
犬の手足の裏にある肉球は、見た目にかわいらしいですよね。飼い主さんにとっては癒しの存在である肉球ですが、犬にとっては、細かい脈管や神経が多く分布した皮膚であり、さまざまな役割を担った場所になります。肉球の役割だけでなく、愛犬が肉球をなめる理由や自宅でできるケアの方法をご紹介します!
犬の肉球の役割とは?
見た目にかわいい肉球ですが、実はさまざまな大事な役割を担っています。

役割①衝撃から守る
肉球の地面に接する部分は、角質層という硬くなる組織の皮膚でおおわれていて、表面には毛が生えていません。そして奥は、厚い弾力性のある組織と柔らかい脂肪組織でできています。
これらの構造により、走ったり、高い所から飛び降りたりするときに、足にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
役割②温度調節
肉球は、犬の体の中では唯一、エックリン汗腺という、汗を作る器官が存在する場所になります。これは、人間が全身にかく汗と同じ汗を作る器官です。呼吸ととともに、肉球に汗をかくことで体温の調節を行います。また人と同じように、気温とは別に、緊張によっても汗をかきます。
役割③ブレーキをかける
犬の肉球では、一番外側の表皮と言われる部分が、発達した乳頭という突起状の構造物でおおわれます。このため、表面はなめらかではなく、でこぼことした触り心地になっています。そして、このでこぼこのおかげで、地面との摩擦が生み出され、走っていても、急に止まったりすることができるのです。
役割④地面の温度を感知する
毛が生えていない肉球は、人の手のひらや足の裏のように、敏感に温度の変化を感じとることができます。そうは言っても、暑いと感じても犬は自分で回避できるわけではありません。暑い時期のお散歩は、時間帯や歩く場所など飼い主さんが気を付けるようにしましょう。
ただし、常に外で飼われていたり、外での運動量が多い犬などでは、刺激により肉球の皮膚が厚くなるため、また寒い国原産の犬では、肉球間の毛が密に生えるため、多少の地面の熱さや、雪の冷たさはしのげるようになっています。
犬が肉球をなめる理由は?
愛犬が、気づくといつも肉球をなめている、ということがありませんか。

一つは、ストレスを抱えている可能性があります。最初は自分のストレス解消のためになめ始めて、それがクセになってしまったため、なめるのをやめられない、というパターンが多いです。例えば、あまり相手をしてもらえず、ひまを持て余してなめ始めた。新しい犬が来て緊張を強いられ、自分を落ち着かせるためになめ始めた、などがあげられます。
もう一つとしては、トラブルを抱えている可能性があります。上記のなめるクセが続くと、なめる刺激から、皮膚炎を起こすことがあります。これ以外にも、地面に直接接し、刺激を受ける場所である肉球や肉球の周辺は、皮膚に関するトラブルが起こりやすい場所でもあります。
肉球トラブルとは?
肉球トラブルにはどんなものがあるのでしょうか?
乾燥・ひび割れ
汗をかくことによって、ある程度の乾燥は防げるようになっているのですが、硬い地面を歩くことが多かったり、空気の乾燥する時期や、そのほか肉球に対する刺激が多くあると、表面が乾燥し、ひび割れてしまうことがあります。痛みやかゆみを伴うこともあるため定期的にチェックしてあげましょう。
ケガ
肉球は地面に直接接するため、切り傷ややけどなどのケガを負うこともあります。真夏のアスファルトやマンホールの蓋の上など、注意してください。また、冬場でも、融雪剤によりやけどを負うことがあります。公園などの草原でも、ノギなどの草の実や種が、肉球やその間の皮膚に刺さり、取れなくなってしまうケースも見受けられます。お散歩の後などに急に肉球をなめるようになった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

指間炎(しかんえん)
肉球は汗をかくため、その周りの指間の皮膚は、汗や分泌物、あるいは地面の埃や汚れなどが溜まりやすく、炎症が起きやすい場所となります。特に、シー・ズーやビーグルなど、体質的に脂性の肌になる犬種では、注意が必要です。指間炎は汚れなどによる刺激と、細菌感染が炎症の原因です。かゆみや痛みを伴うため、なめる頻度も高くなります。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー
アレルギー疾患の場合、指間は、症状が出やすい場所の一つとなります。そのため、特に赤みや炎症の所見が認められない段階でも、ストレスやアレルギーの原因となる刺激にさらされると、かゆみが出て、肉球をなめる仕草が見られるようになります。場合によっては抗ヒスタミン薬やステロイド薬の服用などの治療が必要になりますので、かかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
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肉球ケアのポイントは?
まずは清潔にすることが、トラブルを回避するには最も大事です。お散歩の後には手足を拭いたり、洗ってあげるようにしましょう。特に、指間炎対策には、定期的に薬用シャンプーで洗ってあげることが効果的です。また、乾燥もなめる原因になるので、肉球用の保湿クリームを使ってあげることも良いですね。ただし、頻繁に塗ったり大量に塗るのは、犬にとっては不快感が強くなり、逆になめる原因となります。少量を薄くのばして使うようにしましょう。
注意すべきこととして、犬の皮膚は人間と比べて薄いです。そのため、人用のシャンプーや塗り薬は、犬には刺激が強くなることがあります。必ず犬用のものを使用するようにしましょう。

まとめ
肉球は、犬にとっては足を守るクッションだったり、体温調節を行う器官だったりと、さまざまな役割を持っています。その一方で、刺激を受けやすい箇所であり、ケガや皮膚炎などトラブルが起こりやすい場所にもなります。清潔を心がけ、上手にケアしてあげてください。
