パンがほしそうな猫
私たち人間にとって馴染みのある食べ物も、猫が食べると身体に負担がかかってしまうものがたくさんあります。今回は、人間用に作られたパンについて、猫が食べることのリスクや食べてしまった際の対処法などについて解説します。

猫にパンを与えても大丈夫?

パンは一見すると無害な食べ物です。特に食パンやフランスパンはシンプルで、濃い味付けがされているわけでもないため、猫にとって問題のない食材と考える方もいるのではないでしょうか。 しかし、猫はもともと肉食動物であるため、炭水化物を消化する機能が発達していません。肉の主成分であるタンパク質を分解する器官や消化酵素が特に優れているため、パンに限らず炭水化物を大量に摂取すると、消化不良を引き起こしてしまう可能性があります。もちろん小麦粉をはじめとする炭水化物以外にも、塩や砂糖、イーストなどといった猫の身体によくない原料がたくさん使われているので、食べさせてはいけない理由は炭水化物であることだけに限りません。

消化不良の症状

猫の消化不良の症状にはさまざまなものがあります。代表的な症状は下痢や便秘、嘔吐です。 下痢は体内の必要な水分も同時に失われ、脱水症状も引き起こします。便秘は一般的に、二日以上排便がない状態のことを指します。定期的に排泄していても毎回コロコロとした硬い便の場合も注意してください。力んでも便が出なかったり痛みを感じてうまく排泄できないといった悪循環に陥ると、さらに重症化してしまいます。 猫は元気な状態でも嘔吐することがあるので、見分けが難しいと感じる方もいるかもしれません。消化不良の場合には、食べたものの原型がわかる形で吐き出されてしまったり、異常に吐く頻度が高かったりします。異変の際に少しでも早く気づけるよう、普段から吐くタイミングや吐いた内容物を観察するようにしましょう。 下痢や便秘、嘔吐が長く続くと、食欲不振や体重減少にもつながります。特に子猫や体力のない猫にとっては大きな負担となり、免疫力が低下して感染症などにかかりやすくなってしまうので、早めに対応しましょう。

猫向けに作られているパンなら与えてもよい?

パンを見つめる猫 猫用のパンというものが販売されているのを、見かけたことがあるかもしれません。塩、砂糖が不使用なのはもちろん、バターの代わりにオリーブオイルを使っているもの、保存料の入っていないオーガニック食品などが最近のトレンドです。 とはいえ、こういったパンはあくまでもおやつという立ち位置で、決して主食に代わることはありません。猫用だからといってたくさん与えて良いものではないこと、炭水化物そのものが猫にとっては必要のないものであることを覚えておいてください。

ごはんを食べなくなる!?

パンの味を猫が気に入ってしまい、いつも食べていたごはんを拒否するようになってしまう可能性もあります。食は健康な身体づくりにとても重要な要素です。美味しいことを学習すると、飼い主さんがパンを食べるたびに執拗におねだりしてきたり、こっそりお留守番中に食べてしまったりといったことも考えられます。ここまでになると猫にとってもストレスになり、身体だけでなく精神的にも負担をかけることになってしまいます。

とくに気を付けたいパンは?

パンを食べたそうな猫 人間の身体には良くても、猫が食べるとパン以上に有害で危険な食べ物はたくさんあります。食パンやフランスパンのようなパンは少量であればすぐに身体に悪い影響を来すわけではありませんが、猫にとって有害な食材が入ったパンの取り扱いには特に気をつけたいところです。ここではパンによく使われる食材の中でも猫に与えてはいけないものを3つご紹介します。

ネギ類

惣菜パンによく使われる食材ですが、玉ネギや長ネギ、らっきょうといったネギ類は、少量食べるだけでも猫にとっては貧血を引き起こしてしまう危険な食べ物です。球根の仲間はすべてダメだと覚えておけば間違いありません。 つまり、エシャロットやニンニクなども同様です。これらの食材に含まれる有機チオ硫酸化合物によって中毒が起きることが原因ですが、症状として無気力や食欲低下、血尿などが見られることがあります。中には玉ネギスープを少し舐めただけで重篤な状態に陥ってしまう子もいるため、手作り惣菜パンを作る方は、換気をしたりキッチンに猫を入れないようにするなどの対策を講じるようにしましょう。

チョコレートやコーヒー

チョコレートがトッピングされていたり、コーヒー風味を取り入れたパンがありますが、猫にとって要注意です。テオブロミンやカフェインといった成分が猫にとっては有害で、チョコレートやコーヒーはそれらを含むので猫に与えてはいけません。猫が持つ消化機能では分解できずに、長時間、身体の中に残ってしまう成分です。 食べた後数時間で興奮状態になり、ひどいケースでは痙攣などを発症することもあります。

ブドウ

干しブドウ入りのパンがあります。ブドウも猫にとって注意すべき食物です。明確な原因はまだ解明されていませんが、猫がブドウを食べると急性腎不全を引き起こす場合があります。ブドウを乾燥させて作るレーズンや、パンのレシピでよく目にする白ワインなども同様です。 猫とブドウの関係はまだわからないことが多いため、食べると危険な量などを明言することはできませんが、リスクは最小限に抑えたほうがよいので、どんなに少量であっても与えないようにしましょう。

猫がパンを食べないようにするには?

パンのにおいを嗅ぐ猫 パンのパッケージの封をしっかり閉めるのはもちろん、タッパーに入れてから扉がついた棚にしまうなど、猫の手が届かない場所にしまってください。とはいえパンは、冷蔵庫に入れられる野菜や果物とは異なり、絶対安全といえる保管場所を見つけるのが難しいです。そもそもキッチンに猫が入れないようドアを取り付けたり、キッチンには入らないように教えたりするのもひとつの方法です。

万が一、パンを食べてしまったらどうしたらいい?

まだパンが残っている場合は、それ以上食べないようにパンを片付けてください。大量に食べていなければ、半日〜1日ほど様子を見ましょう。排便や嘔吐物だけでなく、鳴き方や歩き方、目の色、息遣いなどが普段と変わりないか、チェックしてください。様子がおかしいと思ったら、動物病院で診てもらいましょう。 一度飲み込んだものを吐き出させようとしたり、たくさん水を飲ませたり、無茶な処置をすると危険です。獣医さんの指示を仰ぎましょう。

まとめ

食パンやクロワッサン、ロールパンなど、実にバラエティー豊富なパン。パンは基本的には人間が食べるものなので、猫に与える必要のない食材です。猫にとって危険な食材が入っていることもありえるので、与えないようにしたほうがよいでしょう。

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ライター

猫百科編集部

猫百科編集部

獣医師を含む猫の飼い主歴10年以上の編集者が集い、毎日、猫の「あるある話」に花を咲かせ、情報交換している。編集部員の面々は、猫との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。