年齢を重ねることで発生が多くなる犬の(口腔)疾患として「歯周病」があります。歯磨きは、その歯周病を予防できるだけでなく、犬とご家族とのコミュニケーションを深められる行為です。正しい歯磨きで、口の中のケアをしていきましょう。
そもそも犬に歯磨きは必要?歯周病は防げる?
人の場合、歯磨きをせず、歯磨きガムやデンタルリンスだけでケアを終わらせる人は少ないと思います。同様に犬の口の中の衛生を保つためには、歯磨きが重要です。 歯周病は、歯を支える歯茎などの組織に起こる炎症で、ひどくなると顎の骨が溶けていきます。原因は、複数の口腔内細菌が歯の周囲で増えて歯垢になることです。犬ではこの歯垢が硬く石灰化して歯石にもなります。歯周病は痛みや出血を伴うことで生活の質が悪くなるだけでなく、よだれや口臭の原因にもなります。さらに、歯周病から様々な内臓疾患へ波及することも最近の研究でわかってきました。歯磨きで口の中をケアすることは、歯周病の予防につながります。
まずは犬の歯の構造を理解しよう
犬の永久歯は、全部で42本あります。基本的には、片側ずつ、上顎に切歯3本・犬歯1本・前臼歯4本・後臼歯2本、下顎に切歯3本・犬歯1本・前臼歯4本・後臼歯3本です。 犬は物を切り裂く犬歯と、かみ砕く時に上顎の前臼歯と下顎の後臼歯を使います。これらの歯は歯石が付きやすいです。
子犬の歯磨きはいつから?

歯磨きは歯が生え始めた乳歯の頃から始めましょう。乳歯自体は抜けてしまいますが、歯磨きに慣れさせるためにも始めておくとよいでしょう。
歯磨きのやり方とコツ
歯磨きの方法をご案内します。
歯ブラシの使い方
- まずは手でお口を触る練習から始めましょう。はじめは口の周りを触り、徐々に歯や歯茎に触れるようにし、できたら褒めたり、おやつをあげましょう。
- ガーゼで歯を触ることに慣らしてもよいでしょう。指にガーゼを巻いて、歯茎を痛めない程度に、歯と歯茎の表面を軽くなでます。
- 触ることに問題なければ、歯ブラシを使います。犬用、または小児用の口に入りやすい歯ブラシを使い、触らせてくれる歯から磨きます。
- 歯を1本ずつ細かく歯ブラシを動かしながら磨きます。
■力加減のポイント
歯ブラシで皮膚を傷つけない程度です。
奥歯(臼歯)の磨き方
まずは、お口をめくり、歯の外側から磨いていきましょう。特に重点的に磨くのは、上顎の大きい歯です。内側(舌側)は、軽くお口を開けさせて、磨きます。無理に行わずに、おとなしく磨かせてくれたときには、うんと褒めてあげましょう。
頻度はどのぐらい?
理想は毎食後ですが、1日1回行えたらよいでしょう。最低でも3日に1回することで、歯垢を取り除くことはできます。できるときに、できる範囲で行ってあげるとよいでしょう。
歯石がついてしまったら?
歯石は専用の機械でしか安全に取れません。付いてしまった場合は、かかりつけの動物病院に相談して、スケーリング処置を受けましょう。
歯磨きを嫌がるときの対処法

まずは、「歯磨き=楽しいもの」とイメージ付けましょう。 口を触らせてくれたら、褒めたり、ご褒美を与えてください。口を触ることを嫌がらなくなったら、歯を1本触り、褒めましょう。触れる歯の本数を徐々に増やしていき、まずは触ること、次にガーゼにも慣れさせていきましょう。少しずつ慣れさせることがコツです。
犬が人間用の歯磨き粉を舐めてしまったら?
犬の歯磨きに人間用の歯磨き粉を使わないでください。人間用にはキシリトールが含まれているものが多いです。犬にとってキシリトールは毒性が強いので、万が一歯磨き粉を舐めてしまった場合には、かかりつけの動物病院に連れて行きましょう。
おすすめの犬用歯磨き粉
歯磨き粉は犬専用の歯磨きペーストで犬が喜ぶ味を使いましょう。なお、歯磨き粉を使わなくても歯磨きの効果はじゅうぶんです。
おすすめ犬用歯ブラシ
歯ブラシは、犬用または小児用を使いましょう。犬用の歯ブラシはさまざまなものが目的別にも販売されています。
犬の歯磨き代用品

歯ブラシを嫌がる場合には、以下の物で歯磨きをしましょう。
綿棒
歯ブラシを嫌がる子でも、綿棒は歯ブラシよりも小さいので、受け入れやすいです。歯と歯茎の境目をなでることで、歯垢を取り除けます。
犬用の歯磨きガム
犬用の歯磨きガムは、オヤツとしても代用できるため、手軽に始めやすいでしょう。また、歯垢を付くことを抑制する歯磨きガムもあります。丸飲みしないような大きさを選び、かじっている間も注意して見ていてください。
犬用歯磨きシート
歯磨きシートは歯ブラシの前段階としても使いやすいものです。ガーゼと同様に、直接ご家族の手で歯を触るので、歯ブラシよりも安心感は高いかもしれません。
歯磨きおもちゃ(歯磨きトイ)
歯磨きおもちゃを噛みながら遊ぶことで歯の表面の歯垢を落とせます。おもちゃだけで十分な口腔ケアができる子もいる反面、おもちゃに触れない部分の歯垢が残ることがあります。また、歯周病の予防のために、細菌が繁殖しないようこまめにおもちゃを洗って清潔を保ってください。
お店でプロに任せる場合
お口のケアをどうしても嫌がるときには、プロに任せましょう。嫌がるわが子に無理に歯磨きを行うことで、関係性をこじらせてしまっては、元も子もありません。定期的なケアを心がけましょう。
大切な愛犬の健康を守るために

歯磨きによって日常的に口の中のケアをしていくと、歯周病の予防につながります。また、歯周病が他の疾患を悪化させる原因になっているという報告もあり、歯周病の予防が、他の病気の予防に繋がる可能性もあります。 慣れるまで大変なこともありますが、大切な愛犬の健康を守るために、歯磨きは重要です。無理強いはせず、ご褒美を活用し、少しずつ、歯磨きを続けていきましょう。
