美味しくて栄養満点な海の幸は、日本の食卓に欠かせません。中でも貝類は食感も楽しめる人気の食材ですが、犬の身体には毒となることがあります。今回は、犬が貝を食べたときに発症する可能性のある症状や、与えても大丈夫な貝の種類などをご紹介します。

犬は貝を食べても大丈夫?

2頭のキャバリア

前提として、犬には犬のために作られた食事をあげるのが、栄養面でも安全面でもベターです。犬は、その食材が自分の身体にどのような影響を与えるのかを知らないため、飼い主さんが美味しそうに食べている姿を見て反射的に欲しがることもあります。犬が可愛い顔でおねだりしてくるからといって、いろいろな食べ物を与えないようにしましょう。

貝の種類の中には少量であれば与えても問題がないものも一部ありますが、大きなくくりでは、犬が食べると危険な食材です。

NGな理由は?

ビーグル

人間でも貝にあたって苦しむことがありますが、犬にとってもリスクのある食材です。とくに犬が貝類を食べてはいけない理由には、消化不良や中毒症状を発症する可能性があることが挙げられます。犬と人間は身体の仕組みが異なるため、人間が消化できるものも犬は消化できず、身体の毒となってしまうのです。

このほか注意しておきたいことの一つに、貝類に限らず多くの海鮮類に含まれるチアミナーゼと呼ばれる成分があります。この成分にはビタミンB1を分解してしまう作用があるため、ビタミンB1欠乏症を引き起こしてしまう可能性があります。

また、貝類の特性として春先にかけて毒素が強くなるものもあります。季節や鮮度よって危険性がさらに高まることにも留意して「一度食べて何も異変が見られなかったから二度目も大丈夫」などと思わないようにしましょう。

どんな症状が出る?

おすわりしているパグ

中毒症状にはさまざまなものがあります。食欲低下に始まり、下痢、嘔吐、ふらつき、息切れなどが一般的に見られるほか、中には昏睡状態になってしまうケースもあります。

また、アレルギーのような症状が見られることもあり、具体的には皮膚炎や脱毛のほか、粘膜が腫れたりひどく痒がるといった症状として現れる場合もあるので、貝が原因であることに気がつくまでに時間がかかってしまうかもしれません。花粉症をはじめアレルギーを持つ犬にこの症状が現れた場合、いつものアレルギー症状だと思って軽視してしまうことがないように注意してください。重症化すると身体の器官にも影響が出てしまう可能性があります。

さらに、チアミナーゼの作用によって起こるビタミンB1欠乏症では、けいれんなどの症状が見られることがあります。

上記のような症状が見られたときはもちろん、貝類を食べたあとに少しでも異変が見られたら、すぐに動物病院へ行ってください。

絶対にNG! 犬にとって危険な貝の種類は?

身近で目にする貝の中では、サザエやアワビ、生牡蠣、赤貝、ツブ貝などが挙げられます。そのほか、トコブシやバイ貝も危険なので、絶対に与えないでください。これらには、チアミナーゼが含まれるため、一度に大量に食べたり、食べ続けたりすると、ビタミンB1欠乏症になってしまいます。生だけでなく、加熱した状態であっても危険性は変わりません。たとえ少量であっても犬への影響が見られる種類です。

食べたあとの貝殻や、ゴミ箱に残る汁などにも注意してください。もし貝殻を誤食してしまうと、食道や消化管を傷つけたり、詰まったりする恐れもあります。貝類を使って調理をした日は、何重にも重ねた袋にゴミを入れ、絶対に犬が手を出せない場所に保管しましょう。

食べても大丈夫な貝の種類は? ただし、与え方には注意!

ジャックラッセルテリア

基本的に、犬には犬用として売られている質のいいごはんを与えることが望ましいですが、オリジナルの手作りごはんなどをあげている飼い主さんや、たまには人間と一緒に美味しいお食事を楽しませてあげたいという考えを持っている飼い主さんもいると思います。そんな方々のために、犬が食べても大丈夫な貝の種類をご紹介します。ただし、種類や状態をきちんと見極められるという自信がある場合のみ、あげるようにしてください。また、与え方にも十分な注意を払う必要があります。

アサリ

スーパーなどで市販されているアサリに限り、与えることができます。アサリはビタミンB12とタウリン、ミネラル類が豊富な食材です。海水浴や潮干狩りで採ってきたアサリは、しっかりした基準が設けられた検査を通過したものではないため、安全性に不安があります。

人間用にはお味噌汁や酒蒸しなどで調理することが多いですが、犬に与える場合、調味料は一切使わず火を通しただけのものを与えてください。また、細かく刻んでからあげると消化しやすくなります。

シジミ

アサリ同様、日本人の食卓によく登場するシジミも、きちんと処理したものであれば与えることが可能です。シジミは肝臓や腎臓の働きを助ける効果を持つオルニチンを豊富に含む食材です。こちらも塩などを使わずにシンプルに加熱したものに限ります。もともと身が小さいシジミですが、アサリと同じように消化しやすくするため細かく切ってあげるようにしましょう。

ホタテ

貝を開けるとさまざまな部位に分かれているホタテですが、与えて大丈夫なのは貝柱のみです。しっかり加熱した上で、細かく切ってあげましょう。ヒモと呼ばれる細長い部位も与えることができますが、加熱すると硬くなるので、切る際により小さくするようにしてください。

牡蠣

生では絶対に与えてはいけない牡蠣ですが、加熱をすると毒成分がなくなって与えられるようになります。

いずれの貝も加熱して、細かく切って、少量のみにとどめましょう。

こちらで紹介したのは、あくまでも「与えても大きな問題がない種類の貝」です。繰り返しにはなってしまいますが、100%の確証がないのであれば与えないのが一番の選択肢です。

貝を食べてから、下痢や嘔吐などの症状がある場合はアレルギーも考えられます。早めに動物病院へ連れていくようにしましょう。

飼い主として正しい知識を

なでられる犬

近年、さまざまなタイプの犬のごはんが発売されたりレシピが公開されたりと、あげるごはんのバリエーションが増えています。それによってグルメな舌を持つ犬も増えつつありますが、飼い主に求められるのは、正しい知識です。初めての食材を与えるときには、事前にさまざまな情報を集めるようにしましょう。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。