隠れているかもしれない病気を、早期に発見することができる健康診断。

愛犬を大切に考えるご家族であれば、健康診断を受けることを検討されていることでしょう。
そうは言っても、いつ、どんな時に、何を受けたらよいのか判断に悩みますよね。
今回は身近なようで奥の深い健康診断についてのお話です。

犬に健康診断は必要

犬でも健康診断は必要です。
人と違って、犬は不調を口にすることができません。健康診断は、まずは不調がおこっているかも、という最初の芽を見つけてあげることができます。また、健康なときに検査を受けておくと、愛犬の体の基準がわかります。例えば肝臓機能の数値が基準値内でも高め、白血球の数が少し少なめ、という犬もいます。これらを知っておくと、愛犬が体調不良のとき、何がいつもと違うのか、ということがわかりやすくなります。

さらに、定期的に受けることによって、検査の数値の偏移を見ていくことができると、病気ではなくても、体の変化を見つけてあげることができます。

健康診断の検査項目は?どんなことするの?

獣医師に抱っこされるジャックラッセルテリア

問診

食欲やおうちでの活動の様子、排泄の状態や食べている物などを聞かれます。些細なことでも相談しましょう。例えば「元気で食欲旺盛だけど、うんちがたびたび緩くなりがち」と問診で相談された場合、検査で大きな異常がなければ、獣医師は「食事が合っていないのかも」と考え、消化の良いフードを勧めます。問診は、愛犬がより健康に過ごすための工夫ができる第一歩です。

血液検査

肝臓や腎臓などの内臓の検査から、副腎などのホルモン検査まで、さまざまな項目があります。理想はすべてのチェックですが、そうすると費用がかさむため、年齢や、気になる症状に合わせて項目を選んでもらいましょう。

尿・便検査

尿を見ることによって、尿結石や細菌の有無がわかるだけでなく、腎臓の機能を知ることができます。便検査では、消化の状態や寄生虫の有無を確認できます。

尿はその日の朝一番の尿を、便もできればその日の朝にしたものを持っていきましょう。

レントゲン検査

胸および腹部のレントゲンが一般的です。心臓や肝臓など、内臓の大きさ、形、位置に異常がないかをまず確認します。このほか、若齢であれば先天的な骨格異常がないか、中~高齢であれば、各関節の炎症や脊椎の状態、腎臓等に結石がないか、また腫瘍性の変化がないか、などの確認ができます。

超音波検査 

超音波検査は、レントゲン検査より細かく内臓の内部の状態、および動きの状態を検査することができます。高齢の犬や、血液検査などほかの検査項目で異常が認められる場合は、受けておくと良い検査です。

MRI検査

電磁波を使って、レントゲン検査では見ることのできない、骨の中の臓器を調べる検査です。主に脳の異常を調べます。検査には全身麻酔が必要です。また、機器を持っている病院は限られます。一般的な健康診断の項目には含まれませんが、体調で気になることなどがあれば、獣医師と相談しながら検査を進めてください。

何歳からするといい?

診察されるサモエド

あまり小さいうちは、検査を受けることもストレスになります。2回目のワクチンの接種を終えた後、特別気になる点がなければ、去勢や避妊手術を考え始める、6ヶ月齢を目安にすると良いでしょう。

【年齢別】受けておきたい項目は?

0~1歳の子

0歳から1歳までは、成犬になるまでの成長期です。この時期の異常は、生まれつきである先天性疾患の可能性があります。標準より体重が少なかったり、元気がないようであれば、健診時に必ず申告しましょう。純血種であれば、その犬種にかかりやすい先天性疾患がないか、事前に把握されると良いでしょう。骨格の疾患であれば、この時期の検査で分かることも多いです。

また、ペットショップやブリーダー等からお迎えしたばかりだと、集団での生活から、お腹の寄生虫やウイルス性の風邪などをもらってきている可能性もあります。聴診や視診をしっかりしてもらい、また便は必ず持って受診し、検査してもらうようにしましょう。さらに、去勢や避妊手術を視野に入れた、血液検査やレントゲン検査ができると良いですね。

2~6歳の子

気になる点がなければ、肝臓や腎臓などの一般的な項目を調べる血液検査や、レントゲン検査を、定期的に行いましょう。

若くて元気、健康な時期の検査データがあると、異常がでてきた時に、健康時のデータと比較することもできますので、この時期の健康診断もとても大切です。

7歳以上の子

7歳以上は、シニア期に入ります。内臓の衰えも出てくる時期ですので、血液検査も若い年齢時よりも、細かく調べてもらえると良いですね。体重減少や元気食欲の低下が見られたり、皮膚のコンディションの悪化など気になる点がある場合は、ホルモン検査や超音波検査なども受けるようにしましょう。

頻度はどのくらいが適切?

問診、視診、触診など診察台の上でできる一般身体検査だけでも、可能であれば、毎月の健康チェックとして獣医師に診てもらうことをお勧めしています。体重を毎月測ることだけでもとても意味のあることです。

血液検査などの項目を含む健康診断であれば、 中齢期である6歳くらいまでは年に1度を目安としてください。それ以上の年齢では、体調の変化が見られることや異常が出ることが多くなるため、半年おきの検査が勧められます。

毎年春に受けるフィラリア検査の採血と一緒に健康診断を推奨する動物病院も多いです。

費用はどれくらい?

病院によってさまざまですが、血液検査は一般的な項目で、レントゲン検査は胸とお腹をセットで撮影して、それぞれ1~2万円程度になります。

健康診断として血液検査やレントゲン検査などの決まった内容を、セット価格で行っている病院もありますので、かかりつけの動物病院で、一度相談してみてください。

健康診断で気を付けるべきことはある?

朝ごはんは抜いていきましょう。胃の中に食べ物がいっぱい入っていると、レントゲンや超音波検査で差しさわりが出ることがあります。また、持参する便や尿は、その日の朝に出たものを持っていきましょう。そのほかは、健康診断を受ける動物病院の指示に従ってください。

見た目は元気いっぱいなのに、重篤な疾患を疑われる検査結果となることもありえます。落ち着いて獣医師と今後の相談をしましょう。

定期的に健康診断を

診察されるボストンテリア

体の変化にいち早く気づくために、定期的に健康診断を受けておくことは大切です。愛犬の年齢や体調によって、推奨される検査内容などは変わってきますので、ぜひ一度、かかりつけの動物病院に相談してみてください。そして、病院での健康診断ももちろん、ご家族が日々の変化を気にかけてあげることもとても意味のあることだと考えています。

監修獣医師

箱崎加奈子

箱崎加奈子

アニマルクリニックまりも病院長。ピリカメディカルグループ企画開発部執行役員。(一社)女性獣医師ネットワーク代表理事。 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、的確なアドバイスをしたいという思いから、トリマーとして働きながら獣医師、ドッグトレーナーに。病気の予防、未病ケアに力を入れ、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護師、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。