仕事から疲れて帰宅したあなた。愛犬がしっぽをブンブン振って出迎えてくれる。仕事中は眉間にシワを寄せていたあなたも、その瞬間は目じりにシワを寄せていることでしょう。疲れも一気に吹き飛ばしてくれる愛嬌たっぷりな犬のしっぽ。今回は、そんなしっぽに焦点をあてて紹介していきます。意外に知らないことも多いのではないでしょうか。

しっぽはなぜ生えている?起源や構造について!

しっぽにじゃれる犬

犬種によって、長さ、かたち、形状が異なるしっぽですが、そのタイプはいくつあるかご存知でしょうか。しっぽの起源や構造についても迫ります!

しっぽはこうして生まれた!魚との意外な関係

まだ陸に生物がいなかったはるか昔、生き物はすべて海の中にいました。彼らは尾びれを発達させることで上手に泳ぐことができるようになっていきました。やがて一部の魚が陸上でも暮らすようになり、尾びれはしっぽに変化していったといわれています。

こうして考えるととっても神秘的ですね!
人間は、地上で生活をしていくうちにしっぽを使う必要がなくなり、退化していきました。我々が尾てい骨と呼んでいる尾骨は、しっぽの名残りなのです。

しっぽの中身はこうなっている

だいたい想像がつくかもしれませんが、骨と筋肉、そして神経で成り立っています。尾骨を形成している尾椎が6~23個存在し、先端に行くほど小さくなります。そのためしっぽの根元は太く、先端に行くほど細くなっています。尾椎の周りには複数の筋肉が発達していて、それらの筋肉が収縮することでしっぽを動かしているのです。

こんなにあった!しっぽの形は多種多様

どれだけの種類をご存じでしょうか?犬種によってその形は多種多様。さまざまなタイプが存在します。ここでは代表的ないくつかを紹介します。

背中の上にクルンと巻いたしっぽ。別名、巻き尾。秋田犬、パグなどが代表的です。

先天的にしっぽがない、もしくは断尾で短くなったしっぽ。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークが代表的です。

らせん状で短いしっぽ。ブルドッグやボストンテリアが代表的です。

羽根のような飾り毛がある垂れ下がったしっぽ。イングリッシュセッターが代表的です。

オッターは英語でカワウソの意味。カワウソのように根元が太く、先端に行くほど細くなっているしっぽ。ラブラドール・レトリーバーが代表的です。

別名:剣状尾。サーベル(剣)のような形で上もしくは下にカーブしたしっぽ。ビーグルやバセットハウンドが代表的です。

別名:鎌尾。根元から高く上にあげ、途中から鎌のような半円形に保持するしっぽ。ビーグルやチワワが代表的です。

こんな役割もあったの?

走る犬

しっぽの動きで感情を表現していることはご存知の方も多いと思いますが、しっぽを振っているのは喜んでいる時と思っていませんか?感情の表現以外にも役割を果たしているしっぽ。まだまだ知らないことがあるかもしれません。

役割その1:感情を表現する

しっぽの高さや振る速度、振り幅でさまざまな感情を表現しているといわれています。例えば、自信に満ち溢れているときは高い位置に、逆に不安や恐怖を感じているときしっぽの位置は低くなります。

しっぽの振りはさまざまな感情の高ぶり(興奮)を表しています。嬉しさで振るのは、ほとんどの方が知っていると思いますが、実は、怖いという感情が高ぶって振っているときもあるのです。しっぽを振っているのは、必ずしも喜んでいるときだけではない、ということは頭の隅に入れておくと良いでしょう。

役割その2:バランスをとる

実はしっぽでバランスをとっていた!これは知らない方も多いのではないでしょうか。例えば、走っているとき急にターンするような動きで、しっぽがその役割を発揮します。水の中を泳ぐときもしっぽを上手に使って泳ぐ方向のバランスをとっています。

役割その3:体温を維持する

寒い日に丸まって寝ている姿を見たことがある方も多いはず。体を丸め、冷たい空気に触れる面積を小さくすることで、体温を奪われにくくしています。しっぽの長い子はマフラーのように上手に丸めて顔を覆います。鼻から冷たい空気を吸わないようにすることで体温を維持しているのですね。

しっぽのトラブルは注意が必要!

ソファで寝る犬

しっぽにまつわるトラブルや疾患についてご紹介します。

しっぽのケガは治りが遅い

誤ってしっぽを挟んでしまったり、強く壁にぶつけてしまったりすることで、骨折や脱臼、さらにはしっぽから出血してしまうというようなトラブルに発展してしまうケースがあります。 しっぽのケガは他の部位に比べて治るのに時間がかかる場合が多いです。よく動かす部位なので安静にしておくことが難しいというのが大きな理由です。

しっぽにまつわる疾患・症状

しっぽの疾患として代表的なものに「馬尾(ばび)症候群」があります。背骨の中には脊髄と呼ばれる神経の束が通っていて、腰の終りの部分で尾や後肢に向けて枝分かれしています。
その見た目が馬のしっぽのように見えることから馬尾神経と呼ばれます。馬尾神経が椎間板や腫瘍などで圧迫されると、しっぽの根元に痛みが出たり、しっぽが麻痺して動かないなどの症状が出ます。圧迫される神経によってしっぽ以外の部位に症状が出ることもあります。

しっぽに特徴的な変化が表れる異常として「ラットテール」と呼ばれる症状があります。これはしっぽの毛だけが抜ける特徴的な症状で、甲状腺機能低下症によって引き起こされます。ねずみのしっぽに似ていることからこの名前がついています。

まとめ

いかがでしたか?人間にはないしっぽ。見た目がかわいいだけでなく、実はさまざまな役割を担っているのです。この記事を通してしっぽの新たな魅力に気づいていただけたら嬉しいです。

監修獣医師

別府雅彦

別府雅彦

北海道大学獣医学部を2009年に卒業。学生時代は野生動物学教室でクマのフェロモンに関する研究を行う。卒業後は神奈川県の地域中核病院に勤務。脊椎外科や整形外科を中心に、ワンちゃんとネコちゃんの医療に従事。アメリカ獣医内科学会など、学会での発表も行う。信念はどうぶつと飼い主さんが主人公の物語をお手伝いすること。2020年アニコムホールディングス株式会社に入社。信念を日本に、世界に広げるべく活動中。