
うさぎの肝リピドーシスと脂肪肝ってどんな病気?
脂肪肝とは、肝臓中に脂肪が過剰に溜まり、肝細胞が傷つき、正常な働きができなくなった肝臓を指します。
肝リピドーシスは、エネルギーが不足することで、身体が緊急状態となり、肝臓の処理能力をはるかに超えてしまったときに起こります。太っていて体脂肪が多いうさぎが長時間(約24時間以上)の絶食状態となると、脂肪を分解し栄養を得ようとしますが、多くの脂肪を効率よく処理できずに肝リピドーシスの発症リスクが高くなります。
脂肪肝が重症化すると肝リピドーシスにつながることがあり、命にかかわるケースもみられます。
うさぎの肝リピドーシスはどんな症状が出る?
特徴的な症状は少なく、ごはんを食べない、元気がないといった不調が見られます。
食欲不振
食欲の低下はもっとも目立つ症状です。 脂肪肝の症状としても食欲不振は発生すると考えられますが、脂肪肝を発症するきっかけ自体が食欲不振ということも多いです。
完全草食動物のうさぎは、こまめに草を食べる食性があり、いつもおなかに食べ物が入っていて、常に消化管が動くことで健康を保っています。人間や犬、猫などとは違い、空腹と満腹を繰り返す食事のリズムはありません。
そのため、半日以上何も食べないというのは、うさぎの場合、食欲不振の注意信号になります。緊張や食生活の変化などで一時的に食欲が低下することもありますが、24時間以上の絶食は通院が必要な食欲不振として判断するとよいでしょう。
とくに、うんちが小さかったり、大きさがバラバラというときは、食べる量や食物繊維の摂取量、消化管の運動の低下を意味します。少しだけなら食べられている状況でも、排便量が減少しているときは、早めに診察を受けたほうが安心です。
元気がない
おとなしくなり、活動量が減少します。 ケージから出ての室内散歩を喜ばない、運動しない、顔つきがぼんやりしている、ケージの隅でじっとしているなどの行動にあらわれます。
寒さや緊張でも似たような行動をすることがありますが、部屋を暖かくしてもあまり動かなかったり、環境を整えても状況が改善しない場合は、病的な元気消失が疑われます。
肝酵素上昇、肝腫大
脂肪肝の場合、血液検査を行うと肝酵素の上昇がみられたり、エコー等の画像検査で肝臓の腫大が見つかることがあります。
うさぎの肝リピドーシス(脂肪肝)はどうやって診断するの?

動物病院では、食欲不振と元気消失に対して、さまざまな病気の可能性を考えて検査をします。検便をすることもあるので、うんちは持っていくといいでしょう。
問診では、以下のような項目が大切な情報となります。受診時に伝えられるとよいでしょう。
- 食欲不振の状況(いつから、どのくらい食べていないか)
- 排泄物の状況(うんち、おしっこの量や大きさの変化)
- 生活環境(環境変化やストレスの有無、運動習慣、ケガの心あたりなど)
- 食事内容(とくに牧草やペレットの量、おやつの有無。製品名がわかるとより具体的)
動物病院での検査は、
- 口の中、とくに不正咬合のチェック(食欲不振の原因の確認)
- 血液検査
- 検便(寄生虫感染の確認)
- レントゲンやエコーなどの画像検査(おなかの動きや内臓の状態を把握するため)
などのうち、診察して獣医師が必要と判断したものが実施されます。
診断は総合的な診察結果に基づいて行いますが、長時間の食欲不振があり、肝酵素の上昇や肝腫大などがあると、脂肪肝の状態と判断されることがあります。
うさぎの肝リピドーシスの原因は?
肥満状態で長時間(約24時間以上)絶食したり、食べる量が減少すると、肝リピドーシスが起こりやすくなります。
絶食や食事量が減少する理由はさまざまです。
- 環境変化(引っ越し、ペットホテル、同居どうぶつなど)のストレス
- 食事内容の変更
- 過長歯、不正咬合
- 体の痛み
- 毛球症など消化管疾患
以上のような理由のどの場合でも、食欲不振が起こると、肝リピドーシスが起こる可能性があります。
※なぜ絶食で肝臓に脂肪がたまるの?
肝臓は、身体の中で解毒やエネルギー工場の働きをしています。
食物の消化と吸収は胃腸で行いますが、食事由来の栄養はいったん肝臓を通って、体内でうまくやりくりできるように加工されています。余ったエネルギーは脂肪として体に蓄えられ、必要なときに引き出されるしくみとなっています。
身体のエネルギーが足りなくなると、脂肪組織から脂肪分が肝臓にわたり、全身でエネルギー源として活用されます。適切な量の脂質であればよいのですが、身体が長時間飢餓状態になっていると代謝不良を起こし、脂肪が蓄積して肝障害が起こります。この状態が肝リピドーシスです。
回復と予防のためには、適切な栄養摂取と体重管理をして、肝臓に脂質代謝の過剰負荷をかけないようにすることが大切です。
肝リピドーシスになりやすいうさぎの品種や特徴は?

肥満状態で飢餓を起こすと肝リピドーシスが起こりやすいので、太っているうさぎは要注意です。ドワーフ種、ロップ系品種は肥満になりやすい傾向にありますので、食事内容と運動不足に注意しましょう。
ストレスで食欲不振を起こしやすい子も、長時間の拒食で肝リピドーシスに陥るおそれがあります。繊細な性格の子でしたら、できる限り環境変化を避けましょう。
うさぎの肝リピドーシスに関連する病気はある?
食事量が減少するあらゆる病気が関連します。
肝リピドーシスは食事量が減少したときに起こりやすいので、鼓腸症(こちょうしょう)、毛球症などの消化管疾患や、不正咬合で食事がとりにくいことなどが関連します。これらの病気に肝リピドーシスが併発することもあります。
うさぎの肝リピドーシスはどんな治療をするの?
良質な食事を摂取することが第一です。食物繊維の多い食事をとれるようにします。チモシーのようなイネ科牧草をたっぷり食べられることが理想ですが、そもそも何らかの要因で食事ができずに肝リピドーシスを発症することが多いですから、食べる量を増やすような治療が行われます。
点滴治療
絶食に伴い飲水量も減って脱水していることがあるので、点滴で脱水の治療を行います。皮下点滴の場合は通院でも実施可能です。
食欲増進剤、消化管運動改善薬
食欲を刺激する内服薬や、おなかの動きを良くする薬を投与します。毛球症や鼓腸症などを併発している場合は、とくに消化管運動の改善が大切になります。
強制給餌
自力で食事をとれない場合は、流動食を与えたり、経鼻食道カテーテルでの強制給餌を行うこともあります。
うさぎの食欲が低下したとき、してはいけないことは?

うさぎの食欲が低下したとき、できる限り避けたい対応が2つあります。
- 24時間以上の絶食に対し、何もせずに様子見をする
- 食事の代わりにクッキーやドライフルーツなど甘いおやつを与える
これらは、うさぎの状態を悪化させるおそれがあります。
- 完全草食動物のうさぎにとっては、絶食期間が丸一日(24時間)続くと、大きな負担となることが多いです。消化管の動きが悪化したり、異常発酵を起こしたりなどで、さらなる食欲不振状態に陥ることもあります。絶食状態で2~3日間「様子見」をすると、重症状態の「放置」になってしまい、致命的な状態になりかねません。
- クッキーやドライフルーツのようなおやつは、嗜好性が高くうさぎは喜んで食べるのですが、牧草を食べられていない状況下で高脂質、高炭水化物の食事に偏ると、腸内細菌のバランスが乱れ、腸毒素血症などによる体調悪化を起こす可能性もあります。
投薬の補助として少量の果物を使うのは構いませんが、主食の代わりのエネルギー源として甘いものを与えるのは避けましょう。
食欲の低下に気づいたら、早めに通院するのが望ましいです。24時間以上何も食べていないことに気づいたら、すぐに動物病院を受診しましょう。食事内容は診察した獣医師に相談すると安心です。
うさぎの肝リピドーシス(脂肪肝)の予防法は?

太らせないことと、絶食や急な食事量低下を防ぐことです。
肥満予防のポイント
・食事
食事内容はうさぎの健康管理の重要なポイントです。 チモシーなどのイネ科牧草を食べ放題にできるようたっぷり与えましょう。
アルファルファなどのマメ科牧草や、これを原料としたペレットは、体重の5%程度までを一日の目安として量を計って与えます。ペレット中心の食事や、ペレットを食べ放題とする食事は控えましょう。
ドライフルーツやクッキー類は非常に嗜好性が高いので、しつけのごほうびやケージ・キャリーへの誘導などには役立ちます。しかし、毎日だらだらと与えることは控えたいもの。できる限り量は控えましょう。
日常生活の中で、コミュニケーション目的や副食で牧草以外のものを与えたいときは、少量の葉野菜もおすすめです。ダイコンやカブ、ニンジンの葉、サラダ菜、ロメインレタスなどは与えやすい野菜で、食欲が落ち気味のときにも食べてもらいやすい野菜です。生野菜の食べ過ぎでチモシーの食べる量が減らないよう、量には気をつけてあげてください。
・飼育環境と運動
生活環境はできる限り広くとります。
市販のうさぎ用のケージは、うさぎがごはんを食べたり眠るための生活スペースにはなりますが、運動量を確保できるほどの広さではないことが多いです。1日1回30分以上を目安に、室内に放してお散歩させてあげましょう。
室内で自由に運動できる時間は長い方がいいですが、飼い主さんが不在のときや目を離すときは、誤食やケガなどの事故を防ぐため、ケージに入ってもらうと安全です。
絶食と食欲低下の対策
急に食事内容や生活環境が変わると、拒食を起こすことがあります。
ペレットや牧草の種類を変える場合は、急に新しいものに切り替えず、少しずつ混ぜながら徐々に変えるようにしましょう。
ペットホテル等の利用時には食欲不振が起こることがあります。お預かり中に食欲不振や体調悪化が出たときの通院について、預かり先とあらかじめ相談しておきましょう。

まとめ
うさぎの肝リピドーシス(脂肪肝)は、肥満にならない食事・生活習慣で予防につとめましょう。ほかの病気に併発して起きてしまう肝リピドーシス(脂肪肝)もありますが、肥満と偏食はうさぎにとってあらゆる病気のもととなります。
牧草中心の食生活と運動量の確保を心がけ、もしも食欲が低下してしまったときは、早めに動物病院を受診しましょう。