私たち人間にもどうぶつにも、腸内には数多くの菌が住んでいます。その一つに「エンテロバクター(プロテオバクテリア門エンテロバクター科の細菌)」がいます。アニコムグループの分析によると、エンテロバクターの量が犬の健康に深くかかわっていることがわかってきました。今回は、エンテロバクターがどんな菌なのか解説します。

エンテロバクターの概要

エンテロバクター科の代表的な細菌属には大腸菌(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、サルモネラ(Salmonella)などがいます。以下のような特徴をもっています。

1.様々な環境に存在する
エンテロバクターは、どうぶつの腸内以外にも、土の中や下水、あるいは空気中など、自然環境に広く存在しています。

2.通性嫌気性菌である
細菌は、生きていく上で酸素を必要とする「好気性菌」と、酸素を必要としない「嫌気性菌」に分けることができます。エンテロバクターはこの「嫌気性菌」のうち、酸素存在下でも増殖できる「通性嫌気性菌」に分類されます。

3.いわゆる悪玉菌
エンテロバクターの仲間には、大腸菌やサルモネラなどがおり、増えすぎると悪影響を及ぼす、いわゆる「悪玉菌」とされています。

4.鞭毛(べんもう)を使って動く
鞭毛とは、細菌などにある細長い突起のことです。この鞭毛を回転させることで、推進力を得て動くことができます。

犬の健康とエンテロバクターの関係は?

犬の腸内フローラの検査結果と、保険金支払いデータの関係性について、アニコムグループにて分析したところ、犬の健康とエンテロバクターには深い関係があることがわかりました。
分析によると、犬のすべての年齢において、エンテロバクターが多い方が、ほぼすべての傷病(誤飲・骨折を除く)の発症率を引き上げていることが判明しました。また年間治療費も増加していることもわかりました。

さらにエンテロバクターが「増殖している」犬は、エンテロバクターを「寄せつけていない」犬と比較し、1.2倍も傷病の発症率が高くなっていることがわかりました。
この結果は、エンテロバクターの増加を抑えることで、犬の病気の発症を減らすことができるかもしれない、ということを示唆しています。

※エンテロバクターが「増殖している」状態:腸内フローラにおけるエンテロバクターの占有率が「10%以上」
※エンテロバクターを「寄せつけていない」状態:腸内フローラにおけるエンテロバクターの占有率が「0%」

まとめ

今回の記事では、エンテロバクターの特徴と、犬の健康とエンテロバクターの関係性について解説しました。近年、人の腸内細菌と健康との関係について研究が進んでいますが、犬の腸内細菌と健康については、わかっていない部分もまだ多くあります。今後アニコムグループでも研究を進め、より愛犬の健康を支えていきたいと考えています。

監修獣医師

安宅快

安宅快

2018年、東京大学農学部獣医学専修卒業、同時に獣医師免許を取得。卒業後はヒト用の臨床検査試薬・機器メーカーに就職し試薬開発に従事。2020年よりアニコムグループに入社、現在はアニコム パフェ株式会社の検査事業部長を務め、腸内フローラ測定や遺伝子検査を担当。日本のペット業界を検査の力でより良い方向に導いていけるよう日夜励んでいる。趣味はスキューバダイビングと、猫の兄弟そぼろとおかかと一緒にお昼寝すること。