威嚇している猫

愛猫がなつかないから、手放したい……そんな風に思い詰めることがあるかもしれません。精一杯尽くしているのに、報われないのは辛いですよね。初めて飼った猫がなつかないのはもちろん、先代の猫はなついてくれたのに今の猫がなつかないときや、野良猫や保護猫出身で人に慣れていない猫もいるとおもいます。その他にも多頭飼いをしていて1頭だけなつかない場合など、さまざまなケースがあるかとおもいます。あまりにもなついてくれないと、もう離れた方がお互い幸せでは……と思ってしまうのも、無理はありません。でも、もともと猫はなつきにくい生き物です。ほかの猫がなついたのは、その猫の性格もあるかもしれません。猫の生態から見直して、鳴き声や行動から猫の気持ちを読み取ってみませんか? なついてくれるためにできることがあるかもしれません。

大好きな猫がなついてくれない。その理由は?

一生懸命世話をしているのに猫がなつかないのは、さまざまな理由が考えられます。理由がわかれば、解決の糸口がつかめるかもしれません。

猫の生態や、本能を理解しよう

猫に心を開いてもらうには、猫の生態や本能を理解することが欠かせません。野生の猫科動物の多くは、基本的に広い縄張り意識を持って単独で生活しています。今飼われている猫たちも、性格の差はありますが、単独で過ごすことが好きで、指示されることは好まず、自分のペースを大切にしています。そんな猫が、飼い主さんにごはんやトイレなど生活のあらゆることを指示されたり、飼い主さんの生活ペースに合わせることを強制されたり、十分な縄張りが持てずにいると、ストレスを溜め込んでしまいます。

また猫にとって、目を合わせて見つめ合うことは威嚇行動のひとつ。これから攻撃するぞ、という宣戦布告にもとれるのです。もし、コミュニケーションを取りたくて猫の目を見つめているとしたら、怖がらせている可能性大。慣れないうちはアイコンタクトをとろうとするのはやめましょう。

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人と猫の関係性上の問題

猫は人に飼われている歴史が長いのですが、今のように室内飼いが普通になる前は、長らく室外と室内を自由に行き来する半野生の状態で飼われていました。もともと単独でいるのが普通で、お腹が空いたときや人に構ってほしいときなど、気が向いたときだけ家庭に立ち寄るような関わり方だったのです。いろいろな性格の猫がいるなかで、人と仲良くするよりも放っておいてほしい、マイペースでいさせてほしいという猫がいても不思議ではありません。

それなのに、人の方は人間のルールで猫と仲良くなろうとしてしまうことがあります。抱っこする、撫でる、とにかくそばに寄り添うなど、こちらは愛情表現のつもりでも、猫が嫌がっていたら嫌われる原因にしかなりません。逃げる猫を追いかける、嫌がっているのに抱っこするようなことはやめましょう。

猫の性格上の問題

猫の性格には個体差があり、犬のようになついて飼い主さんが大好きな猫がいる一方、いわゆるツンデレでかまってほしいときだけかまってほしい、それ以外は放っておいてほしい、という猫らしい性格の猫も。さらにシャイで、基本的にそっとしておいてほしい、関わりは最低限がいいという猫もいます。このタイプの猫は、警戒心が強いこともあり、なつきにくいと感じるかもしれません。でもそれが猫にとってはストレスのない普通の状態という可能性もあります。

また、猫が育ってきた環境も性格に影響します。野良猫は人に慣れていないし、保護猫は虐待などの辛い経験があり、なつきにくいといわれます。そうでなくても、猫が社交性を身につけるためには、社会化期と呼ばれる生後2ヶ月前後の子猫の頃に、いろいろなタイプの人やどうぶつと接触することが必要です。この時期を逃すと、その後は新しい体験が受け入れにくくなってしまいます。そのため、適切な社会化のトレーニングを受けずに成長すると、警戒心が強くなり、なつかないだけでなくケアも動物病院に行くことも大変になってしまいます。

暮らしている生活上の問題

毎日の生活の中でストレスを受けていると、猫が攻撃的になってしまうことがあります。来客が多かったり、騒音があったり、新しいものが次々と入ってくるような環境では、猫はくつろぐことができません。まずは猫が一頭で静かに過ごせる専用スペースを確保しましょう。猫が今の住環境に慣れるまでは、なるべく人の出入りを減らし、家の中に変化をつけないようにして、生活も規則正しく、猫が安心できるようにすることが必要です。

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猫をなつかせる5つの方法

威嚇する猫
では、具体的にどうすれば猫がなついてくれるのか、その方法を紹介します。日頃から実践できていないことがあったら、さっそく取り入れてみてください。

においに気を付ける

猫の嗅覚は人よりもずっと敏感。なんと、嗅細胞の数は、人が1,000万個に対して、猫は6,000万個といわれています。そのうえ、人にとっては快適な香りが猫は苦手ということも。タバコや香水のにおいを残したまま猫に近寄らないようにしましょう。湿布や虫刺されの薬、消毒薬などに含まれるメントールの香りも苦手です。香りが強い洗剤や柔軟剤も避けて。ミカンやレモン、シトラスなど柑橘系の香りを嫌う猫もいます。

声や音に気を付ける

猫は聴覚も敏感で、犬よりも幅広い音域を聞くことができます。特に高音域を聞くことに優れていて、人の可聴範囲が20~20,000ヘルツに対して、猫は30~60,000ヘルツ!そんな敏感な耳ですから、大きな音や声を嫌うことも多いもの。バタンと音を立ててドアを閉めたり、大きな足音で歩いたり、大声を出すことは猫に嫌がられる原因になります。携帯電話の着信音を始め、電子機器の音量にも気をつけてあげましょう。

また、男性の低い声はうなり声のように聞こえてしまい、威嚇されていると感じて怖がることも。猫に話しかけるときは、女性のように高めの声で話しかけましょう。赤ちゃんに話しかけるようなイメージで、優しくゆっくり、ささやくようなトーンを心がけてください。

近寄ってくるのを待つ

仲良くしたい一心で積極的に近づくのはやめて、猫の方から近寄ってくるのを待ちましょう。「私はしつこくしませんよ」「あなたのペースで自由にしていいですよ」という気持ちを伝えるつもりで、あえてかまわないようにしてください。

そのうちに猫の方から寄って来ても、大げさに喜んだり、すぐに撫でたり、抱っこすることはやめましょう。猫が警戒心を解くまでは、かわいがることを控えつつ猫から触れること、においを嗅ぐことを許して、猫に身を委ねましょう。

ごはんやおやつを利用する

猫はおいしいごはんをくれる人、おやつをくれる人の顔をすぐに覚えます。ごはんやおやつが欲しくて寄ってくるのも、猫の性格上、なついている段階といえるでしょう。健康のために量や内容には配慮しつつ、好きなごはんやおやつをあげてご機嫌をとってみましょう。

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猫のパーソナルスペースを守る

人と同様に、猫にもパーソナルスペースがあります。猫の人に対する快適なパーソナルスペースは50cmから1.5mくらいといわれています。さらに、いざというときに逃げられるように猫が確保したい距離は2mほど。慣れていない猫なら、まずは1.5〜2mくらいの距離を保った方が良さそうです。部屋の中で2m離れ続けることは難しい場合もあるかもしれません。そんなときは壁にキャットウォークを設置するなどして、少しでも距離を作ってみるのもいいでしょう。もちろん快適な距離は猫によって異なるので、様子を見ながらパーソナルスペースを守ることを意識することが大切です。

多頭飼育の場合は要注意

じゃれあう二頭の猫
多頭飼いは猫同士で遊んでくれる、飼い主さんの留守中も寂しくないなどメリットもありますが、単独行動が基本の猫にとっては、ストレスとなってしまうこともあります。特に新入りの猫は、先住猫に気を使って疲れてしまうことがあるので注意しましょう。

猫が遠慮していないかをチェック

多頭飼いを始めたとき、嫉妬などを避けるために先住猫を優先するのは必要なことですが、これが行き過ぎてしまい新入りの猫をかまわないでいると、新入りの猫は先住猫に遠慮し、周囲に馴染めなくなります。そうすると飼い主さんばかりかほかの猫とも関わりを持たず、やがて内気で臆病な性格になってしまいます。もし新しい猫が離れた場所からこっそり様子をうかがう姿が見られたら、スキンシップや遊びで新しい猫と関わる時間をしっかりとりましょう。

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まとめ

せっかくご縁があってお迎えした猫ですから、後悔のないようにしたいですね。ここで紹介した方法はどれも簡単にできることですが、根気強く続けていく必要があります。焦らず無理のない範囲で試して、ベストな距離感を探ってみましょう。努力を重ねる飼い主さんを見ているうちに、猫も心を開いてくれることでしょう。

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監修獣医師

小寺由希子

小寺由希子

2008年、鹿児島大学獣医学科卒業。卒業後は、大学病院にて内科系レジデントとなり内科全般および消化器内科について経験を積み、大阪府内動物病院にて犬猫中心に診療を行っていました。現在は、予防医療の実現をめざし飼育知識の普及活動および診療を行っている。小さな頃から猫と共に過ごし、現在も2頭の猫と暮らす。その生活はネコ中心。環境を処方することで猫の病気を減らし、猫ライフをより幸せにすることを目標に日々活動中。