや、ハードルを越える際のロスタイムをどうカットするかが大きなポイントです。

基本的なルールはこのひとつのみですが、個人戦と4人のリレー形式で行うタイプもあるので、団体で競技を楽しみたい方にもおすすめです。

オビディエンス

訓練中の犬

オビディエンス(obedience)は英語で従順、忠順などの意味を持ち、その名の通り、服従訓練の中で行われるアクティビティーです。ほかのドッグスポーツは躍動的でまさにスポーツといった内容のものが多いですが、オビディエンスはそれらとは対照的でいわゆるしつけのイメージに近いです。

競技の内容は、フセやマテ、呼び戻しなど基本的な犬の動作がほとんどです。そのため犬の大きさなどで区別されることはなく、経験値や犬種によって出場できる種目が変わるのが特徴です。

ルールも細かく決められていて、お手本通りの型の再現度だけでなく、指示した状態をキープする時間なども評価の基準になっています。

ドッグダンス

音楽を用いる珍しいドッグスポーツです。犬がトレーニングを楽しめるよう考えられた競技とされていますが、ハンドラーとともに行うパフォーマンスで観客も楽しませることができるのは、ドッグダンスの最大の特徴だといえます。

具体的には、決められた主要の動きを取り入れ、組み合わせながら曲に合わせてダンスを作っていきます。基本的にはアイコンタクトだけで犬に指示をするので、とても華麗なスポーツです。犬種や犬の大きさに制限、ハンディキャップはありません。犬のトレーニングだけでなく、選曲や音楽に合わせたダンス作りも楽しめる飼い主さんに向いています。

ドッグダイビング

ドッグダイビングで遊ぶ犬

水の中に投げ入れられたものを取りに、ダイブするスポーツです。人間のダイビングは海で行うのが一般的ですが、ドッグダイビングはプールを用意して行うことも多いです。日本ではまだあまりメジャーな競技ではありませんが、欧米などでは徐々に知名度が高くなってきています。

しかしまだ参加者が少ないこともあり、大会によってルールが異なります。水に入るスポーツなので、気候が寒い地域よりは暖かい地域のほうがダイバー犬も多いようです。

手軽にできるドッグスポーツは?

ご紹介してきた競技を始めるにはハードルが高そう、と感じた方もいるかもしれません。そんな方に、おすすめしたいドッグスポーツをご紹介します。

ノーズワーク

ノーズワークとは、飼い主が隠したおやつを、犬が嗅覚を頼りに探し当てるというもの。実はスポーツという認識を持たずに、普段の暮らしの中に取り入れている飼い主もいるかもしれません。

犬や飼い主の年齢、体力、視力といった身体的な条件に左右されることなく、楽しむことができるのがこのスポーツのいいところです。さらに、隠されていたオブジェクトを見つけたときに、犬が達成感を感じ、精神的にも大きな喜びを得ることができます。

競技系のドッグスポーツに比べて身体を動かす量は少ないですが、頭を使うのでストレス発散にも繋がります。自宅でも行うことができるので、手軽に始められそうです。

【番外編】おもちゃの取ってこい遊び

ボール遊びをしているコーギー

おもちゃの取ってこい遊びは飼い主がおもちゃを投げて、愛犬に取ってきてもらうというシンプルなものですが、愛犬にとっては運動にもなりますし、コミュニケーションを取ることもできます。自宅で簡単にできるドッグスポーツの一種といえそうです。

ドッグスポーツの魅力とは

ひとつには、体を動かしながら犬と人との間にある愛情や絆が深まっていくという、精神面でのメリットがあります。多くのドッグスポーツは飼い主と愛犬で参加することが多いので、スポーツのチームメイトとしてだけでなく、人生のパートナーとしての信頼関係がより強固なものになります。

もちろん、身体的なメリットも大きいです。犬種や犬の体質にもよりますが、より多くの運動量を必要とする犬の場合、毎日のお散歩だけでは体力を十分に消耗できません。その対策には頭を使う遊びが有効なのですが、犬は賢いので、決まった遊びばかりではすぐに飽きてしまいます。そこでドッグスポーツという明確な目標を掲げると、お互いの士気を上げながらより充実したアクティビティーとして楽しむことができるのです。

「ドッグスポーツを始めたい!」と思ったら?

自宅で簡単にトレーニングを始められるドッグスポーツもたくさんあります。また、競技そのものは広い場所や特別な器具を必要とする競技であっても、自宅での遊びや動きをスポーツに応用できるケースも多いです。

本格的に始めてみたいという場合は、スクールやプロのトレーナーに依頼するという選択肢もあります。同じ目標を持つ人や犬との出会いはとても刺激になるので、一度覗いてみるのもいいかもしれません。

どんな犬種が向いている?

ドッグスポーツにも向き不向きがあるのは事実です。たとえば、ジャンプが腰の負担になりやすい犬種は、フリスビーやフライボールなどの縦の動きが多いスポーツにはあまり向いていません。

大会出場に際しては、犬種に規定がある大会はあまりありませんが、アジリティーで多くの結果を残している犬種はボーダー・コリー、オビディエンスはジャーマン・シェパード、ドッグダイビングは水かきの大きな犬種やレトリーバー系というような傾向がみられます。ただし、中には血統書が必要な大会もあるので、事前に大会の応募資格を確認してください。ジャパンケネルクラブ(JKC)が主催の大会の一部には、同クラブの登録犬でないと受験資格がない競技種目があります。

愛犬とドッグスポーツを♪

飼い主と犬

ドッグスポーツにも、さまざまなタイプがあります。また、必ずしも小さい頃からトレーニングをしていなければうまくなれないというものでもありません。愛犬の特徴や得意なものを見つけてあげて、その子に合うドッグスポーツを少しずつ一緒に取り入れていくのもおすすめです。ぜひ、挑戦してみてはいかがでしょうか。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。